エピローグ2
≪蒼汰SIDE≫
長かった。こうして自分の住むマンションの部屋に戻って来るまで本当に長かった。
中国とロシアのダンジョンで同時に起きた
というか、比較的安全な役割をこなすだけだったはずなのに、なんで【
お陰で【典正装備】が2つも手に入ったとはいえ、とてもじゃないけどラッキーだったとか言えないよ。
五体満足で乃亜達も無事だったことだけはラッキーだと言えるけど。
でも報酬に1人30億もらったとはいえ、命をチップにしていた事を考えると凄く割に合わなかったんじゃないかと思う。
もう命にかかわりそうな依頼は受けたくないなぁ。
「さて、ガチャるか」
『考えてたことからいきなり思考がとんだ気がするのです』
「オルガじゃないんだから僕の心を読まないでよアヤメ」
アヤメがジト目で僕を見てくるからそれに対しツッコミを入れたけど、実は大して気にしていない。
なにせ今日は11月1日。
つまり、月一の課金解放日だ。
〔
この課金ガチャで念のため更なる強化を図るのは今後のためにも必須だろう。
もうああいう依頼は極力避けるつもりとはいえ、何が起こるか分からない以上ガチャは回しておかねば。
『途中からガチャを回す事に思考に重きを置いてなかったです?』
気のせいでは?
「さて、ではガチャを回すかな」
『その前に先に2000円分はこっちなのですよ』
さすがアヤメ。釘を刺してくるのは忘れない辺り、僕がどう動くかよく分かっている。
もちろん自分のために使うつもりでしたが何か?
『では今回はこれの購入をお願いするのです』
・個室×3…………500円×3
・椅子(1セット4個)…………100円
・机…………100円
・タンス…………100円
・冷蔵庫…………200円
今回もきっちり2000円持っていったか。
少しでも残せば僕に使われると思っているんだろうか? 別に間違っていないけど。
「ほい」
『ありがとうなのですご主人さま! 早速見てくるのですよ』
僕がアヤメの言った通りの物を購入すると、アヤメはソワソワした様子で僕のスキルのスマホの中に急いで戻っていってしまった。
新しい家具が気になる気持ちはよく分かるよ。
でもそんな事より個室を得たってことは、さらにそこに物を置くために課金を要求することになるんだよね?
家の中だけでなく外も調えるだろう事を考えると、一体課金しなくてもいいと言い出すのはいつになるんだろうか……。
「まあいいや。じゃあ早速[有償ガチャ]を回すとするかな」
今度はどんなコスプレ装備が手に入るんだろうか?
そう思いながら1回3000円の有償ガチャを僕は回す。そうしてそこから出てきたアイテムは――
「戦乙女の羽?」
何このアイテム?
今までコスプレだったのにどうしてこんなものが?
そう思いよくよくヘルプを確認したら、[有償ガチャ]のラインナップはコスプレだけでなく[カジノ]の景品みたいなのも出て来るんだったことを思い出した。
「毎回コスプレ衣装ばかりだったから、それしか出ないと思い込んでたな。
いや、それはいいんだけどこれ一体何に使うんだろ?」
ハッキリ言って使い道が分からないアイテムで、強化アイテムとしか説明に出てこないんだ。
コスプレ衣装でも強化できるんだろうか?
そう思ってスキルのスマホを確認しても、今まで入手してきたコスプレ衣装をそのアイテムで強化出来そうになかった。
う~ん分からん。
自分のスキルでありながら、未だに謎な部分が多いスキルだ。
「まあ分からない事をいつまでも考えても仕方ないか。さて――」
――ピーンポーン
「寝るか」
インターホン? 知らない子ですね。
――ピーンポーンピーンポーンピーンポーン
全力の居留守にもかかわらず連打されるインターホン。
何故だ。普通ならばいないと判断するはずでは?
『あっ、ご主人さまが学校に行きたくない様子だったので連絡しておいたのです』
「なんて余計な事を!?」
ひょっこりとスマホから出てきたアヤメがそれだけ言うと、またスマホの中に戻っていく。
――ピーンポーンピーンポーンピーンポーン
はぁ。バレている以上仕方ないか。
――ガチャッ
「おはようございます先輩。学校に行きましょう!」
玄関を開けると、思った通りそこには満面の笑みを浮かべた乃亜と冬乃達がいた。
「……………やだ」
「何そんなしかめっ面して登校拒否してるのよ蒼汰。この地域はギリギリ【Sくん】の被害には遭わなかったんだから別に外出ても問題ないでしょ?」
「いざとなったら咲夜達が守る」
「……ふんす」
咲夜とオルガが表情筋をあまり動かさずに、それぞれ気合を入れるポーズを取っていて僕を守ろうとする気満々だ。
確かにありがたいけど、行きたくないものは行きたくないのだ。
なにせ
つまり【Sくん】からの被害を恐れ、自らスマホを壊してしまった人だっているはず。
そんな人達がいるというのにどうして平然と外に出れるというのか。
「先輩は心配性ですね。【Sくん】は確かに先輩が元になって生まれましたけど、見た目はデフォルメされているので、パッと見では先輩が大元だとは気が付きませんよ」
「でも学校では僕の事だってバレてないかな? 【Sくん】ガチャガチャ言ってたし」
僕が心配げにそう言うと、咲夜と乃亜が同時に首を横に振ってきた。
「大丈夫だ、よ。蒼汰君の事は3年の方だと、ハーレム作った毎朝挨拶してる男の子って認識だから」
「1年の方でもそうですね」
その認識もそれはそれでどうなんだろ。
今更ハーレムは否定できないけど、見ず知らずの人にそういう認識なのがなんかもやる。
「2年の方でもほとんどそういう認識じゃないかしら。蒼汰を知っている人間だと分からないけど」
「問題はクラスメイトか……」
あいつら、人を事あるごとに私刑にしてくるからなぁ。
でも大樹達ぐらいしかガチャと僕を結び付けたりしないだろうから、自分が思うほど心配いらないのかな?
「……行く気になった」
オルガに心を読まれて、行っても大丈夫かな~とか思い始めたところを察せられてしまったようだ。
「そうなんですね。では気が変わらない内に行きましょう」
「はい、カバン持って来たわよ」
「着替えはここにあった」
「着替えくらい自分でやるから全員でにじり寄ってこないでくれませんかね!」
ここでごねると面倒くさい事になるのは火を見るよりも明らかなので、僕自身その気になってる内に学校へと行く準備をしよう。
◆
「言い残すことがあっても何も言わずに黙って大人しく刑を受けるがいい」
「どうしてだチクショウ」
外を歩いても僕に対して何の反応もされなかったし、学校に着いても特に言われなかったのに、どうして教室では私刑なんだ?!
しかもご丁寧に登校してすぐじゃなくて、乃亜達が僕と離れている授業が終わったすぐ後の放課後に捕まえてくるだなんて。
授業が終わった後、クラスメイト男子達がいっせいに僕を囲んできて、大樹が代表して僕に黙って刑を受けろと告げてきたんだ。
やっぱり【Sくん】が僕のせいだとバレているのか……。
「まさかここにいるのでスマホでも壊した人間でもいるの?」
「安心しろ。そっちはオレと彰人くらいにしかバレちゃいねえ」
僕の考えを読み取った大樹が小声で僕に顔を近づけて教えてくれたけど、それならこれは一体何なんだ?
「鹿島。ソフィアちゃん達のご両親に娘さんをくださいって挨拶してきたんだろ!」
「すでに3人嫁にしてるくせに、さらに一気に3人も増やすとかどこの王様だ!」
「お前は出会う美少女全てを嫁にしないと気が済まないのか!」
……ああ~はいはい。
僕は周囲を取り囲むクラスメイト男子達からの発言で全てを察した。
なんで結婚の挨拶に行ったと思われてんの?!
「さて、蒼汰も自分の置かれた立場を察したところで、刑を執行しようか」
「異議あり! 普通に海外で【
「そんでついでに嫁も増やしたと」
「嫁は増やした覚えはない!」
そもそもまだお嫁さんをもらってないんだけど!
「そこまでです!」
「蒼汰を解放してもらおうじゃないの」
「油断も隙も無い、ね」
「……蒼汰はボク達の」
僕を迎えに来たであろう乃亜達が教室に入ってきて、大樹達が僕に手を出さないように止めてくれようとしていた。
「来たな、蒼汰の嫁達!
いつもならここでボコボコにされるところだが今回ばかりはオレ達も本気だ。少しくらい蒼汰には痛い目を見てもらわないと気が済まねえ!
………やっぱり増えてんじゃねえか!?」
大樹がオルガを指さして僕へと視線を向けてくるけど、僕は首を横に向けて視線を逸らす。
だから、まだ、嫁じゃないし……。
「……別に構わない。嫁じゃなくても傍に居させてくれるなら、体だけの関係も可」
「「「殺してぇ……!」」」
血涙を今にも流しそうなクラスメイト男子達。
大樹も一緒に目が充血しており、本当に血の涙を流しそうだった。
オルガ、火に油を注ぐような事言わないでくれないかな……。
「……でも、これがボクの本音。ロシアと中国で同時に起きた
「いつの間に許可まで?!」
あとロシアはまた似たようなことがあったらオルガ経由で依頼してくる気か!?
「……受け入れてくれるなら、ボクはこの身体をいつだって差し出しても構わない」
「「「よし殺そう」」」
「爽やかな笑みで、人を殺せそうな目を向けながら言わないでください」
そうしていつも通り僕を襲おうとした大樹達が乃亜達にボコボコにされる定番の光景がくりひろげられることとなった。
ああ、日常に帰ってきたんだなぁ。
こんな日常は嫌だ……。
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・あとがき
次章から更新が3日に1回のペースになる予定です。
理由は【X】でもつぶやきました通り、そろそろ新しい作品を書いてみたいなと思ったからですね。(もうこの作品を書き始めて2年半、文字数100万字超えてますし)
あとこの作品、誤字脱字の見直しと句読点など読みやすいように1から少し書き直そうかと思っているからです。(話の流れは一切変わりませんのでご安心を)
やはり作者としましても書籍化が夢ですから、色々な作品を書いていった方がいいと思いますしね。
ですがこの作品には多大な愛着がありますので、基本こちらをメインに書いていく予定です。
魔女とか蒼汰の今後とかちゃんと最後まで書きたいですから。
作者)『まあ最悪〝僕の課金人生はここまでだ〟と閉めるパターンも存在するわけだが』
蒼汰)「せめて〝これからだ〟にしてくれませんかね!?」
作者)『打ち切るならもう課金できるルートが存在しなくなるよね?』
蒼汰)「未来は無限大ってよく言うでしょ!」
作者)『月5000円で満足してろよ』
蒼汰)「それで満足できるなら60億近い資産手に入った段階でダンジョンに行こうとしないんですよ」
作者)『学生なのに、そんな命を切り売りして貯めたお金を自慢するだなんて……』
蒼汰)「好きで切り売りした訳じゃないんですけど!? ほぼ毎回【
作者)『魔女に関わると必然的にセットだから仕方ないよね』
蒼汰)「仕方ないで済む問題じゃないんですよ……」
作者)『でも次章で……』
蒼汰)「不安になること言わないでくれません? どうせプロットもろくに出来ていないのに」
作者)『何やるかだけは決まってる。じゃなきゃエピローグ1であんな事書かないし』
蒼汰)「一体何があったんだ……」
作者)『エピローグ1は裏話だからお前が知らないのも無理ないが実は――』
蒼汰)「ゴクリッ」
作者)『作者、ネタバレしない主義なんだ』
蒼汰)「思わせぶりな事言っておいてそれはないでしょ!?」
作者)『冗談はさておき、ある程度の方針は決まっている。問題は――』
蒼汰)「問題は?」
作者)『すんっげえ話が長くなりそうってこと』
蒼汰)「2人の魔女の話にだいたい半年くらい制作に時間かかってるんですけど」
作者)『これから3日1回にするっていうのに、どれだけかかることやら』
蒼汰)「他人事みたいに言わないでくださいよ」
作者)『まあボチボチ頑張るよ。お前が課金できる額が増えるかはともかく』
蒼汰)「いっそ打ち切りでもいいですから課金額増やしてくれませんかね!?」
打ち切る気はありません。
ちゃんと最後まで書きますよ。(今のところは)
とりあえずいつも通り、1週間後に更新再開する予定です。
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