第15話 気分が台無し
『はい終了~。みんなお疲れー』
エバノラがそう言うと、僕らは強制的にエバノラの近くに集められた。
男性Aのグループ以外……。
『花を集める事を放棄して全裸で走り回った子なら、連れの女の子達相手に盛っちゃってるから放置してるわ。今凄い事になってるけど……呼ぶ?』
「やめてください」
人が行為をしているところなんて見たくないよ。
「そ、そんな事より、早く彼女の発情状態を治してくれませんか?」
男性Cがうずくまってる大柄な女性を指さしてエバノラに頼むと、エバノラはキョトンとした表情になった。
『え、嫌よ』
「えっ?」
『試練はそのまま続行するわ。第一の試練が終わったからって、そこで起きた事を無かった事にはしないわ。
全ての試練をひっくるめて1つの試練だと言ってもいいのだから、もしもその状態を何とかしたければ自分達でどうにかすることね』
あ、逆に良かった。
そうでなければ咲夜が[全体治癒]を使ったのが無駄になるところだった。
[全体治癒]の使用制限が1日に3度までだからね。
しかしその1回を1人だけのために使うのももったいなかったかな?
よくよく考えるとクロとシロが案内してくれた時、念のため[クイックセーブ&クイックロード]が使える乃亜に摘むのをお願いすれば良かったのかもしれないと反省。
でも、乃亜をあんな目に遭わせるのもどうかと思うので、結果的に僕が摘んで良かったかな。
「そ、そんな……」
『どうしても治して欲しいというのであれば、選択肢は2つあるわ』
エバノラがピースサインをして愉快そうな表情を見せた。
何か企んでいるようで怖いな。
『まず1つ目。リタイアすることよ。そうすればすぐにでもその発情を無かった事にして、元いた場所に戻してあげるわ』
「そ、そんなの選ぶわけないじゃないですか。せっかく頑張って花を探してくれたのに、その努力を不意にするような選択なんて……」
確かにあれだけ苦しい思いをしてまで花を探したのにギブアップとか嫌すぎるね。
とは言え、その状態ではまともに歩けないからどの道ギブアップな気もするけど。
『じゃあ2つ目ね。あなた達、キスをしなさい』
「「はい?」」
男性Cともう1人の女性が何を言っているんだこいつはという目でエバノラを見ていた。
『実はこの試練、花粉を受けて発情している時に同じグループの誰かにキスをした場合、その発情がキスをされた相手に
今回は誰も、いえ、遠くで盛ってる子達がその現象を起こしてるわ。
ただあの子達はプラグインした後でキスしたせいで、男の方は正気に戻ったのだけどどうせ失格になったのだからと、また花をむしって続行しちゃったわね』
理由を理解しかけたのに、後半の言葉で全てがぶっ飛んだ。
直接的な言葉を使わなかっただけ良かったんだろうか?
むしろ間接的な言葉にしたことでより卑猥になった気がしなくもない。
「分かりました」
男性Cは迷わず大柄な女性に対してキスをして発情の半分を受け持ったけど、いきなり1.5回分の花粉に耐えられるんだろうか?
「なあああっ!」
「わ、私に半分寄こしなさい」
男性Cが人に見せたらいけない顔になってしまったので、慌ててもう1人の女の人が男の人にキスして落ち着きを取り戻していた。
男性Cのグループはお互いに何度かキスすることで、発情度合いを全員が同等程度になるようにして花粉を1回受けた程度の発情にしていた。
「その現象、早く知りたかったですね」
「ええ、そうすれば[全体治癒]を温存――」
乃亜が男性Cのグループを見てボソリと呟いたので、冬乃がそれに頷き賛同しようとしてそれを乃亜に遮られることになった。
「キスし放題でしたのに」
「そっち!?」
「だって先輩、必要な時くらいしかしてくれませんし」
「それは確かに」
「咲夜さんまで何言ってるのよ!」
僕は何も聞こえない。
え、なんだって?
『童貞と処女なのはやっぱり男側に問題があるからなのね~』
うっさいやい。
『ところでそっちの子達はどうするの? ここでギブアップ?』
エバノラは男性Bのグループに顔を向けて、首を傾げながら問いかけると、男性Bは手を顎に当て下を向いて何かを考えだした。
数秒も経たない内に男性Bは顔を上げ、手を顎からどけるとエバノラに視線を向ける。
「1つ聞きたい」
『何かしら?』
「第一の試練ではこの花を3つ手に入れれば試練は突破されるのだよな?」
『ええ、そうよ』
「ならもしも花の数が1人分足りない場合はどうなる?」
『それはグループの中から1人脱落してもらう事になるけど、あなたまさか……』
「そうか」
男性Bは手に持っている花を3つ引きちぎってしまい、バラバラにして地面に捨ててしまった。
「この後似たような試練が起こる事が予測される。ここで全員が発情する状態になるのは避けた方がいい。すまないが君は元の場所で休んでいたまえ」
「うあっ、は、はい……」
「そういう訳だ。これなら問題ないだろ?」
『ちっ、胸糞悪いわね』
エバノラはパチンっと指を鳴らすと男性Bの近くでうずくまっていた女性は、この場から忽然と姿を消していた。
『上がった気分が台無しだけど、まあいいわ。次いくわよ次』
若干不機嫌そうになったエバノラが僕らを先導するように進み始めたので、僕らはエバノラに付いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます