第14話 第一の試練〝花の道〟(4)
誰もが失敗を恐れて花を採取できなかったのに、男性Cのグループの大柄な女性は1つ正解を摘み取った後、次から次へと正解を引き当てていた。
一体どうして正解の花が分かるんだ?
「なるほど。花粉をくらえば見分けがつく仕組みか」
大柄な女性の行動を見てすぐに見当をつけたのは男性B。
「それなら……おい、頼めるか」
「分かりました」
男性Bが3人の女性の内の1人に対してまるで上司が部下に命令するかのように命じると、女性はそれにあっさり従って、男性B達から離れて花を引き抜いた。
「あああっ……」
3本引き抜いた辺りで当たりの花の見分けがつくようになったのか、そこからは花粉の餌食にならず花を採取しだしている。
「なんて意地の悪い試練なんだ……」
「性行為を禁止しておきながら、それを助長させる仕組みですからね」
どうりでクロとシロが形が完璧な同じ物を見分けても花粉が噴き出す訳だよ。
「それじゃあ誰かがこれを引き抜かなきゃいけないの……?」
冬乃がすごい嫌そうな目で花を見下ろしていた。
花を見る目がもはやエロ本を教室に持ってきた男子を見る様な嫌悪感に満ちた目になっている。
「しょうがない、僕が摘むよ。はぁはぁ」
「蒼汰君耐えられそう?」
「分からないけどすでに1度くらってるからね。少し慣れてきたから多分いける、はず」
体が火照る感覚にも徐々に慣れてきたし、一気に発情するよりはマシなはず。
「それにいざとなったら咲夜が治してくれるよね?」
「………」
「治してね!?」
無言が何より怖いよ。
治してくれるか怪しさは感じるけれど、どうせ誰かがやらなければいけないのであれば、すでに被害を受けている僕がやるべきだ。
僕は意を決して手近にあった花を摘み取る。
――ブファッ
「ぐっ……、うああっ……!」
2回目でここまで体が火照り、立つのもやっとな状態になるのに、あの人達はよく3回まで耐えられたな……。
僕はその状態で花をよく見ると薄っすらとだけど、赤、青、緑の花に紫や黄色の斑点が浮かんでいるのが見えた。
確かに朦朧とする頭でもこれならどの花が当たりか分かる。
けど、当たりの花が多いような?
そう思いながら当たりと思わしき花を引き抜くと、何故かそれから花粉が噴出された。
「しまっ!? くうぅぅ……!」
や、ヤバい。
もう完全に一部だけ臨戦態勢。
体は立てないほどなのに、一部が抜刀状態で待機モードに突入してる。
「はぁはぁ………………。花、花を……」
少しの間うずくまって何とか息を整えると、ちょっとだけ落ち着いてきた。
そうして花を見てみると、先ほどよりも紫や黄色の斑点のある花が増えたように感じる。
まさか間違えれば間違えただけ、当たりとの違いが浮かぶのか……。
そんな事をぼーっとする頭で考えながら、なんとか当たりと思わしき花を摘む。
どうやらこれはセーフなようで花粉は噴出されなかった。
よし、次……。
そう思いながら当たりの花を探していると乃亜達が何やら話しているのが聞こえてきた。
「わたしなら[クイックセーブ&クイックロード]があるので確実に媚薬の効果から抜け出せたのですが……」
「ど、どうするの? 蒼汰が我慢できなくなったら」
「それはしょうがない。咲夜達が受け止めればいい」
「でも、先輩が試練に必要な花を必要本数全て回収した場合は、咲夜先輩治してあげてください。さすがに試練にクリアしたのに禁則事項を破って失格になるのは酷いと思いますし」
「分かった」
何か言ってる気がするけど、少なくとも集めきればセーフなのは分かった。
こんな所で禁則事項を破ることになってたまるか。
「ぬあああああああああああああ!!」
そう思いながら必死に花を探していたら、どこからか男の咆哮が聞こえてきたのでそちらに視線を向けたら大変な事になっていた。
「お、落ち着いてまー君!」
「まこっち、【典正装備】を手に入れるんでしょ!?」
「知るかー--!!」
「「きゃあああー--!!」」
男性Aが全裸で仲間のギャルっぽい人達に向かって走り出していた。
幸いにもこちらに背を向けて走っていたので、見たくないものを見なくて済んだのは良かったけれど。
『う~ん、この花粉を男が受けると、女性より性衝動を抑えづらいせいで大概の子達はあんな感じで失格になるか時間制限がきちゃうんだけど、あなたはよく耐えるわね~』
僕が率先して動いたのが間違いだった?
いや、どうでもいい。
は、早く花を集めないと……。
『やっぱり童貞だと女の味を知らないから耐えやすいのかしら?』
「やかましい!!」
この年で童貞じゃないやつの方が少ないんだから、童貞童貞言うんじゃないよ。
僕はエバノラにツッコミを入れて気を紛らわせながら、なんとか花を探す。
しかし3回も花粉を受けたせいか、今度はいくら時間が経っても衝動が落ち着かない。
「くぅ、こうなったら……」
僕は自身の胸に触れて5分の1までしかHPと体力を吸収していない【典正装備】、〔
そしてすぐさま花粉を受ける前から考えていた事を実行する。
「体力が無ければ、性衝動に襲われても襲えないでしょ……!」
徐々に黒い紙は白くなっていくと共に、体の怠さが増していく。
さすがに吸収するのはHPと体力だけなので性衝動までは吸ってくれないけど、それでも体の怠さが若干その衝動を抑えてくれている、ような気がする。
そうと思わなきゃやってられないだけなんだろうけど、それは気にせずもはや土下座に近い状態になりながら花を探し続けた。
そうして時間いっぱいまで花を探し続けた結果、なんとか全員分の花を集めきることには成功した。
「はぁはぁ……、や、やばい……」
集めきったのはいいけど、体の衝動がすごくてうずくまった姿勢のまま微動だにすることができない。
「……ちょっと治すのが惜しいと思ってしまうのはわたしだけでしょうか?」
「ここが個室だったら蒼汰君、襲ってくれたよ、ね?」
「早く治してあげなさいよ!!」
冬乃が咲夜に声を荒げて促してくれたお陰で、すぐに[全体治癒]で治してくれて衝動が治まってくれた。
しかし僕は咲夜が治してくれたからいいけど、他のグループの人はどうするんだろうか?
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