第1話 神回確定(ただしヤツにとっての)

 

「ヒャッハー! 課金の時間だー!」

『……ご主人さま。まだパパを救出出来ていないのにそれはないんじゃないのです?』


 別に死んだわけじゃないんだしいいじゃん。


 今日は12月1日。

 明日にはイギリスへと向かう事になっているのでその前に少しでも手札を増やす、という名目のもと〔忌まわしき穢れはブラック逃れられぬ定めイロウシェン〕と〔太郎坊兼光ショート リヴド破解レイン〕を使い、忌まわしき[ソシャゲ・無課金]スキルを[ソシャゲ・無理のない課金]スキルに変更するためにダンジョンに来ていた。


「アヤメちゃん。先輩がこういう人なのは今更なのですから、気にしたら負けだと思いますよ」

『分かってはいるのです。納得がいかないだけで』


 アヤメが不貞腐れたように乃亜の肩に乗って深くため息をついていた。


「アヤメが課金放棄してくれたけど[有償ガチャ]が3000円で1回しか回せないから、残りの2000円は来月に回すしかないかな」

『やっぱり納得いかないのです』


 つい先日、アヤメの分の毎月2000円の課金を3カ月放棄する代わりにクロとシロの救出手伝ったんだからいいじゃん。

 まだクロは救えてないけど、明日そのためにイギリスに行くようなものだし別に問題ないよね。


「なんか便利なモノが当たるといいんだけどな」

「ソウタの言動はともかく、実際使い捨てだった〝戦乙女の羽〟がかなり強力だったし、[有償ガチャ]は回しておくべきだと思うよ」

「だよね!」


 ソフィの賛同まで得られている僕に怖いものは無い。

 まあ止められても回すんだけどね!


「……役に立たないものしか出なくても回しそう」

「否定はしない」


 ゴミの山の中に当たりが紛れているのがガチャなのだから、回さなくてはその当たりが手に入らないじゃないか。


「まあ[有償ガチャ]はそんなハズレは今までなかったけど」


 そんなわけでポチッと押すとそこに描かれているガチャガチャからカプセルが飛び出してきた。

 再びそれをタップすると中から出てきたモノが画面に表示される。


 〖[衣装ガチャ]のコイン100枚〗


「神回確定!?」

「いや、ガチャ引いたらまたガチャのコイン手に入っただけじゃない」


 分かってないな冬乃は。

 [衣装ガチャ]のコインは僕の派生スキルである[カジノ]でのみ手に入り、[カジノ]のメダル1000枚でようやく[衣装ガチャ]のコイン1枚と交換できるという鬼畜レート。

 そんな[衣装ガチャ]のコインが100枚も手に入ったというのだから、もう神回と言うほかないじゃないか。


「よし。こうなったら今まで貯めに貯めた[カジノ]のメダルを全てこれに交換して一気に回してやる!」


 ふっふっふ。今まで[カジノ]のメダルを咲夜や彰人の協力を経て地道に溜め続けていたけど、ようやくそれが日の目に当たる時は来たようだね。

 1万6333枚のメダルを交換するんだ!


 ……はい、少ないですね。

 ぶっちゃけちょいちょい我慢しきれずに[衣装ガチャ]のコインに変えて回してましたが何か?


「……本人のスキルだから別にいいと思う」


 ありがとうオルガ。

 その一言で僕はもう止まれなくなったよ。


「……責任転嫁良くない。そのメダルもボクらが管理したほうがいい?」

「ごめんなさい。でもどうしても我慢できないんです生きがいなんです許してください」

「必死過ぎるわよ」


 必死にもなるさ冬乃。

 だって課金出来なくてまともにガチャが回せないんだもの……!


「蒼汰君。使うのはいいけど少しはメダルを残さないと増やせれない、よ?」

「分かってる。だから使うのは1万5000枚までさ」

「1000枚程度しか残す気がないんですね……」


 乃亜に呆れた目で見られながら僕は早速メダルをコインに交換していく。


「よし、これで115回ガチャれるぞ!」

「すごいイキイキしていて見てて面白いし可愛いね」

「ソフィ先輩の気持ちは分かります。呆れはしますけど」


 みんなの目なんか気にせずに僕はガチャる。


 100連以上ガチャできるのいつぶりだろうか?

 あまりにも久々な気がして泣けてくるなぁ~。


 そんな事を思いながら〖10連ガチャ〗の結果を見ると、1つだけレア度が高いのか色違いのカプセルが出てきていた。


「10連回せば確実にR以上が最低1つ手に入るだろうとは思っていたけど、やっぱりそうだったか」


 いままで少しずつ回していたのがもったいなかったかもしれないけど、我慢とかムリ……。

 とりあえず不可能なことは置いておくとして、まずはカプセルの中身を見よう。

 何が入っているかな?


 N:サンタ服の欠片

 N:赤ずきんの欠片

 N:ポリスの欠片

 N:ヴァンパイア衣装の欠片

 N:学生服の欠片

 N:メイド服の欠片

 N:パイロットスーツの欠片

 N:魔法少女の欠片

 N:園児服の欠片

 R:ミリタリー風ゴスロリ衣装の欠片×10


「色んな意味で異彩を放っていますね」

「園児服だけは出てきても着せるんじゃないわよ!」


 冬乃が断固として拒否した園児服は欠片が1つしか手に入っていないので今のところそんな心配はいらない。今のところは。


「……なんで繰り返した?」

「重要なことなんだよオルガ」


 というかそんな事より、このガチャの内容完全に最低保証じゃないか。泣ける。

 確か衣装の欠片は100枚揃わないとその衣装が手に入らないはずなので、115回回すチャンスがあってもこのままじゃ1つも衣装が手に入らない可能性は高い。


 せめて1つくらいは新しい衣装が欲しい!


 別にみんなに着せたいわけではなく、ガチャをする者の使命というか成果が出るまで回したくなる衝動に駆られるだけなんだけど。

 今持ってる衣装だけでも今まで十分ではあっても、それはそれである。


 新しいガチャが出たら欲しくなるのは当然だよね!

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