エピローグ2

 

≪蒼汰SIDE≫


 文化祭が終わり数日経った僕らはいつも通りの日常に戻っていた。


 学校に行って勉強し、放課後にはダンジョンに行く。

 そんな文化祭前と同じ行動――ではあるけれど、2点だけ変化はあった。


 海外からの転校生であるソフィアさん達だけど、僕らが向こうの事情を知ったからか、転校してきたばかりの時のような執拗なアプローチは無くなり友人関係と言える程度のスキンシップしかしてこず、周囲を不用意に刺激することがなくなったので僕もクラスの男子達もニッコリである。


「いやーソフィアさん達もハーレム入りするんじゃないかと、刃を研いで待ち構えていたがそんな事なくてホッとしたぜ」

「ホントだよな。学校中の美少女を驚きの吸引力で集めてるんだとしたら、廃品回収を呼ばねえといけないところだったよ」

「このカンペ『彼は女癖が悪くていつか刺されると思っていました』も必要なかったな」


 酷くね? あと女癖が悪いというのだけは全力で否定させて。

 クラスの男子達でこれなら他のところではどう思われているのかが怖いところだけど、気にするだけ無駄か。


 ソフィアさん達との距離感がほどほどなところで収まったのはいいとして、もう1点、咲夜の家族達の関係が若干変わったんだ。


 お互い積極的に会話をするようになったらしく、今のところ家族仲も良好だと嬉しそうに咲夜が語っていた。

 前までであれば咲夜が家族に遠慮して僕らを家に呼ぶことなど無かったのだけど、咲夜の家族からは今回の事でお礼がしたいから是非とも来て欲しいと言われているので、その内行く機会があれば行くことになるだろう。


「あーあ。ボクも文化祭参加したかったな~」

「まだ言ってんのかよ彰人」

「だって1年前よりも面白そうな事してたんだよ。特に蒼汰が追いかけられたりしていたとか見たかったな~」

「それ文化祭の前だよ。あと僕はそれ楽しくなかったから」

「必死な顔で逃げてたのかと思うと、是非とも観賞したかった」


 彰人がわりと酷いことを言っているけれど、それについてあまり咎める気になれなかった。

 面白い事が好きな彰人が文化祭というイベントを逃したせいで、数日経っても凹んでいるのだから。


「結局文化祭までの間、何やってたんだよ?」

「それは秘密、というか言えないんだよ。強いて言えるとすればお仕事で守秘義務があるってだけ」


 それを言われてしまうとこれ以上の追及は出来そうにないね。

 それにしても守秘義務があるような仕事って、一体何をやっていたんだろうか?

 まあ聞いても答えられないなら聞くだけ無駄だし、これ以上は気にしても仕方がないか。


「そんな事よりも、蒼汰はまだダンジョンに潜ってるの?」

「それはそうだよ。一月やそこらじゃ中々レベルが上がらないし」


 Sランクダンジョンの【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】を討伐に行った時からまだ一カ月も経っていないし、文化祭の間はダンジョンに潜れていないのでそう簡単にはレベルが上がらないよ。


「お前が冒険者をやる1年くらい前からダンジョンに潜ってるオレのレベルを、半年足らずで追い抜いて行った奴が言っていいセリフじゃねえんだよな」

「それまだ言うの?」

「命がけだったことは分かっているが、それはそれとして悔しいものはある。

 このネタはあと1年はこすると思う」

「いい加減流してくれないかな?」


 逆の立場だったら僕も大樹みたいになりそうだから強くは言わないけど。


「このネタを引っ張るかどうかはともかく、今日は珍しく放課後なのにすぐにダンジョンには向かわねえんだな」

「金曜だからね。土日はダンジョンに行くから金曜の夜くらいは家族と一緒にいられる方がいいでしょ」

「前までは毎日ダンジョンに行ってたのにそれでいいのかい?」

「そりゃ早くレベル上げして、ガチャを思う存分出来るようになりたいけど、家族と関係修復中の咲夜を無理して連れ回したりはしないよ」

「それでも土日はダンジョン行くんだな」

「夕方には帰るようにすることで折り合いがついてるから」


 そう考えると、ダンジョンに潜る時間が減ってしまったのも文化祭前とは変化した1つになるのか。


 課金できるようになるまで時間がさらにかかることになってしまったと改めて思いながら、大樹達と会話をしながら途中まで一緒に帰宅する。


 文化祭の時の準備期間と同じように放課後ダンジョンに潜っていないから若干の違和感を感じるよ。


 そう思うほどダンジョンに毎日のように潜っていたんだと改めて思いながら、自分が借りているマンションの一室に到着したので、鍵を開けて部屋に入る。

 部屋には今までガチャのために売り払ってしまってなかったけど、ようやく買ったテレビをつけ、ニュースを流しながら早めに夕食の準備をすることにした。


 ――ピンポーン


「ん、誰だ?」


 夕飯の下ごしらえをして、干してあった洗濯物など畳んで片付けたりと家事をこなしていたら、こんな時間にならないはずのチャイムが鳴った事に首を傾げる。


 ――ピンポーン


 再度インターホンが慣らされたので、慌てて通話モニターのところへ行き通話ボタンを押す。

 咲夜の時もキチンと相手を確認すれば良かったんだけど面倒だったし。

 今はあの時と違い、大金も手に入れてるし身の回りには気を付けた方がいいと分かっているので、ちゃんと確認するけど。


「どちら様、って、オルガ?」

『……そう』


 玄関の外に立っていたのは珍しいことにオルガであり、どうやって僕の部屋にと思いもしたけど、オリヴィアさんが勧誘目的で日本に来てると言っていたし、僕が住んでる場所を知っているくらい今更かと思い直し玄関へと向かう。


 ――ガチャ


「……ども」

「こんな時間にどうしたのオルガ?」

「……緊急事態」

「はい?」

「……悪いけど一緒に来てもらう」

「ちょっと意味が分からないんだけど」

「……あれ」


 背後を指さされたのでそちらへと振り向くけど、そこにはテレビがあるだけ――


『緊急ニュースです。中国とロシアのダンジョンで同時に迷宮氾濫デスパレードが発生しました』


 ああ。そういう事ね。



--―-----------------------------------


・あとがき

8章終了~

お正月前に終わって、プロット制作で正月中更新できなくなることにならずにホッとしております。

さて、皆様にはこの場を借りてお詫びと皆さんが思ったであろう疑問を言わなければいけませんね。


なんで作者ヒューマンドラマ書いてんの?


蒼汰)「本編の雰囲気ぶち壊すような発言しないでくれませんかね」

作者)『いやだって読者全員が、これ現代ファンタジーじゃなくなってない?って絶対思ってたよ』

蒼汰)「それでも作者がそれ言ったらダメでしょ」

作者)『いやだって、ぶっちゃけこの場だから言うけど、文化祭1日目が始まってる段階からお前をダンジョンにぶち込んで暴れさせたかったよ』

蒼汰)「とんでもない事言ってんぞこの作者」

作者)『もうちょっとこう非日常的なのが書きたかったのに8章ほぼ日常で、学校にテロリストでも送ってやろうかと思い始めていたのを我慢したほどだし』

蒼汰)「マジでとんでもない事言ってますね!」

作者)『海外から3人来て、その内1人が平穏の翼との確執があるし、やれなくはないかと思ったけど諦めた』

蒼汰)「それは英断だと思いますが、一応理由を聞いてもいいですか?」

作者)『殺るなら証拠の残らないダンジョンで普通殺るだろって思ったから』

蒼汰)「やばい。危険が微妙に回避しきれてないよ。というか思い出しましたけど、そもそも7章あとがきでハニトラって言ってませんでしたっけ?」

作者)『ハニトラ(矢沢に)だな』

蒼汰)「そう言えば、誰がとは宣言してませんでしたもんね……詐欺かよ」

作者)『え、ハニトラされたかった?』

蒼汰)「いや全く」

作者)『だよな。いや、ぶっちゃけ最初はその予定だったよ。だけど屋上とトイレでの出来事思い出してみ』

蒼汰)「何かありましたっけ?」

作者)『はぁ~。これだから課金中毒クソハーレム野郎は』

蒼汰)「誉め言葉と暴言を混ぜないでくれません?」

作者)『100%暴言なんだよな。ほら、それより屋上とトイレだよ』

蒼汰)「そんな事言われても……、あ~確かちょっと迫られたり、膝に座られましたね?」

作者)『これだよ。ハニトラされた自覚もなければ、ろくに覚えてすらいないとか、こんな奴にハニトラできる未来がまるで浮かばなくて、危うく今章ボツりかけたぞ』

蒼汰)「え、僕のせい?」

作者)『ああ、その通りだよ。まあ結局咲夜の家の問題と作中の時期的に文化祭があるからちょうどいいかと思ってそっちになったんだが……なんで文化祭なんてやっちゃったんだろ?』

蒼汰)「高校の行事全否定しないでくださいよ」

作者)『そうは言うが、作者の高校、準備期間半日、開催期間1日という驚異の日程のせいで、くっそショボかったから今回の描写、ほぼ作者のイメージぞ。他の高校の文化祭なんて行った事ないし』

蒼汰)「じゃあなんで文化祭イベントなんてやったんですか」

作者)『一応お前ら高校生だし。学校イベ的なことしたかったから文化祭やったら、文化祭ハーレムデートの糖度高すぎて精神に負荷がかかったから、ソフィアのシリアス途中で差し込んで塩まいたけど』

蒼汰)「書いた本人がダメージ受けてるってどういうこと?」

作者)『自分があんな甘い話を書いてるかと思う羞恥心と、作者の灰色の青春時代が合わさって強烈な猛毒に変化したんだよ』

蒼汰)「ああ、それはキッツイですね」

作者)『だろ? まあでも8章じゃ元から広げられていた話の風呂敷(咲夜家)が少し畳まれたから良かったよ。無駄に新たな風呂敷(海外)が広がってしまったがな』

蒼汰)「何しちゃってるんですか」

作者)『馬鹿野郎。ノリに決まってるだろうが』

蒼汰)「ノリで海外の問題にまで手をつけないでくれませんかね?僕らそのせいでかなりヤバい気配がするんですけど」

作者)『でも戦う場がないと8章で開示できなかった海外からの転校生たちのスキルとか、見せ場がなくてな……』

蒼汰)「そんな理由で海外にまで行かされそうな僕って……」


という感じで、9章は8章で溜まった作者のフラストレーションを叩きつける回になりそうな予感。

もっとも、まだプロット真っ白なんでこれから作成していきますので、次章は1週間後あたりになるかと思います。



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