第31話 背中で感じる圧倒的戦力
僕は増えたメダルを見て、もうコインに変えちゃおうかなと思った。
「1000枚使っても126枚残るなら変えてもいいかな……」
「待った」
「咲夜?」
「不用意に1000枚景品に使うよりもそれを元手に増やした方がリターンは大きい。もちろんその1000枚が無くなってしまう可能性も大いにあるけど、たった1回分のガチャよりも、ここは元手を多く残してメダルを増やしていく方が結果的にガチャが多く出来る」
「お、おぅ……」
咲夜が早口で
自分のよく知ること、と言うよりおそらく好きな事だとスラスラ喋れるのかな。
「じゃあどうしよう。スロットはこれ以上続けても稼げるかな?」
「正直スロットは完全に運。だけどブラックジャックなら、思考する余地があるから堅実に稼ぐならこっちがおススメ」
「と言われても、ブラックジャックとかよく知らないんだけど」
「大丈夫。咲夜は分かる」
「あ、だったら代わりにやってみる?」
「うん!」
僕はスキルで出したスマホを咲夜へと手渡そうとした。
「「あれ?」」
だけど咲夜に手渡そうとしたスマホは、まるで立体映像にでもなったかのように素通りして掴むことが出来ずに床に落ちてしまう。
咲夜が床にしゃがんで何度も拾おうとしても拾えないようなので、単純に受け取り損ねた訳ではなさそうだ。
乃亜がそんな咲夜の様子を見て、自身も屈んでスマホに触ろうとしたけどその手がスマホに触れることはなかった。
「見た目完全にスマホのせいで勘違いしてしまいそうになりますが、スキルなだけあって、本人以外は使えないどころか触れることすら出来ないんですね」
「残念……」
咲夜は肩を落として落ち込んでいたけど、そんなにやりたかったのかな……。
「蒼汰しか触れないなら、咲夜さんが指示して蒼汰が操作すればいいんじゃないの」
「まあそれしかないよね」
僕は落ちているスマホを拾うと、ブラックジャックを起動させた。
「よかった。こっちは普通だ」
テーブルとカードしか表示されていなくて、女の子の絵が映っていたりしていない。
さっきのスロットの件があるから、最悪ディーラーが巨乳バニーガールの可能性も想定していたけど、普通でよかった……!
自分と年の近い女の子の横で、そんなギャルゲーに組み込まれたミニゲームみたいなゲームをするのは勇気がいるよ。
……彰人は平然とやっていたけれど。
大樹といい彰人といい、女子にナンパしまくったり女子の前でもギャルゲーしたりと、あの2人のメンタルにはホント関心しちゃうよ。
「さて、どう進めてけばいいんだろ?」
「まずは掛け金を決める。とりあえず様子見で1枚だけ」
僕は後ろから指示された通りに、掛け金を1枚だけ賭ける。
……咲夜って着痩せするタイプなのか。
背中にくっつくようにして僕の手元を覗いてくるせいで、背中に胸が押し付けられて、圧倒的質量が伝わってくる。
いけないいけない。今はこっちに集中しないと。
なるほど。ブラックジャック、スロット、麻雀の順で遊ぶのに必要なメダルの枚数が増えてく仕様か。
ブラックジャックは1枚からでも遊べるけど、麻雀なんて1000枚あっても遊べなかったしね。
掛け金を決めるとブラックジャックが始まり、カードシューと呼ばれる物にあるカードの束から2枚ずつカードが配られたけど、ディーラーの他にも僕以外のプレイヤーが3人いた。
僕以外のプレイヤーはどうやらCPUのようだ。
「2、7で9だからヒットで」
「ヒットって?」
「それは――」
ヒットはカードをもらい、スタンドはカードをもらわず勝負、ダブルダウンで賭けてるチップを倍にしてカードをもらうことらしい。
絵札は10でAは1、11になって、配られたカードが合計21に近い数字に目指すくらいしか知らなかったから、説明の補足はありがたかった。
22以上だとバーストで問答無用で負けになるとか。
「普通なら他にもルールがあるけど、カードが1セット、52枚しか使わないし簡略化されてるね」
「へー、そうなんだ」
咲夜の指示通り、ヒットするとスペードのジャックが手元に来た。
「絵札だと10だから9+10で19か。結構いいんじゃない?」
「うん。悪くない」
他のCPUのプレイヤーは22以上になってバーストしていたり、合計で16程度で僕が一番いいけど他のプレイヤーは問題じゃなくて、ディーラーがいくつかが問題だ。
ディーラーは配られている2枚のカードの内、1枚しか開示されていなくてその数字は8だった。
「あ、19で引き分けだ」
伏せられていたカードはAで19になり引き分けだった。残念。
使ったカードは端に寄せられ元のカード束に戻されず、続けるか否かが表示される。
なるほど。少しだけどゲームの内容が分かってきたよ。
「うん。それじゃあしばらく掛け金を抑えめで勝負してみて」
「え? 僕が好きにやっていいの?」
「合計が16以下ならヒットしてみる程度で大丈夫。ここぞという時に指示するから」
「うん、分かったよ」
咲夜の言う通り適当に1枚ずつ勝負していて、カードの枚数が残り少なくなってきた時だった。
「掛け金を上限の300枚までかけて」
「え、いきなり!?」
今まで1枚ずつ賭けていたのに、いきなり300枚賭けすることになると思わず咲夜を二度見してしまう。
「大丈夫。……多分」
「わ、分かった……」
300枚賭けてきた手札は6とAで17、ディーラーは4と何かだった。
「運がいい。ダブルダウンで」
「さらに倍!?」
さっきまでチマチマ賭けていたのが嘘みたいな賭け方だよ。
咲夜の言う通りダブルダウンをすると絵札がきて一瞬バーストかと思ったけど、Aは1にも11にもなるから17のままだったからホッとした。
「でも17で勝てるかな?」
ディーラーの手札は4と10で14。
このままだと負けるディーラーはやはりカードを引いた。
これが2以下か8以上なら勝てるけど大丈夫か……!
「うん、勝った」
「えっ?」
ディーラーがカードをめくる前に勝利宣言をした咲夜。
めくられたカードは絵札でバーストし、咲夜の宣言通り僕らは勝った。
「カードの山にはすでに3~7は尽きてたし、絵札がまだ山に多く残ってるからほぼほぼバーストすると分かる」
「え、今まで使ったカード記憶してたんですか?」
「カウンティングは基本。1セットしかないし簡単だった。3セットまでならいける」
すげぇ……。
咲夜の記憶力に驚愕しながら、ゲームを進めていき順調にメダルを増やすことが出来た。
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