第33話 終わらぬ悪夢
キングの命令に従ってナイト達が一斉に動き出す。
先ほどまで僕らを取り囲もうと横に広がっていたナイト達が密集し、縦に長くなるように並び始めて再びこちらを攻めにきた。
それじゃあ的は小さくなったけど一網打尽にできるだけでは?
「はあ!」
「[狐火]!」
しかし2人は関係ないと言わんばかりに大楯を投げ、[狐火]を放ち、ガラクタを投擲する。
「ガアアアアアアアア!!」
「「「グギャー!!」」」
キングの命令で前方のナイト達が一斉に
[狐火]に相殺された水弾は大楯やガラクタを止めることが出来ずに、前方にいたナイト達を数匹
驚くべきことに前方にいたナイト達は水弾の魔剣を2本持たされ、その後ろのナイトは逆に身体強化の魔剣を2本持つことで、乃亜や白波さんの物量攻撃を、味方を無理やり支えて吹き飛ばないようにして被害を最小限にしていた。
動かなくなったナイト達はその場で倒れるけど、そんな被害など気にしないと言わんばかりにその歩みを止めることはなかった。
「あのゴブリンキング意外と知性派だ」
「先輩、それ言ってる場合ですか!?」
「くっ、厳しいわね。でもあのゴブリンキングが命令して動かすなら、あれを殺せばあとは烏合の衆よ」
「しかしそれをするにはナイトが壁になってて、とてもじゃないですが攻撃が届きませんよ……」
かなりキツイ状況に歯噛みしながらも、乃亜達はゴブリン達が一気にこちらに来れないように攻撃をし続けるしかない。
つまり考える余裕があるのは僕だけなのだけど、いい案なんて早々浮かぶものでもない。
「白波さんの[幻惑]であいつらの意識を逸らせないかな?」
「全員にはかけられないし、かけれるのは前方にいるのくらいだけどすぐに犠牲になるからかける意味ほぼないわよ」
さっき苦しかった状況で今まで使っていなかったスキルが活躍して打開できたから、今回もスキルに頼れないかと思ったけどそう都合よくはないか。
乃亜が使えるスキルは[損傷衣転][重量装備][強性増幅]ですでに全部使用中。
白波さんが使えるスキルは[狐火][幻惑][獣化]で[幻惑]だけ使ってないけど、今聞いた通り使っても意味はない。
なら僕のスキルはと言いたいけど[フレンドガチャ]と[チーム編成]の2つしかないし、[チーム編成]ですでに2人のサポートをしている今、残っているのは[フレンドガチャ]だけ。
でも今までガチャをして出したアイテムなんて
なんでこれを忘れていたんだろうか。
わざわざガラクタを渡すくらいだったらこれを投げてもらった方がいいに決まっているのに……!
「白波さん、これ!」
「えっ、なに? って、あっ、これ!」
「それを出来るだけ遠くのナイト達に投げて!」
「これ、あと何個あるの?」
「29個!」
「ちょっと心もとないけどないよりまし、ねっ!」
山なりに放り投げられたビンは放物線を描いて中身をぶちまけながらナイト達へと降り注ぐ。
ビンの中身は500mlの油。
【
あの時はメイジに阻まれたせいで床に広がっただけだけど、今回メイジはいないから1ビンで広範囲のナイトに油をかけられる。
僕はどんどん白波さんに油を渡していき、29個全て投げつくされた。
「[狐火]!」
放たれた[狐火]が油に着火し、ほとんどのナイトに火がついた。
「「「ギギャーーー!!」」」
火を消そうと床の水たまりに転がり鎮火させようとするせいで隊列が無茶苦茶となってしまっていた。
「今よ! 鹿島もシャベルで応戦して!」
「分かった!」
僕らはすぐさまナイト達に近づき、僕は1体ずつだけど乃亜は大楯を1回振るう度にナイトが数匹まとめて吹き飛び、白波さんも僕らが巻き添えにならないように遠くのナイトに向かって[狐火]を撃ちつつ、近くのナイトを蹴り倒していた。
そうしてほとんどのナイトを倒した後で、残りはあと数匹と結局最後までろくに戦っていないキングだった。
「ガアアアアアーーー!!」
「はあっ!!」
キングが僕らに向かって手に持つ大剣を振り下ろしてきたので、乃亜が大楯で防ぎはじき返してしまう。
「あれ?」
乃亜がどこか疑問に首をかしげながらキングへと攻撃を仕掛けようとするも、残ったナイト達がそれをさせないと言わんばかりに乃亜に攻撃しようとしてきた。
「させないわよ!」
だけど白波さんが瞬時に[狐火]を放ち、残ったナイトも何故かキングの遥か後方に1匹だけいるのを除いて倒してしまう。
「後はそこのデカいのと、あそこに離れているやつだけよ!」
「えっ、ええ……」
「どうしたの高宮さん?」
「いえ、あのゴブリンキングですが何だかあまり強くないような?」
「[強性増幅]で強化されているからそう感じるんじゃないかしら? 今その疑問は後回しよ。次何してくるか分からないんだから早めに倒すに限るわ」
「そうですね」
乃亜は白波さんの言葉に頷くと、思いっきり振りかぶって大楯を投擲した。
「ッ!?」
狙いは的確でキングの顔面へと投擲されたそれは、キングに断末魔の悲鳴すら上げさず首から上を吹き飛ばしてしまった。
「よし、これで後はあそこのナイトだけだね」
そう僕らが油断した時、再びあれが現れる。
『クスクスクス』
【
「う、噓でしょ?」
「ま、まさか……」
「させないわよ[狐火]!」
白波さんがすぐさま[狐火]を水の中に沈んでいくゴブリンナイトに向かって放った。
だけどそれは間違いなく当たっていない。
『あなた達が落としたのはこのゴブリンジェネラル? それともこちらのゴブリンキング?』
悪夢が再び僕らに問いかけてきたのだから。
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