9章
プロローグ
≪大樹SIDE≫
文化祭が終わり、飾りなどもとっくの昔に取り払われ完全に日常に戻った――はずだったが、オレの周囲はいつもの日常とは言い難かった。
「あいつら~……!」
オレは自分のスマホを見ながらイラっとしちまうのは仕方のないことだと思う。
なんせラ〇ンのメッセージに蒼汰からは『ちょっと世界救ってきます』ときて、彰人は『要人警護してくるよ』なんて連絡が届いていたんだから。
「蒼汰はまあいい。世界救ってくるとかふざけてるとしか言えねえが、海外が大変なことになってるし、それはいいさ。
だけど彰人。てめえはダメだ。
もう明らかに嘘だろ! お前が要人警護とか全く想像できないんだが! 自宅は要人じゃねえぞ!?」
というか、あいつら学校休み過ぎなんだが大丈夫なのか?
学校に行くことだけが人生の全てじゃないし、蒼汰に至っては高校卒業しなくても余裕で暮らせるから問題ないと言えば問題ないんだが、進級できるのか不安になるくらい休んでないか?
いや彰人は連続で休んでいるからそう感じるだけでそこまで多いわけじゃねえか。
そんで蒼汰は
というか、そうでないと困る。さすがに一緒に卒業出来ねえのは嫌だぞ。
「彰人はともかく、蒼汰のやつ大丈夫なのか?」
「「「大丈夫なわけないだろ」」」
「あ? どういう事だ?」
オレの独り言に反応したクラスの男子連中が一斉に口をそろえてそう言ってきたが、蒼汰が大丈夫じゃないって何を知っているんだ?
「決まってるだろ! あいつソフィアちゃんだけじゃなく、転校してきた他の外国人美少女と一緒に海外に行ったんだぞ!」
「そしてあいつは文化祭、ハーレムメンバー3家族の親にまとめて娘さんを僕に下さいと挨拶をした猛者」
「そこから導き出される答えは――」
「「「ソフィアちゃん達の両親に挨拶にいったんだよ!!」」」
「な、なん、だと……!」
「だからあいつが大丈夫なわけないんだ」
「ああ、だって今度会ったら俺達が袋叩きにするんだからな」
「なるほどな」
まあ冗談はさておき、こんな馬鹿げた会話も蒼汰がいなければ成り立たないんだ。
だから今回も無事に戻ってきて欲しいもんだ。
でねえとてめえをぶち殺せれねえからな……!!
≪彰人SIDE≫
「本当は篭絡した人達から情報を得たり、その人達に陰から蒼汰達を守ってもらうつもりだったけど、こうなった以上は直接僕自身が行くしかないよね」
「自分がかなり大胆な行動している自覚あるさね? ハッキリ言って謎の異界の住人の正体を上の人間は見当がついてきてるはずさ」
「まあそうだろうね」
文化祭辺りや今回のことでも同じタイミングで桜と同じ期間学校を休んでいる人間がいたら怪しまないはずがないのだから。
文化祭の期間は桜に協力したけど、僕自身が関わってる事は上には伝えないでもらっている。
けれどあの時はボクの能力をフルに使ったせいで女性の刺客は一斉に鳴りを潜めた。
全ての外国からきた女性に対してそんな事をすれば、日本側の正体不明の誰かがそこにいたという証明になる。
その場に桜がいて唯一ボクと接点があるのだから疑われるのは間違いない。
そこにきて今回の事でダメ押しだね。
「でも構わないよ。面白いか面白くないか、それがボクの全てなんだから」
国の連中に関わるのはつまらなそうだと思ったから桜に秘密にしてもらっただけだし、正体を知られるよりも蒼汰達を失う方がありえないのだから。
「相変わらず破滅的な思考してるさ。まあその考えのお陰で私も助けられているんだから文句はないけど。
それよりも中国とロシアで起きてる今回の
「十中八九そうだろうね。それにしてもあんな場所あったとは知らなかったな」
「当り前さ。ダンジョンが
「でもあそこ狙うよりはイギリス狙った方が良かったよね。なんせそこにいるのドラゴンだから、地上に魔素を広範囲に満たすのに適しているだろうし」
空を飛んで各地に移動できる上に、ドラゴンであれば倒された時の魔素の元となるものの散布量も多いはずだ。
「過激派が何を考えてるのかなんて分かるはずもないさね。それよりも私達は被害が少なくなるように動くだけだよ」
「国に雇われている魔術師が他国の事まで気にする必要あるの?」
「普通ならその国が処理するところなんだけど、今回ばかりは例外さ。異界の住人が関わっているのであれば捕らえて色々聞き出したいそうだよ」
「雇われるって大変だね~」
「彰人もその内人に使われる側になるさね」
「面白い人に使われる分には構わないよ」
「雇われる側でもいいと言っているのに、選り好みをするのさね」
「当然だよ。面白くなければ生きている意味がないからね」
そう。だからボクは面白い人間が死ぬことを許容できない。
だけどそれは安全な場所で閉じ込めて観察できればいいといことではない。
面白い人間がありのままに生きる姿を見るのが好きなのだから。
さて、蒼汰は今度はどんな面白い事に巻き込まれていくのかな?
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