12章
プロローグ
≪蒼汰SIDE≫
連れ去られたアヤメの父であるクロを助けるため、僕らは〔ドラゴンのダンジョン〕があるイギリス、イングランドのグラストンベリーに来ていた。
……僕が【白虎】に〔
「まさか【魔王】が与えた猶予が3カ月しかないのに、許可が出るのにこんなにも時間がかかるとは思わなかった……」
もう12月で【魔王】の宣誓からすでに一月ほど経ってしまっている。
残り2カ月以内に【魔王】を倒さないといけないというのに悠長すぎやしないだろうか?
「どうも“嫉妬”の魔女が出入りした際の影響を確認するのに時間がかかったという話で、その影響を確認するまでうかつに他国の戦力を消耗させるわけにはいかないって言っていましたけど本当でしょうか?」
乃亜が訝しげにそう言うと、冬乃が額にしわを寄せて納得いかないかのような表情になる。
「矢沢さんは真っ先に呼ばれたのは蘇生手段を持つのだから当然なんでしょうけど、どこか釈然としないわ」
「【
咲夜の言う通り、今なら“嫉妬”の魔女と瀕死の【白虎】がセットになってて大量に【典正装備】を手に入れるチャンスだからね。
「自国の利益を優先する気持ちは分からなくもないね。
ただ利益よりも他の国の冒険者を犠牲にしないよう動いていたのもあると思うよ。
日本は
ソフィの言うことがきっと正解なんだろう。
自分の国の冒険者だけならともかく、海外の優秀な冒険者を呼び寄せて死なせてしまったらその国から非難されてしまうのは明白だ。
「……でも結局呼ぶのならあまり意味が無い。しかもこっちから行きたいって言ってるのに許可しないのはどうなの?」
「日本で2体の【四天王】と同時に相対して1体倒した上に、もう1体は瀕死にまで追い込んだからだろうな。自分達だけでも倒せると考えてしまったんだろう」
念のために矢沢さんを動員してるのはともかく、2週間経っても解決してないからその考えは間違いだったと言わざるを得ないけど。
それにしても矢沢さん酷使されすぎでは?
こっちに来てばかりでまだ会ってないけど、あの恰好でスキルを使用し続けるから精神的にボロボロになってそうなんだよね。
同じ生徒会のメンバーであるおねぇの和泉さん達が一緒に来てるだろうから、メンタルケアはしているだろうけど、ちょっと心配ではある。
「それでもあのダンジョンの
「それを言われてしまうと何も言えないな……」
冬乃にそう言われると、オリヴィアさんは少しばつの悪そうな顔になった。
イギリスが母国のオリヴィアさんにとってはまるで自分が悪さをしたかのような罪悪感を感じてしまっているんだろう。
矢沢さん達のことはともかく、“嫉妬”の魔女のいる〔ドラゴンのダンジョン〕では異常事態が起きていた。
その異常事態のせいで日本、というか世界各地の金の紋章持ちのほとんどに対し招集する意味をなくしてしまっており、僕たちを呼ぶのも意味があるのか分からないらしい。
少なくとも日本で僕と同じ金の紋章を持つ風間亮さんは絶対にダンジョンに
「それにしても僕ら結界に阻まれたりしないかな?」
「それは何とも言えないね。でも話を聞いた限りでは期待薄そうだけど」
ソフィが肩をすくめながらここまで来たけど徒労に終わるんじゃないのかと言外に言っていた。
「でもダメかもしれなくても来ないわけにはいきませんよ。アヤメちゃんのお父さんの命がかかっていると言っても過言ではないのですから」
そのアヤメがこの場にいないのは、未だに父親を連れ去られたショックでスマホの中で膝を抱えているからである。
時折出て来るけどその時もテンションは非常に低い。
落ち込んでてもしょうがなんだし、父親の命を救うために元気になって欲しいところだ。
「……魂だけの存在でも生きてるって言っていいの?」
「そこは意見が分かれるところ、かな?」
咲夜が首を傾げていてどっちなんだろうって悩んでいるけど、一応生きてる判定でいいんじゃないかなオルガさん。
「……意思疎通ができるのなら生きてる判定?」
「結構ガバガバな判定かもしれない」
でも魔女達だって魂だけになっているという点では似たようなものだし、あんな生き生きしている存在達を死んでいるとは思えないね。
「どっちにしろ助けるために来たんだから、そんな些細な事どうでもいいじゃない。
それよりも問題はダンジョンに入れるかよね」
「そうだな。私はともかく、せっかく来てくれた鹿島先輩達はもしかしたら結界に阻まれる可能性がある」
オリヴィアさんの言う通りだ。
一応僕らの持つスキル、[ダンジョン操作権限]で誰でも入れるようになるかもしれないと呼ばれたわけだけど、どうなることやら。
「
金の紋章持ちはほとんどが長い年月活躍してきた冒険者だ。
大金を稼いでいて甲斐性があるので、よっぽどなことが無い限りほとんどが結婚しているのである。
つまり今回はそもそもダンジョンに入る事すらできず、【
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