第7話 始まる
説明のあった翌日、僕らは早朝からダンジョン前で待機していた。
これからいよいよ【
「ドキドキしますね。いくら咲夜先輩や矢沢さんがいてくれるから命の危険は少ないとはいえ、危ないことには変わりありませんから」
「乃亜の言う通りだよ。僕もすごい緊張しているかな」
「私達のやるべき事は安全地帯の設置くらいだし、そこまで不安になるような事なんて……」
冬乃は何でもないかのように言うけど、手で髪先を弄ったりして妙に落ち着きのない様子だった。
「冬乃ちゃん、そわそわしてる?」
「うっ。しょ、しょうがないじゃない。今までCランクがせいぜい、それも占有ダンジョンだったのに、A、B飛び越していきなりSランクのダンジョンなのよ?
私達がそんな場所に行って大丈夫なのかって、どうしても思ってしまうわ」
内心やはり不安だったようだ。
そんな中咲夜は割と落ち着いてるような――
「分かる。咲夜も同じ気持ち」
そうでもなかったらしい。
一見いつもと変わらないように見えて、不安に思っていたようだ。
この気持ちはあれだ。
虫歯の治療で麻酔とか効いてて痛くないし大した事ないけれど、口の中でガリガリと音が響いていて、いつ舌に当たるんじゃないかと不安に思う気持ちに似てる気がする。
「鹿島君達、大丈夫かい?」
4人とも不安に思いながら待機していると、矢沢さんが僕らの所にやってきた。
「不安に思う気持ちは分かるけど、僕は入口から少し入った場所で待機だから、なんだか申し訳ないね」
「いえ、矢沢さんはずっと起きていないといけないので、それに比べればまだマシかと。
ところで疑問に思ったんですが、ダンジョンの外で待機するわけにはいかなかったんですか?」
わざわざダンジョンに入って、敵に攻撃される危険を冒さなくてもいいんじゃないかと思うのだけど。
「ああ、それは無理だね。[
「そうなんですか?」
「うん。…………[アイドル・女装]がまた使えるようになった後デメリットがまた復活したから、[
泣きそうな顔で言わないでください。
見てるこっちが切なくなりますから。
「うぅ……。このスキルを無効化するにはダンジョンに一々誰かと行かないといけないし、[アイドル・女装]が使えないと困るって言われて、このみ達には[
せっかくデメリットを無効にできるようになったのに、気軽に無効にできないのは辛すぎる。
「まあこのみ達には今までレベル上げに大いに協力してもらっていたから、せめてこのみ達とパーティーを組んでる高校卒業までは我慢することにするよ」
今なんかフラグ立たなかった?
というか、今回の作戦で矢沢さんの力が有用だと周囲にさらに周知されるだろうから、卒業後もデメリットを気軽に無効にできない気がする。……お口チャック。頑張れ矢沢さん!
「自分よりも鹿島君達だけど、Sランクダンジョンとはいえ上層の方はそこまで心配する必要はないかな。
警戒するのは【
「強くなってるんですか?」
「そうみたいだよ。やっぱりダンジョンの外よりも中の方が本領発揮できるんだろうね」
エバノラが言っていたけど、ダンジョン内では外よりも魔素が満たされているって話だし、その辺も関係しているんだろうか?
スキルを使うのにも魔素が関係しているって話だし、矢沢さんの[
矢沢さんと話している内に予定されていた時間になり、昨日会議室で話を聞いていた作戦に参加する冒険者の人達と僕らを合わせ54人。それに加え、片瀬さんと自衛隊の人達がこの場に集まっていた。
その僕らの前に白鷺三尉が出てきて、手に持っていた拡声器を口元へと持っていく。
『本作戦である【
誰一人欠けることなく作戦を遂行し、願わくば初のSランクダンジョンでの【
その後白鷺三尉が僕ら冒険者に向けて作戦の概要を改めて説明し、僕らはダンジョンの中へと向かうことになった。
いくら矢沢さんがいるからとはいえ、死なないで済むのであるのならそれに越したことはない。
僕らの仕事は安全地帯を1箇所、ないし2箇所設置したらダンジョンの外に出てもいいと言われているし、スケルトンはともかく【
僕はドキドキしながらダンジョン内へと入っていった。
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