第11話 第一の試練〝花の道〟(1)

 

 エバノラに指示された通り、扉を潜り抜けるとそこは一面に広がる様々な花で彩られた花畑だった。


『はい注目~。今からあなた達にはこの花を3つ集めてもらいます』


 そう言ってエバノラが手に持っているのは赤、青、緑の花だった。


「その3種類の花を集めればいいんですか?」

『違うわ。この3種類の内、どれでもいいから3つ取ってくるのよ』

「1人につき3つって事でいいんだよな?」

『そうよ~。もちろん他の人が協力してもOK』

「じゃあ他人が手に入れたもんでもいいのか……」


 うっわ、奪う気満々じゃん。


『同意があればいいわよ。奪い合いは厳禁ね』


 エバノラが指をパチンっと鳴らすと、エバノラのすぐ横に看板が現れた。

 さっきからエバノラ指パッチンで何でもしてくるな。

 最初に遭遇した時『私のダンジョン』って言ってたし、自身の支配する空間でなら何でもできるということなのかな?


 まあエバノラは攻撃するチャンスはいくらでもあったのに、こちらに危害を加えようとしてこないから、今更エバノラが何を出来るか考えて警戒するだけ無駄なのかもしれないけど。


 それはさておき現れた看板だ。

 一体何が書いてあるんだ?


 《以下の禁則事項を破ったものは失格とする》

 ・暴力行為

 ・略奪行為

 ・?行為


 シンプルで分かりやすい。最後以外。

 ?行為って何?


 そう思ったのは僕だけでなくもれなく全員であり、真っ先にエバノラに突っかかっていた男の人……長いな。男性Aにしよう。男性Aが率先してエバノラに問いただす。


「おい、最後の?は何なんだよ?」

『それは秘密~。でもすぐに分かるわよ』


 人をおちょくるようにクルクル回った後、ニヤニヤとこちらを見下ろしてくる。


「ちっ、言う気はねえってか」

『そうよ~。あ、それと摘む花を間違えた場合は、花粉が顔面目掛けて飛んでくるから間違えたらすぐに分かるわよ~』


 なんか企んでいるかのような笑顔でこちらを見ているので、手当たり次第に摘んでもいいのか不安になるな。

 ただ花粉を顔に浴びるだけの罰で済むんだろうか?


『それじゃあ試練開始~。ちなみに制限時間は1時間だから頑張ってね~』


 言うべきことは言ったからか試練が始まってしまった。


「おらどけお前ら。おいてめえ。その花をよく見せやがれ」

『はいは~い』


 エバノラが片手で3種類の花を男性Aに突き出して見せているけど、僕らは男性Aが壁になっているせいで見る事ができない。


 男性Aは十分に花を観察したのか、その男と一緒にいた女の人達とその場を立ち去っていき、地面にしゃがみこんで花を物色し始めた。

 男の行動に気を取られていたせいで、亭主関白っぽい男性Bのグループと気の弱そうな男性Cのグループにエバノラの前に先に並ばれてしまい、僕らが花を確認できるのは最後になってしまった。


 前の2つのグループが花を確認して立ち去っていったので、ようやく僕らが確認できる番が回ってきた。


『あら? スンスン』


 花を確認しようと近づいたら何故か僕らの匂いを1人1人確認し始めたんだけど、一体何をしているんだ?


『え、嘘……。あなた達童貞に処女じゃない!』

「おいこら」


 何を堂々と人の性経験を大きな声で暴露しているんだ。


『おかしい。おかしいわ。普通、ハーレム作ったらズッコンバッコンあはんうふんと猿の様にやりまくるものじゃないの!?』

「僕らまだ未成年なんですけど!?」

『成人とか関係ないわよ。そもそも初経に精通がきたら子供が作れる証なんだから、その時点で大人と同じよ』

「極論過ぎる!?」


 初経に精通がきたばかりなんてまだまだ子供もいいとこなんだから、体も精神も未熟なのにとんでもない事言い出したぞ。


『はっ! まさかあなた……不能?』

「不能じゃないよ」


 人の下半身見て言わないでくれません?


『え~じゃあなんでこんなに可愛い子達がいて手を出さないのよ~』

「人の事情に首を突っ込んでないで、早く花を見せてくれませんか? 時間制限があるのに僕らだけここで足止めを食らっているんですけど」

『う~ん、まあ試練は平等じゃないといけないけど……本当に参加するの?』


 まるで子供が無謀な事をしようとしているのを心配そうな目でこっちを見てくるのは何で?


「参加するためにここにいるんですが」

『私、別に嘘ついてないからちゃんと元の部屋に戻してあげるし、戻って貫通式を行っても全然いいのよ?』

「言い方!?」


 さっきからちょいちょい耳を塞ぎたくなるような事言わないでくれませんかね!


『いや~さすがの私も可哀想って言うか……。試験は平等じゃないといけないから口には出せないけど、今なら丁度いいわ。あれを見てもらえば分かるわよ』


 エバノラが指さす先には男性Cのグループ。


「なんかどれも同じ見えるわ」

「試練って言ってたし、ここは慎重に……」

「まだるっこしいね。どうせ間違えても花粉がかかるだけなら適当に引っこ抜いてみればいいさ」


 少し大柄な女性がそんな事を言いながら花を引っこ抜くと、間違った花だったため花粉が噴出された。


「わっぷ。思ったより花粉の量が……ああっ!」

「どうしたの!?」

「わ、分からない。体が急に熱くなって、はぁはぁ」


 荒い息を吐いている女性の顔が紅潮しているのが遠くからでも分かる。

 あの花粉を浴びた途端にあのような状態になってしまったようだけど、一体あれは……?


「み、ミナト……」

「わっ、待ってこんな所でなんて!」

「この様子……。ま、まさか禁則事項って性行為!?」


 はぁ?!


『せいか~い!! 我慢しないと失格になっちゃうわよ~』


 なんてとんでもないルールを設定しているんだ!?

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