第14話 グッバイ日常
色々ととんでもないニュースが流れはしたけれど、今のところ大した問題は起きてはいない。
未だに大勢失踪した重犯罪者は誰一人として見つかっていないし、異界の住人に対してどのように対処するのか政府も冒険者組合も何も発表しないけど、一応重大な何かは起きてはいない。
まあ報道があった翌日だし、そうそう何か起きるもんじゃないよね。
「そう思った矢先にこれか~……」
『またご主人さまが駆り出されることになるのです?』
「勘弁してよ。地上だし自衛隊とか頑張ってくれないかな?」
アヤメと一緒にテレビのニュースを見て、僕は肩を落とした。
『大変です! 〔ミミックのダンジョン〕で
しかもその
ヘリから撮影されているようで空から地上の光景が映されているのだけど、その場所は確かに見覚えのある場所で、僕らが訪れたことのあるあの〔ミミックのダンジョン〕で間違いなさそうだ。
その場所からはリポーターの言う通り、ミミックでなくコボルトや一角兎アルミラージなど、見たことのある魔物から見覚えのないものまで多くの種類の魔物、というか魔獣が出てきていた。
なんか妙にモフモフ系の魔物ばかり、というかそれしか出てきてないのは何でなんだろうか?
そもそもミミックが1体もいないのも変だ。
擬態しているわけでもなさそうだし、今回の
「あと【魔王】が言っていた3カ月の猶予って話はどうなったんだ?」
もう訳が分からない。
『〔ミミックのダンジョン〕から現れるこの魔物達ですが、こちらから手を出さない限りは一部の者を除いて危害を加えてくることはありません!』
もっと訳が分からなくなった。
危害を加えないのであれば、何のためにダンジョンから出てきたというのだろうか?
……ん? 一部の者には危害を加えているんだよね?
その一部って……。
『あの魔物達の狙いは先日突如現れた異界の住人です。政府は彼らを保護することに決め――』
ああ、なるほど。
確かに【魔王】は
異界の住人は人類扱いされないの?
獣人とかエルフとか人に近いけど人類とは別の括りなのか。
『……パパ、ママ?』
「ん、どうしたのアヤメ?」
呆然とテレビの画面を見ていたアヤメに問いかけるけど、アヤメは僕の声が聞こえていないのかテレビに近づいて凝視し始めた。
『ま、間違いないのです! なんであそこにパパとママがいるのです?!』
「ちょ、アヤメ落ち着いて」
急にどうしたって言うんだ?
『ご主人さま。ここ! ここなのです!』
アヤメが指さす先には虎の獣人らしき男性と龍の翼を背に生やしてる女性が立っていて、魔物達に指示を出しているかのようだった。
いや、ちょっと待って。
「クロとシロじゃなくない?」
クロとシロは黒い球体と白い球体であって亜人とかでは断じてないんだけど。
『違うのです。確かに今は球体なのですが、あの姿は仮の姿なのです。
ワタシもほんのちょっとだけ見せてもらっただけですが、本来の姿はこっちなのです!』
「え、じゃあなんであんな所にいるの?」
『それは分からないのです。ご主人さまのスマホの中にいるはずなので確認してくるのです』
慌てた様子でスキルのスマホの中に戻っていったアヤメを後目に、僕はニュースの続きを見ることにした。
するといるはずのない人物がそこにいるのが目に入った。
「うわっ、なんでそんな所にいるのさ……」
それと遭遇したのはまだ1カ月も経っておらず、出来れば二度と関わりたくないと思っている人物。
たとえ見た目が多少変わっていたとしても、あれほどの人物を見間違えるはずもない。
「あれ、オルガの姉じゃん」
オルガの姉であるカティンカの姿がそこに映っていた。
カティンカはまるで虎と龍の亜人の人物に付き従っているようで、カティンカ以外にも同じようなのが何人かおり、そのどれもが
「前に遭遇した時は人の姿で、仮にあの姿がユニークスキルだとしたらあの時使ってこなかったのはおかしいよね?」
なにせ今の姿は咲夜と同じように額に2本の角が生えており、何故か以前会った時には着ていなかった着物を着ていた。
角の感じからいっておそらく鬼でいいと思うけど、そんな力を持っていたらカティンカの性格を思い出す限り間違いなくあの時使っているので、あの後に手入れた力と思っていいはず。
うん、関わりたくないね。
あれがさらに力をつけたのかと思うと、戦いたくないと思うのは当然だろう。
「というかこの騒動って、また“平穏の翼”なのかな? 本当に勘弁して欲しいよ」
ホント出来れば関わりたくないけど、オルガの姉で一応僕らが既知である事を考えるとそうも言ってられないのかな?
でもカティンカを目の前にするとオルガが動けなくなるし、それを前面に押し出せば他の人が対処してくれる、といいな~。
この先どうなるかさっぱり予想もできないけど、少なくとも平穏な日常はこのニュースの報道と共に取り上げられてしまったのは間違いなかった。
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