第2話 無課金って世知辛い
ほとんど授業内容が頭に入ってこないまま昼休みを迎えたけど、未だに元気が湧かない僕は食欲も湧かないので、ご飯も食べずに机に突っ伏した。
というか、弁当作ってきてないから何も食べるものがないし。
「重症だね」
「8月の時は3日くらい落ち込んでたが、今回はそれよりも長引きそうだな」
あの爆死は確かに辛かったけどその時の比じゃないくらい辛い……。
「蒼汰、昼飯はどうするの?」
「食欲ない。そもそも弁当持ってきてない」
「おいおい、ショックなのは分かるが少しは食えよ。ほら、オレのカツサンド分けてやるから」
大樹がくれたカツサンドを受け取りもしゃもしゃと食べたけど、カツサンドってこんなに味気の無いものだっただろうか……。
「3週間ぶりの肉なのに、あまり嬉しいと感じない」
「3週間って……、さすが毎食モヤシで食費削ってるだけあるね~」
「普通男子高校生ならもっと肉とか食いたくならないか?」
そんな金あるならガチャ回すわ。今はもう課金できないけど。はぁ~。
「[無課金]かぁ……」
「まあでもいいんじゃない? だってまだソシャゲその物ができなくなった訳じゃないんだよね?」
「そうだけど……ちなみに2人って課金しない場合どうやって遊んでんの?」
「……蒼汰、お前がやってるソシャゲは基本無料だぜ?」
「だから課金してたんだけど?」
基本があるなら次は応用に決まってるじゃん?
「全く意味が分からないね。まあいいや。まず毎日アプリを起動しログインボーナスは必ず手に入れ、週に1回あるミッションボーナスでガチャを回すための石を手に入れる。後はイベントやストーリーをやるくらいかな」
「で?」
「以上だけど?」
「ふざけてんの?」
そんな当たり前のこと堂々と言わないでよ。
「別にふざけてないよ。石を得られる機会は逃さず行うか、イベント周回したりストーリー進めて遊ぶ以外何かあるのかな?」
「ガチャは?」
むしろこれがメインでしょ!
「イベントの時とか、欲しいキャラとかがピックアップされてたら回すかな」
「でも無課金じゃ石足りなくて出ない時あるでしょ? 課金しないの?」
「何が何でも課金したいのかい? 確かに出ない時もあるからその場合はしょうがないから諦めるね」
「はっ?」
「なに言ってんだこいつ、みたいな目で見ないでよ。しょうがないでしょ。石がないんだからどうしようもないよ」
「だからこその課金でしょ!?」
「蒼汰は[無課金]を忘れてない? 課金しないで遊ぶためのあれそれを聞いてるんじゃないの?」
うぐっ……、確かにそうなんだけど。
「でもそれじゃあイベントとかピックアップでガチャ回す回数10連が2、3回しか出来なくない?」
「それは毎回ガチャしてればね」
はい?
「何回かイベントやピックアップを諦めて、本当に欲しいキャラが出るまでひたすら石を貯め続けるの」
「………ぁ」
「そんな絶望した目で見ないで。なんか言ったこっちが悪い事した気分だよ」
だって、そんな、ガチャを我慢し続けるなんて……僕には無理だ。
「まあそれだけ石を貯めたところで、全部使い切っても欲しいキャラが出ない事は結構あるけどね」
「なん、だと……?!」
「当たり前だよ。石を貯め続けると言っても、ボクが数か月我慢して貯めた石はせいぜい課金すれば2、3万で手に入る石の量と大差ないんだから」
「……馬鹿な」
「そんな『今までそれっぽっちの石でよく遊べたな』って顔してこっち見ないで廃課金者」
「うっ、うううぅ」
これから僕はどうやって生きていけばいいんだ……!
「なんかこの世の終わりみたいな顔で泣きそうになってるな」
「蒼汰は課金してでもガチャを回すことを生きがいにしてたからある意味当然かもね~」
「しかしそれなら何で真っ先に冒険者登録しに行ってないんだ?」
………………えっ、なんで冒険者?
「ダンジョンでレベル上げしてスキルを育てればワンチャンデメリットスキルが
「それどういう事!!?」
「うおっ! びっくりした……」
大樹が聞き捨てならないことを言い出したので、飛びつくようにしがみついて僕は再び問いかける。
「スキルが変質するってどう言う事!?」
「あっ? 知らねえのか?」
「普通は知らないんじゃない? ボクだって大樹に連れられてダンジョンに行かなかったら知らなかったし」
「ああそうか。まあ簡潔に言えばダンジョン行って魔物を倒すとゲームの様にレベルが上がるんだが、その際にスキルも一緒に成長する場合があるんだわ。
だからもしかしたら蒼汰のスキルだって変わるかもしれないと思ってな」
「分かった冒険者になる」
僕が何をすればいいか分かった。
「いや即決かよ! もっとこう悩んだりするもんじゃねえの?」
「何を悩むことがあるだろうか。目の前に可能性が提示されているというのにそこに進まぬのは愚か者の所業よ」
「口調まで変わってる……。ぷくく、やっぱり蒼汰を見てるのは面白いね」
まるで愛玩動物が瓶に入った餌を必死に取り出そうとしているのを微笑ましく見ているかのような目をして彰人が僕を見ているけど、それを無視して大樹に頭を下げる。
「と言う訳で、冒険者のノウハウを教えてください」
「スマン無理だ」
「WHY?」
「無駄に発音いいな。それはいいとして、なんで無理かっつうと、新人冒険者が間違った知識を覚えないよう、現役の冒険者が無断で知識を広めるのが冒険者組合で禁止されてるんだよ。
だからオレから教わるんじゃなくて、冒険者組合に行って講習を受けてくればいいぜ」
「そうだね~。その時に新人同士で1度パーティーを組んでダンジョンに潜る事になるから、ついでに蒼汰はそこで今後一緒に潜ってくれる人を探すといいんじゃないかな?」
「えっ、大樹は一緒に潜ってはくれないの?」
彰人はもうダンジョンに行ってないから無理に誘ったりはしないけど、大樹は僕がバイトをしてる回数と同じくらいダンジョンに行ってるみたいだから、内心当てにしてるんだけど。
「わりい。オレと志を同じにする同志達と基本的に行ってるから、あまり蒼汰と行けそうにはねえんだよ」
「ハーレムを作りたい男達が力と金を得るために協力するチームだからね~。大樹が急に外れると迷惑がかかるだろうね~」
くっ、大樹がハーレムを目指すためにダンジョンに行ってる事は知っていたけれど、そう言われると無理にお願いはできないか。
「今、週5でダンジョンに行ってるから、平日に1、2日くらいなら何とか都合はつけれると思うが……」
そう言って大樹は申し訳なさそうにこっちを見てくるけど、危険な場所であるダンジョンに行ってるのにろくに休養しなかったら大怪我の元なのだから気にしないで欲しい。
そう伝えた後、僕は今後の計画を頭の中で練った。
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