エピローグ2
「先輩、大丈夫ですか?」
僕が目を覚ますと、よく知った顔が僕を覗き込んでいた。乃亜だった。
「ようやく目を覚ましたわね」
「怪我はしてないけどずっと寝てた、ね」
「……以前〔
「あの時は随分と焦ったけど、さすがに2度目だから大丈夫たとは思ってたよ」
「無事で何よりだ鹿島先輩」
乃亜以外のみんなもいたようで、目を覚ました僕を覗き込むように続々と顔を見せてきた。
「ん……、ここは病院?」
「はい。先輩が〔
首を動かして周囲を見渡すと病院特有の白さと清潔感、そしてつい数か月前の【ミノタウロス】の後と似た状況から病院だろうと思ったけど、やっぱりその通りだったか。
「けど蒼汰、本当に大丈夫なの? 丸一日寝ていたけど」
「大丈夫だよ冬乃。オルガも言ってたけど、前に〔
「それは普通の魔物と相対していた時のことじゃない。さすがに【
まあそりゃそうか。
僕は体に問題ないことをアピールするためにも体を起こして改めて周囲を見ると、部屋の隅にいるものに目がいってしまった。
「蒼汰君が無事でよかった。凄く心配した、よ」
「ありがと咲夜。ところで1つ聞いてもいいかな?」
「なに?」
「あそこにいるアヤメは一体どうしたの?」
部屋の隅で和服を着た人形サイズの女の子が壁の方を向いて体育座りで座っており、見るからに落ち込んでいるのだから気にしないというのは無理がある。
というか病院でそれやられると、座敷童みたいな見た目も相まって普通に怖いんだけど。
これ、夜に起きてたらうっかり悲鳴をあげてたんじゃないだろうか?
『パパ……』
しかしポツリと呟くその声は寂しげであり、とてもじゃないけど不気味だから止めてとか茶化して言えるような雰囲気ではない。
「あ~実はソウタが【白虎】から出てきて倒れた後、【白虎】も同様に意識を失ったんだけど、その時に“嫉妬”の魔女と名乗る人物が現れて【白虎】を連れ去ってしまったんだよ」
「えっ!?」
ソフィがとんでもない事を言い出したぞ。
「“嫉妬”の魔女が出てきて大丈夫だったの!?」
「ああ。一方的に話した後、【白虎】を連れて西に飛んでいってしまったからな。【四天王】だとも言っていたから、もしあの時暴れられたら間違いなく私達は全滅していただろう」
オリヴィアが腕を組みながら真剣な表情でそう言っていた。
まあみんなが怪我もなくここにいる時点で大丈夫だったんだろうけど、“嫉妬”の魔女というインパクトに思わず心配してしまった。
しかしよくよく考えれば【魔王】が宣戦布告した際に3カ月の猶予をくれると言っていたから、【四天王】である“嫉妬”の魔女は僕らに攻撃が出来なかったのかもしれない。
今回の騒動は【白虎】と【青龍】が異界の住人を狙っていたから、その猶予とは関係なかった訳だし。
みんなが無事だったのはいいけどそうなると問題は【白虎】、というよりクロか。
アヤメの父であるクロが連れ去られてしまうだなんて思いもよらなかった。
しかも僕のスキルのスマホの中にいたクロが【白虎】になったクライヴに宿ったために、分かれていたのが1つに戻ったわけだから、スマホの中からいなくなってしまっているはず。
そう思いスキルを発動させてスマホを覗くと、そこにはシンディがくつろいだ状態で足を川に浸して優雅に座っていた。
『ん? なんじゃ主様。何か用事かの?』
「いや、用事は無いんだけど、なんでそんなに落ち着いているの?」
仮にも自分の夫が連れ去られたんですよ?
アヤメとの温度差が酷すぎる。
『そう言われてもの~。クロが酷い目に遭う事はないじゃろうし、慌てても出来ることは無いのだから今はいざという時のために休むに限るの』
「それは確かに」
『ただ娘にもそう言ったのじゃが聞いてくれなくての。仕方が無いから娘の好きなようにさせようとそちらで主様の目覚めを待っておったはずなのじゃが、近くに居らんか?』
「いるけどずっと座った状態で微動だにしないんだけど」
『そうか。その様子では主様が起きたことにも気づいておらんな。主様には申し訳ないのじゃが、声をかけてやってくれんかの?』
「あ、うん。それはいいけど」
『うむ。では任せたぞ』
……これではどっちが主か分かったもんじゃないな。
いや、まあ一応向こうは僕を主と呼んでくれるようだけどさ。
それはさておきアヤメだ。
僕はベッドから起き上がって、部屋の隅でどんよりとしているアヤメに近づいてその小さな背中を叩く。
「アヤメ」
『あ、ご主人さま! パパが、パパが~~~』
僕に気付いたアヤメがぴょんっと僕の方に泣きながら抱き着いてきた。
『ご主人さま~。パパを助けて欲しいのです~!』
「落ち着いてアヤメ。シロが言う様にクロは一応【四天王】だから酷い目に遭う様な事はないはずだから。
まずはどこに行ったのか情報を集めないと助けようがないんだし、泣いてるだけじゃなにも変わらないよ」
『ううっ~』
泣いているアヤメを慰めるようにその小さな頭を撫でつける。
「どこに行ったかは分かっているぞ」
「え、そうなのオリヴィアさん」
アヤメを慰めていたら、まさかの情報がとんできた。
もう居場所が分かっているだなんて運がいいのか、“嫉妬”の魔女が隠す気がないのか。
「ああ。どうやら“嫉妬”の魔女は【白虎】と共に〔ドラゴンのダンジョン〕の中に入っていったと連絡があった」
よりにもよってSランクダンジョン、しかもその中でも最難関と言われているダンジョンに移動したってマジ?
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・あとがき
はい。じゃあまた次章の作成のため、今度の更新は1週間後になります。
蒼汰)「……え、そんだけ?」
作者)『なにが?』
蒼汰)「だっていつもなら本編の事だったり近況だったり言うじゃないですか」
作者)『そんなもん気分だよ』
蒼汰)「適当過ぎない?」
作者)『あとがきなんだから好きにやればいいのさ。今も脳死で思いついた言葉を適当にタイピングしてるし』
蒼汰)「メタいこと言うの止めません?」
作者)『あとがきにそんな事求められてもなぁ~。ああ、メタいと言えば――』
蒼汰)「なんか嫌な予感」
作者)『ぶっちゃけお前が他の【四天王】に意欲的に挑むことなんて絶対にしないから、クロを連れ去ることにした、って言ってもいいやつ?』
蒼汰)「言うなよ!!? てか、え、それで次は〔ドラゴンのダンジョン〕とか、作者僕らを殺しに来てない?」
作者)『リア充だしいいじゃん』
蒼汰)「せめてまともな理由であって欲しかった!」
作者)『じゃあ建て前で、難関ダンジョンで魔女と対峙する方が面白いかなって』
蒼汰)「本音は?」
作者)『爆発しろ』
蒼汰)「シンプルな殺意」
作者)『まあ冗談はさておき、〔ドラゴンのダンジョン〕に魔女がいるのは既定路線だから、どの道避けられないし。クロが連れ去られなくても政府経由でまた海外だったよ?』
蒼汰)「避けられない運命に泣きたくなりますね」
作者)『その運命、海外行った後の未来が全くの白紙だからどうなるか分かんないんだけどね(笑)』
蒼汰)「笑ってる場合か!?」
作者)『精々面白おかしい未来にでもしてやるかな』
蒼汰)「平凡でもいいから無難な未来は創れないんですか?」
作者)『そんなの誰が見たいん?』
蒼汰)「読者に寄り添わずにもっと自分が生み出したキャラに寄り添ってよ」
作者)『作家という生き物は己の創ったキャラクターを好きに操る権利を持っている者のことを言うのだよ』
蒼汰)「その言葉だけで次も大変だとわかるな畜生!!」
そんな訳で1週間後にはまた再開できるよう、白紙の未来を創るべくプロット考えますね~。
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