第45話 断る
――パンッ
――パパンッ
――パパパンッ
連続で響く破裂音。
その音の出どころなんて気にせずに僕はすぐさまスマホをタップし続けた。
「ゆ、指が痛い……」
『泣き言言ってる場合じゃないのですご主人さま』
「分かってるよ」
目の前で繰り広げられる高速戦闘は僕の目では追いつかないレベルであり、
アヤメに叱咤されながら、タップミスしないようにひたすら連打する。
「〈
『ホントに味方ごと撃ってきますか』
冬乃が放った〔
「くっ、攻撃が全く当たりません」
『わたしがどれだけスキルを使用していると思っているんですか。あなたの攻撃なんて当たりませんよ』
「当たらなくても、乃亜ちゃんが牽制してくれるだけで十分」
『同じ[鬼神]を使って他にもスキルを使っているにも拘わらず、対等近くまで戦えるあなたは異常ですよ!』
乃亜の姿だから咲夜が独力で会得した[鬼神]の〝臨界〟なんかの技は使えないんだろう。
うん。ほとんど戦闘は見えなくても全く見えないわけじゃないし、何より声は聞こえるんだから出来る事は十分あるね。
『……かまって』
「今結構重要局面だからね。大人しくしていて欲しいというか、出来れば乃亜達の手助けしてくれないかな?」
抱き着いているだけでは満足できなくなってきたのか、オルガが頭をグリグリと押し付けてきたよ。
乃亜達のフォローをしないといけないから、せいぜい片手くらいしかかまってあげられないんだけどなぁ。
『……じゃあ頭撫でて。そうしたらやる』
「ドッペルゲンガーに取り込まれてるはずなのに、それでいいんだ」
頭を撫でるだけで助けてくれるならやらないはずがない。
問題は片手が塞がる事で、親指で連続タップし続けないといけないせいで攣りそうな事だ。
耐えてくれよ。僕の右親指。
『……ふっ』
『[バックア――くっ、わたしに攻撃しないでください! 先輩を倒しなさい!』
『……ぐっ!?』
あ、マズイ。
オルガが僕らにやったみたいにドッペルマスターのスキルの発動をキャンセルしたのはいいけど、ドッペルマスターが命令して行動を強制させられることを失念していた。
オルガが敵に回られないよう[画面の向こう側]を使えなかったけど、先にオルガをなんとか気絶させるか〔
やられる! ――と思ったのだけど何時まで経っても何の衝撃も来ず、オルガを見下ろすとプルプルと震えていた。
『……こ、断る』
『なっ、わたしに逆らった!?』
『……手助けしないと……あ、頭、撫でてもらえない』
『そんな理由で!?』
オルガは苦しそうな表情をしており、ドッペルマスターの支配下にあるためか、その命令に逆らう事を苦痛に感じているようだけど、なんとか耐えてくれているようだ。
「オルガ、手助けはいいからあと少しだけ耐えて」
『……頭は?』
「撫でてあげるから」
『……ならいい』
『よくありませんよ!? ちょっ、先輩を
『……いや。あとなんでそんなに
オルガの[マインドリーディング]はドッペルマスターにも効くのか、内心凄く焦っているのが分かるようだ。
なら思った通りだ。
こっちに合わせて〔
〔
「大量のスキルと場の空気で失念していたみたいだけど、〔
『だけどその効果は【典正装備】にまでは及ばない。分かっていたはずなのに……!』
〔
というかそもそもの話、〔
確認できている範囲では大きすぎるものや【典正装備】にはその効果を発揮してくれないんだけど割と曖昧なので何とも言えない。生物自体にも直接影響らしきものはないし。
「なるほど。そのためにわたし達に短期決戦を指示したんですね。強力な【典正装備】を真っ先に使用させるために」
僕らはほとんど気にせずに連続で使用しているけど、【典正装備】はたいてい使用したらインターバルがあるから、ドッペルマスターが【典正装備】を使えなくなるまで追い詰められれば最良だ。
最悪〔
「なら他の【典正装備】も使わせる。〝神撃〟[瞬間回帰]」
『くっ、〈
ドッペルマスターは構えた大楯、〔
『何もかも全て先輩が弱すぎるのがいけません! 殺すなって命令が無ければ真っ先に先輩を狙うのに、防御力が紙すぎて下手に攻撃したら〔
「言葉の暴力は完全にオーバーキルだよ」
〔
「あとは〔
「他の人に変身しても、ドンドン使わせれば問題ないわ」
大抵の【典正装備】ならインターバルが存在するから、効果を連続で発揮できないしね。
あといくつあるのか分からないけど【典正装備】を持っている人は多くないはず。
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