第4話 寝るな。寝たら死ぬぞ
「まずはSランクダンジョン【
白鷺三尉が深く頭を下げてお礼を言うと、早速と言わんばかりに【
「まずは本作戦の要であり、諸君らがもっとも気にしているであろう人物を紹介しよう。
矢沢君、前に来てくれるかね?」
「はい」
打ち合わせでもしていたのか、矢沢さんは白鷺三尉に呼ばれるとすぐに返事をして前に歩いて行った。
「へ~、あの子がそうなのね? 妹にしたいくらい可愛いわ」
「おっ、中々可愛い子じゃん。後で声かけてみるかな」
「モグモグ」
まだ食べ続けている人がいるのはさておき、矢沢さんが前へと歩いていく時に周囲の人達は口々に可愛いを連呼し、それを聞くたびにピクンッと矢沢さんが反応していたのが分かった。
おそらく顔も引きつっているだろうね。
矢沢さんが白鷺三尉の隣に立つと、早速紹介を始めた。
「彼が本作戦における蘇生要員だ」
「「「彼?」」」
「……自分は男です」
「「「はあ!?」」」
その気持ちは分かるよ。僕も初めて会った時は男だって分からなかったから。
むしろ何故乃亜達は分かったのかと言いたいくらいだ。
この部屋にいる他の女性も男だとは分からなかったみたいだし。
「彼のスキル、[アイドル・女装]は歌で仲間を支援するタイプのものだが、その歌を前もって聞いていた人物を生死問わずスキルの影響前の状態で召喚する能力がある。
その力でもって、諸君らが仮に死んだとしても蘇らせることができるのだ。
ただし、1度その力を使えば再使用に2日かかるので、使用した時点で作戦は一時中断となるだろう」
ホント女装というデメリットさえ無ければいいのにと思ってしまうスキルだよね。
「質問いいですか?」
「うむ、何かね?」
「それでは私達は彼を守りながらダンジョンに潜って【
先頭の席で座っていたOL風の女性が質問しているけど、その疑問はもっともだ。
確かに蘇生要員が真っ先に殺されたら、復活も何もないからね。
「いや、彼はダンジョンの入口から少し入った場所で待機だ。
彼の歌による支援は無くなるが、確実に諸君らを蘇生できるようにするためにも彼を危険な場所にまで連れて行くことはできない。
危険な場所に向かう諸君らにはその事に関して不満に思う者もいるかもしれないが――」
いや、それはないでしょ。
むしろ間違いなく蘇生してもらえる方がいいのだから、是非とも安全な場所で待機していて欲しい。
「彼はスキル発動後、不眠で待機することになるのだからその辛さは下手すれば諸君らよりもキツイだろう」
「「「えっ?」」」
「あははっ……」
苦笑気味に笑っているけれど、この作戦って1日2日で終わるようなものじゃないはずなんだけど……。
前に聞いた話では、【
つまり矢沢さんは3日間寝てはいけない事になるんだけど、どうして寝たらいけないのだろうか?
「彼のスキルは彼自身が寝たり気を失ってしまえば解けてしまうものなので、寝るわけにはいかないのだ」
【
そう考えるとあの件が1日で終わって本当に良かったよ。
「彼に関しては我々自衛隊が命を賭けてでも守り抜くので安心して欲しい。ダンジョンの入口近くとはいえ武将が現れないとも限らないが、その場合は我々が何としてでも倒そう。
君達にはどちらかというと彼よりも、彼らを守っていただきたい」
白鷺三尉が僕らの方を指し示してきたので、この場にいた他の冒険者が一斉にこちらを見てきた。
「随分若そうな子達ね。まだ学生じゃないのかしら?」
「おいおい、何で俺達が子守りをして危ねえとこに行かないといけないんだよ」
「モグモグ」
ご飯食べてる人マイペースだな!?
「君達、前に来てくれるかな?」
「あ、はい」
呼ばれてしまったので僕らは矢沢さん同様、前の方へと向かった。
「彼らは唯一ダンジョン内に安全地帯を生成することができるスキルの持ち主だ。
彼らの力を使えば安全にダンジョン内で休息をとることが可能になる」
「ちょっといいか?」
ロックバンドでもやってそうな見た目の金髪の男の人が手を挙げていた。
「何かね?」
「そんな話この仕事を受ける前には聞かなかったんだがどういう事だ? あと、その力について詳しく知りてえ」
「まず彼らの事が話になかった件についてだが、彼らがそのスキルを手に入れたのはつい最近のことであり、その事を知った我々が急遽彼らに今回の作戦参加を打診することにしたのだ。
受けてもらえるか分からない状態で、諸君らに不確定な情報を伝えることはできなかった」
「なるほどな」
「そして彼らのスキルについてだが、1週間魔物の侵入を防ぐ結界のようなものを創ることができる。
ただし結界の中から攻撃を仕掛ければその結界は消滅してしまうし、その結界を創るのにもそれなりの数の魔物を倒す必要があるらしい。
だから実質1箇所、多くても2箇所の拠点を創るのに彼らは同行してもらう事になるだろう」
今のところ1つ安全地帯を創る程度のリソースはあるので、道中でどれだけの数の魔物を倒せるかによるかな。
他の人が近くで魔物を倒した場合はどうなるか分からないけれど、もしもそれもありなら2箇所は創れると思う。
「その結界は【
「残念ながらそれは分からない。ただ魔物は確実に防げるようなので、魔物の心配がないだけでも休息はしやすいはずだ」
「ま、確かにな」
金髪の男の人が納得し、周囲の人も納得した雰囲気が出た時だった。
「そして最後に紹介したい人物がもう1人」
白鷺三尉が何故かこちらをチラリと見た後、そう言って扉の方へと視線を向けた。
「入りたまえ」
「失礼します」
ガチャリと音を立てて入ってきた人物は
2人は警察官の恰好をしていたけれど、それよりも次に入ってきた2人の警察官に挟まれた人物を見て愕然としてしまうのと同時に、僕ら4人の警戒度が一気に急上昇し身構えていた。
「彼女は片瀬美琴。とある事件を起こした犯罪者だ」
警戒している僕らをよそに、白鷺三尉は彼女を淡々と紹介していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます