第34話 【織田信長】
『ん~お疲れ~』
座って休憩していたら傍にいた
「見てるだけで腹立たしい事この上ない、崩れた涅槃のポーズで言わないでくれません?」
上半身は涅槃だけど、下半身が休日のおっさんみたいな足で足を掻いてるような、完全にくつろいでますスタイルなんだよ。
エバノラも涅槃のポーズをしていたし、魔女達はこのポーズがお気に入りなんだろうか?
『6人の武将全て倒したから本番始めるよー』
「今までやる気の欠片も無かったのに一体どういう風の吹き回しなの?」
まあ面倒そうに言ってるので、やる気がないのには変わりが……ん?
……今、本番始めるって言った?
「いや、ちょっ!?」
『じゃ、スタート』
止める間もなくパチンと指を鳴らされた後、気が付けばあの場にいた僕ら全員が
ここもしかしてさっきまで外から見ていた本能寺の中かな?
って、そうじゃない!
「もう動けない人もいるのに何で勝手に本番を開始するんですか!?」
『そっちの事情なんてボクには関係ない。そもそも敵対している相手にちょっと待ってって言う方がおかしい』
ぐうの音も出ない正論を言われてしまった。
いやそりゃそうだろうけどさ。さっきまで一緒に行動してたのにそれはないんじゃない?
『でも安心していい。もう戦い
その言葉を聞いてホッとした。
咲夜は少しずつスタミナが回復しているとはいえまだ戦闘なんてとてもじゃないけど出来る状態じゃないし、亮さんなんて生きているのが不思議なくらい衰弱しているように見える。
他にも謙信との戦いで大怪我を負っている人も大勢いるので、戦闘はまず無理なのは間違いない。
しかし不穏なのは戦闘『は』と強調した点だろうか。
一体何が起こるというのか。
そう思っていたら、
よく見るとそれは印籠だけど、謙信の3つの印籠はいつの間に回収していたんだ?
『人間五十年――』
信長が本能寺の変にて、敦盛の舞を舞って自害したという話はあまりにも有名だ。
もっともそれは本当の出来事なのか怪しいのだけど、確か【
『疲れた』
「途中で止めるんだ」
まだ『人間五十年』しか言ってないじゃん。
そんな僕のツッコミをよそに、6つの印籠は僕らの前で収束していき一際大きく光り輝いた瞬間、一本の長い刀が抜き身で床に突き刺さって現れた。
『その刀は
――ボウッ
『今君達は普段ボクが抱えている“怠惰”を移された。
ああ久々だな、やる気もなにもない状態から解放されるのは』
………。
『思考するのも億劫だろう。
だからボクから一方的に説明だけしようか。
最終試練。織田信長を討て。
試練の内容は簡単。
その刀でボクを斬れば【
もっとも、“怠惰”に抗わないといけないけど。
この試練ではスキルの使用が不可能で精神耐性系のスキルは効果を発揮しないから、ほぼ自力で耐える必要がある。
制限時間は見ての通り。
……ああ、君達は考える気力もないだろうから教えないといけないか。
本能寺についた火が中まで燃え広がり君達が焼き殺されるまでだよ。
さて、これで一通りの説明はした訳だけどせっかくだ。
君達が焼け死ぬか“怠惰”に抗ってボクを斬るまで時間がありそうだし、【織田信長】をベースに創ったこの試練の内容を語ろうか。
君達が倒した6人の武将、2人ほど仲間割れみたいな感じで倒されたけど、その6人は信長とは縁もゆかりもある人物なのは分かっているよね?
その6人は織田信長と同盟を締結した人物だ。
“怠惰”の性質上織田信長は戦えないから、その同盟者に力を託す形でその6人を召喚し代わりに戦わせることにした。
本来なら徳川家康も同盟者として呼び出すはずだったんだけどあの人物はコストが重かったから無理だった。
武田信玄と上杉謙信の2人もただでさえコストが重かったけど、あの人物は別格だったよ。
逆に一番軽かったのは姉小路頼綱だったかな?
偉そうな名前の割には随分とコストが軽かったな。
おっと、こんな話は君達には関係のない事だったから話を戻そうか。
織田信長にゆかりのある人物を試練として組み込んだのなら、絶対にいなければいけない人物がいるのは分かるね?
そう、明智光秀だ。
ここまで言えばもう気付くかな?
そう。挑戦者の君らが明智光秀だ。
明智光秀が本能寺にて織田信長を討ってみせれば試練クリア。存外単純な試練だろ?
って、誰も聞いてないか。
……ふぅ。全員焼け死んで刀は再び印籠に戻り、6人の武将が復活することになりそうだな』
………。
………………。
………………………………ガ、チャ。
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