第7話 新機能〈サポート〉

 

 アップデートされた派生スキルを確認したら[フレンドリスト]と[チーム編成]だった。


 [フレンドリスト]は単純に今まで登録できる人物が5人だったのが、10人に変わった。

 ……エバノラにいじられる前が10人だったから、これアップデートというより元に戻っただけだな。


 いや、エバノラにいじられなければ今回ので15人だったのかもしれないけど、そんなタラレバ考えるだけ無駄か。

 それよりも[チーム編成]だ。


 新たに追加された機能、〈サポート〉。


 今まで[チーム編成]は〈武具〉〈衣装〉〈スキル〉〈育成〉の4つの機能があったが、それに〈サポート〉が加わった形だ。

 調べてみると〈サポート〉の機能はパーティーを組んでいない人物に対して、[チーム編成]の効果を及ぼすことができるようだ。


 その機能が追加されたからか、[チーム編成]の説明文は「[チーム編成]で登録された人物の強化及び装備の設定が可能となる」に変わっていた。

 以前は「パーティーを組んでいる者を対象とし、その者の強化及び装備の設定が可能となる」だったので、パーティーを組まなくても融通を利かせてくれるみたいだね。

 ……スキルに融通されるとか、自分のスキルなのにスキルに振り回されている気分だな。


 それはともかくその〈サポート〉の機能を早速使ってみようか。


「ソフィアさん、オリヴィアさん、オルガ。ちょっといいかな?」

「どうしたんだいソウタ?」

「ん、なんだ?」

「……?」


 3人が傍に寄って来てくれたので事情を説明し、もしよかったら僕のスキルでみんなを支援する事を伝えた。


「どうする? [チーム編成]の〈スキル〉で相手のスキルも確認できるけど、それをするつもりはない、って言っても信用できないだろうけど」

「私は一向に構わん! 見られて恥じる様なスキルなど持っていないし、バフを貰えるほうがありがたい」


 率先して承諾してきたのはオリヴィアさんだった。


「……ボクも」


 オルガもオッケーと。

 どうでもいいけどオルガってボクっ娘だったのか。


「……まあソウタなら前も勝手にスキルを見ようとしなかったし、もうスキルを見せてるから今更か。ワタシもお願いするよ」


 ソフィアさんも頷いたので、3人全員にバフをかけることが決まった。


「先輩、オリヴィアさん達も全裸にしちゃうんですか?」

「なんだと!?」

「誤解を招く言い方しないで欲しいな」


 乃亜のとんでも発言で、オリヴィアさんの僕に対する視線がきつくなったのだけど、それはないから安心してよ。


「新たに[チーム編成]で追加された〈サポート〉でバフを与えられる人物には〈武具〉と〈衣装〉の機能が使えないんだ。

 だから乃亜達みたいに武器を新品に交換したり、コスプレ衣装でさらに強化させることはおろか、服の登録もできないよ」

「そうなると〈育成〉の効果のみが与えられることになるんですね」

「そうだね。しかもその人数は[フレンドリスト]に登録されている人物だけだから、そんなに沢山の人達にバフは与えられないことに変わりないし」

「だけど蒼汰。〔成長の種〕とかその辺は大丈夫なの?」

「問題ないよ冬乃。乃亜達にはもう必要なくても無意味に数は増やし続けていたから」

「なんで必要なかったのにそんな事してたのよ?」

「……アプリゲーユーザーのさがかな」


 今は必要なくても、ついついゲームで地道にアイテムとか集め続けたりしちゃうんだよね。


 そんな訳で〔成長の果実〕はともかく、“種”“苗”“花”までならフルで与えて強化することはできる。

 残念ながら“果実”は数がそんなになくて、乃亜達にもフルで与えれてないのでそっちは無しで。


 そんな訳でソフィアさん達3人にバフを与えたわけだけど、その効果は絶大だった。


「これがソウタの力……。さっき[ファーストギア]を使わないと一撃で倒れなかったアイアンゴーレムを使わずに倒せたなんて」

「凄い! 私でもゴーレムを斬り倒せるぞ!」

「……体が軽い」


 テンションが高くなり、特にオリヴィアさんがかなり張り切って敵を倒していて、その日は僕と冬乃に魔物達が全く近づいてくる事はなく、冬乃の攻撃を逃れた魔物の全てを乃亜や咲夜、ソフィアさん達が危なげなく倒し続けた。


『で、ワタシが呼ばれなかったってわけ』

「そんな掲示板のスレタイみたいな言い方しないでよ」


 夜になり、あとの時間は中国とロシアの軍の人達に任せて割り当てられた仮の宿泊所で休息をとっている時に、アヤメがスキルのスマホから飛び出してきたんだ。

 こっちが何もしなくても出入り自由とか、着実に僕のスキルに順応してない?


 いや、今はそんな事よりも、ふて腐れてジト目を向けてくるアヤメをどうにかなだめないと。


「しょうがないじゃん。あんまり人目の付く所でアヤメやクロ達を見せるのはマズイかなって思ったんだよ」

『今更じゃないです? ご主人さま達の持つ【典正装備】やスキルで出してるモノだって誰もが思うだけなのです』

「あ、言われてみると確かに」


 〔ミミックのダンジョン〕でドロップした謎の黒と白の石、クロとシロから生まれたアヤメの存在は、その出自が特殊なのもあって隠した方がいいと思っていたけれど、言われてみれば【典正装備】やスキルと思われるだけだから問題ないのか。


『活躍の機会を奪って、課金をこちらに回させない作戦は取らせないのです!』

「毎月2000円はそっちに回すことになってるじゃん」


 毎月2000円ってアプリの月額パスでももっと安いよ。


『でもでも、自分達の住む環境はどんどん良くしたいのです~』

「気持ちは分からなくもないけど、2000円の範囲で頑張ってよ」


 というか今でも疑問なんだけど、川とかいらなくない?


 その日の終わりはアヤメの抗議の声を聞きながら就寝することになった。

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