第16話 第二の試練〝雪の道〟(1)

 

 僕らは第一の試練である、この花畑の場所に来る際に潜り抜けた扉とは違うデザインの扉の前に来ていた。


『全員さっきの試練で摘んだ花は持ってるわね』


 先ほど移動中に1人3つ、花を持っているよう言われたので言う通りにしてるけど、次は一体何の試練なんだろう?


『それじゃあ第二の試練はこの先よ。その花を持っていないと通れないから注意しなさい』


 エバノラにそう言われ僕らはそれぞれ花を握りしめて扉を潜る。


 ――ビュオー


 扉の先の光景は一面の雪景色――


「って、寒!?」

『第二の試練は〝雪の道〟だからね』

「この格好で!?」


 この吹雪の中を水着でいろって、試練が先ほどと違って別の意味で難易度が高くなってないかな?!


「凍え死にそうなんですけど!」

『それは大丈夫よ。ほら互いにグループごとにくっ付き合いなさい』


 あまりの寒さにむしろくっつかずにはいられないから、言われるまでもなくすぐに乃亜達3人と抱きしめ合った。


「あ、温かい……、って、なんで急に体全体が寒さを感じなくなったの? どうなってるのこれ?」


 明らかに人肌で温まるレベルじゃない。

 触れあっているところ以外まで全く寒さを感じなくなっていて、背中はおろか雪に突っ込んでいる足すら雪の冷たさを感じていないとか異常なんだけど。


『この空間内では肌と肌の触れ合う面積が大きいほど、恩恵を発揮する空間なのよ』

「……一応聞きますけどその恩恵とは?」

『冷気を遮断する恩恵よ』

「ですよね」


 分かってたさ。だって今、まるで部屋の中のような快適な場所で触れあっているみたいな気分なんだもん。

 お互い水着なのにね!


「これはちょっとドキドキしますね」

「し、しょうがないわよね。寒さから身を守る為だもの」

「快適。もうずっとこのままでもいい」


 この格好で抱き合うとか、もう色々とヤバい。

 早く試験の説明をして欲しいよ。


『それじゃあ第二の試練〝雪の道〟を始めましょ』


 エバノラはパチンっと指を鳴らすと、僕らから少し離れた場所で雪が下からゴゴゴッと音を立ててせり上がってきた。

 そのせり上がってきた雪は壁のようにツルツルな面になっており、その高さはまるで高層ビルのようだった。

 そんな壁がいくつもせり上がってきて最終的にはまるで白い真四角な建物、豆腐建築のようだった。


 ただし1箇所だけ壁のない場所があり、まるでそこから入れと言わんばかりの箇所があるけどこれは一体……?


『第二の試練〝雪の道〟では、あなた達にあの迷路を通り抜けて次の試練の扉を目指してもらうわ』


 なるほど。

 この動きづらい体勢の状態でいかに早くゴールに辿り着くかの試練ってことかな。


『そしてこの場所での禁則事項はこれよ!』


 〝花の道〟の時同様に看板が僕らの前に現れた。

 どれどれ?


 《以下の禁則事項を破ったものは失格とする》

 ・暴力行為

 ・略奪行為

 ・建築物破壊行為


「性行為が消えてるってことは、今回は〝花の道〟みたいな目には遭わなそうだね」

『雪山で遭難した男女にそれを禁止するほどやぼじゃないわ。そして安心しなさい。そのギミックもちゃんとあるから』

「安心できなくなっちゃった!?」


 むしろ消えないで欲しい禁則事項が消えちゃった!?


「寒さから身を守る為ですから、仕方ないですよね先輩……」

「落ち着こう乃亜。今のままで十分寒さは防げているから」


 危ないところだった。

 前の試練の発情が残った状態で、薄着でくっ付き合っていたらマズイところ……ん?

 そう言えば男性Cのグループが発情状態が残ったままここに来ていたはず……。


 僕はそう思いながら男性C達のいる方へ視線を向けると――


「「「はぁはぁ……」」」


 お互い息を荒げながら体をすり合っていて、この場に自分達しかいなければ間違いなく何かが始まってしまうような状態であった。


 あ、危ないところだった。

 もしも咲夜に治してもらわずに全員が発情状態だったら、間違いなく僕らもああなっていただろう。


「「ちっ」」


 近くで聞こえた舌打ちは気のせいだと思いたい。


『すぐにでも試練を始めたそうな子達もいるけど、説明はまだまだ終わってないわ。ここでスペシャルゲスト登場よ』


 え、一体誰が出てくると?


 ガチャリと〝花の道〟に続く扉が開いたと思ったら、そこからとあるものが現れた。


『さっきの花、二足歩行バージョンのアンよ』

「一番来てほしくないのが進化して再登場してきちゃった!?」


 しかも花のサイズが無駄にデカい。

 さっきまで手で摘めるサイズだったのに、今は小学生くらいの大きさになってるよ。


『あなた達が迷宮に入った後、1分後にアンが出発してあなた達を追いかけるわ。アンに追いつかれた子は……分かるわね』

「花粉をかけられるんですね」

『その通りよ』


 予想通りすぎて泣ける。


『もちろん花粉をかけられるだけで、追いつかれても失格ではないから安心しなさい』


 むしろ失格にして元の部屋に即行で戻して欲しい。


『ちなみに暴力行為の禁則事項はアンも対象だから、倒そうなんて考えちゃダメよ』


 冬乃に[狐火]で倒してもらう案が潰されてしまった。

 じゃあもう追いつかれた時点でほぼ詰みな気がする。

 発情させられて動きが鈍ってるところを何度もかけられたら、耐える事なんてできないだろうし。


『1度追いつかれて花粉をかけられた場合、アンは10分間花粉をかけた子を追いかけないから安心していいわ』


 それなら1度程度なら耐えられるかもしれない。

 男性Cのグループは1度でもくらえばアウトっぽいけど。


『そして最後に、もしもアンに追いつかれそうになった時のお助けアイテムとして、今あなた達の持っている花が使えるわ』


 この花が?


『花の色ごとに効果が違うわよ』


 エバノラはそう言いながら2つ目の看板を出現させた。

 そこには花の効果が書いてあり、効果の横に絵で説明してあるのですんなりと効果が理解できた。


 ・赤の花:壁を通り抜けれます(2人まで)

 ・青の花:道を塞げます(1分間氷の壁が現れる)

 ・緑の花:囮を出せます(木の人形がアンを誘導)


『有効活用してあの迷宮を突破し、この第二の試練をクリアしてみなさい。制限時間は2時間よ。

 それじゃあ早速準備しなさい』

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