第33話 ちょっとチクッとしますね~
僕らは5時前に昨日まで防衛していた地点に向かったけれど、そこは昨日と同じ光景ではなかった。
バリケードも人も何もかも昨日と同じだったけど、1点だけ違う点があり、そこを見逃すことは出来なかった。
「あのスケルトン達、武器を持ってるんだけど……」
昨日まで何も持っていなかったスケルトン達だったけど、今日はボロボロの剣や槍を携えており、明らかに殺傷能力が上がっていた。
「昨日までは上層のスケルトン達があふれ出てただけですからね。時間が経つにつれてドンドン敵も強いのが出てきますから気を付けてください」
昨日ここで交代の合図を出していた隊員の人が僕のつぶやきを聞いてか、そう話しかけてきた。
隊員の言う事が本当なら、さっき乃亜が宗司さんに3日目がきつくなると言われたとは聞いていたけど、まさか敵の強さ的な意味でも言っているとは思わなかった。
「では、そろそろ準備をお願いします」
「分かりました」
僕らは昨日のようにバリケード近くへと向かうけれど、昨日と同じようにいくとは限らないと頭の片隅で認識しておいた方が……あっ。
「咲夜素手だけど、何か武器を使った方がいいんじゃないの!?」
「ん?」
いや首を傾げている場合じゃないでしょ。
昨日は敵も武器を持たなかったから問題なかっただろうけど、今回は剣だの槍だの持っているんだから、素手で対峙するのは危ないのでは?
「いや、ほら、向こうは剣も槍も持ってるんだよ?」
「咲夜は拳1つで十分」
やだ、男前。
って、違う違う。
「乃亜や冬乃は【
「……問題ない。あの程度の武器じゃ傷つかない」
「え?」
「[鬼神]で肌も頑丈になってるから、並大抵の武器じゃ傷つけられない」
「あ、そうなんだ。凄いな……」
僕なんか紙装甲だから、咲夜に軽く殴られただけで全裸に……忘れよう。
「よし、じゃあ問題なしだね。準備OKです」
「分かりました。それでは皆様、気を付けて行って来てください」
初日と同じセリフを告げられ、空へと向かって大きなロケット花火が放たれた。
それと同時に僕らも一番外側のバリケード入口へと駆けていく。
「おっ、坊主に嬢ちゃん達。後は頼む、ぜ!」
昨日と同じ冒険者でこのチームのリーダーの人が、最後の一撃と言わんばかりに大きなハンマーを言葉の最後に振るうと、素早く僕らが来た道を他の人と一緒に戻っていった。
「寝起きの体操にしては荒っぽいけど、それじゃあ張り切っていきましょうか!」
冬乃が昨日のように正面で戦い始めるけど、今日は足技を使わず〔
冬乃だけが戦闘スタイルを変えないといけなかったから少し心配だったけど、スケルトン達は剣や槍を持ってるだけで速く動けたりする訳じゃないので、十分対応できるようだ。
乃亜は〔
うん、乃亜も問題なさそうだね。
一番気になる咲夜だけど、[鬼神]の効果で頑丈になると言っていたけど本当に大丈夫なんだろうか?
そう思って咲夜の方にも視線を向けたけどそこには信じられない光景が広がっていた。
昨日と
「ええぇ……」
スケルトン達に
『……咲夜、大丈夫なの?』
『何が?』
平気そうな返事が返ってきた。おかしいでしょ。
『剣で斬られ、槍で突かれてるように見えるんだけど』
『ちょっとチクってする程度』
注射かよ。
『後はちょびっとだけ服が破けて困るくらい?』
『あ、それはわたしのスキルの影響ですね』
『いや、スケルトン達に剣や槍で攻撃を受けたせいだと思うよ……』
乃亜の[損傷衣転]で服にダメージを肩代わりさせたら、普通はちょびっと破ける程度じゃ済まないだろうし。
『全員大丈夫そうだけど、今日のスケルトン達は武器を持ってるから服を直して欲しい場合は言ってね。すぐに直すから』
『『了解』』
『……分かったけど、昨日みたいにメイド服着せるんじゃないわよ』
『分かってる分かってる』
さすがに2度目はないと理解してるよ。
冬乃の〈衣装〉画面のコスチュームを登録する箇所は空欄にしてあるし、一応許可をもらって乃亜にセットしてあるので、冬乃に間違って着せる心配はない。
2日目になって敵も若干強くなったようだけど、僕らにとっては誤差の範囲だったようで昨日と同じ戦法で乗り切れそうだった。
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