第32話 2日目の朝
咲夜のお陰で3時間かけて5183枚まで稼ぐことが出来た。
1万枚に届かなかったのは残念だけど、明日は5時には防衛していた場所で待機しているよう言われているらしいので、乃亜達にメダル稼ぎを止められ就寝することになった。
翌朝、スマホのアラームがけたたましく響き、まだ眠い気持ちを押し殺してスマホに手を伸ばしてアラームを切る。
あー眠い。
4時に鳴るよう設定したから色々朝の支度を考えるともう動かないと間に合わないのだけど、眠いものは眠い。
「先輩、おはようございます」
「布団に潜りこんで、あたかも同じ布団で一晩過ごしたかのような雰囲気を作り出すのは止めよう」
一瞬で目が覚めた。
いつ入ってきたのかサッパリ気が付かなかったよ。
何故か守られるべきプライベートを守る個室が機能していなかったけど、どうやら鍵をかけ忘れていたようだ。
しかしこんなところ宗司さんに見られたら何言われるか分からないな。
やはり娘を持つ父親としては、いきなり現れた男に奪われるのは嫌なのだろう。
いや、僕と乃亜はそんな関係では……と考えて、ふと、乃亜の方を見る。
手前くらいの関係までは行ってる? いや、もうこれ恋人以上の距離では?
「もうそろそろ起きた方がいいかと思って起こしに来たのですが、寝ている先輩を見てたらつい添い寝がしたくなりまして」
「途中までは真っ当な思考なのに、急に意味が分からなくなったぞ」
なんで寝てる僕を見たら添い寝をしたくなるんだよ。
「でしたら今度は寝てるわたしの布団に忍び込んでいただければ、この気持ちが分かるかもしれませんよ」
「男がそれやったら、完全に事案では?」
「女がやっても同じですよ?」
そうと分かってやる乃亜の覚悟が凄い。
いや衝動的にやってしまっただけかもしれないけど。
「まあいいや。いい加減起きよう」
「はい!」
僕は乃亜を部屋から追い出してジャージから着替えると、スキルのスマホを召喚して[放置菜園]をこなす。
昨日の様子なら咲夜に〔成長の苗〕をすぐに渡さなくてもスケルトン相手なら余裕だろうけど、もうパーティーに正式採用でいいと思えてきてるので、数が無くて与え渋っていた〔成長の苗〕を与えていいかもしれない。
“
スマホを操作しながら個室を出て、リビングへと足を運んだ。
「おふぁよぅ蒼汰……」
「おはよう蒼汰君」
「おはよう2人とも」
咲夜は寝起きとは思えぬほどしゃっきりとしているけれど、冬乃はまだ眠そうに眼をこすっている。
しっかりしていそうな冬乃だけど朝は弱いのかな?
「みんなこんな時間に起きたのに……ふぁっ、しゃっきりと起きてるわね……」
冬乃があくびをしながら、狐耳をヘタらせて船を軽く漕ぎながら座っていた。
「やっぱりいつもと同じ時間に寝て起きないと、ちょっと辛いわ……。近くで“
バリケードが決壊しかかったら初日の時のように緊急放送が流れるとはいえ、リラックスしてぐっすりと眠るのは難しいよね。
「お父さんから聞いてましたからね。気にしても仕方ないし、寝れるうちに寝とかないと、3日目なんて
「咲夜は睡眠時間、短くても平気だから」
頼もしい2人だ。
「まあ昨日と同じようにこなせば大丈夫でしょ。それよりも[フレンドガチャ]で朝ご飯出すけど何がいい?」
「私は軽いのでお願い……」
「パンとか? アンパンと牛乳でいい?」
「それでいいわ~」
「冬乃先輩。朝はちゃんと食べないとキツイんじゃないですか?」
「1時間ごとに休憩があるんだし、お腹すいたらまた蒼汰に何か出してもらうわよ」
僕もその手でいくかな。
寝起きにガッツリとは食えないし。
「乃亜は何食べるの?」
「わたしは朝はご飯派ですが何があります?」
「おにぎりなら出せるけど。具も色々あるよ」
「では適当に3つほど。あとサラダと卵焼きがあれば言う事ないのですが……」
「はいよ」
「先輩のスキルってなんでも出ますね」
「なんでもはないかなー」
ガチャ次第だし。
「咲夜は?」
「乃亜ちゃんと同じので。お肉もあったら嬉しいけど」
「じゃあ追加で唐揚げ棒出しとくね」
「コンビニじゃない」
冬乃が次々と出すアイテムのラインナップにそうツッコミを入れてきた。
「正直、自分のスキルの中で一番便利だとは思ってる。挨拶するだけで日用品が手に入るし、いくらでも持ち運べるからね」
「他のスキルは先輩への恩恵が悲しいくらいありませんものね」
「ホントだよ」
「でも私はそのスキル、羨ましいと思うけどね」
「冬乃の[獣人化(狐)]より?」
「むしろ私はこのスキルがいらないわよ」
「似合ってる、よ?」
「咲夜さん、全く嬉しくないわ」
スキルが選べたり交換出来たらよかったのにね。
僕らは駄弁りながら朝食をとった。
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