第14話 模擬戦(3)
先ほど放たれた手裏剣とは段違いの速さで、投げられた手裏剣が咲夜に当たって服が破けていた。
しかし服は先ほどと違いそこまで破けていなくて、咲夜の受けたダメージが思ったよりも低い事が見て取れる。
威力を捨て、速度を取った結果のようだね。それなら――
『咲夜、避けれないほど速い手裏剣は無視して、威力の高そうな最初に放ってきたような手裏剣だけ避けて突撃するのは出来る?』
『分かった。やってみる』
『冬乃も出来たら咲夜の援護をお願い』
『分かったわ』
咲夜はすぐに僕の提案に頷くと、真っ直ぐ城壁に向かって駆けだす。
「ぬっ、[性質付与][投擲]!」
――パンッ
服が弾ける軽い音が聞こえ、手裏剣を受けたことで少し動きが遅くなったようにも見えるが、それでも咲夜は前へと進んでいた。
「今度は被弾覚悟でござるか? ならばこれならどうでござるか!」
「ん」
雄介さんが放った手裏剣を、咲夜は今度はジグザグに動いて手裏剣を避けていく。
「ぬおおおっ、いともたやすく避けられるでござるよ!」
「落ち着くでやんすよ。少なくとも時間を稼げればいいいでやすから、このままこっちに釘付けにしやすぜ」
「分かったでござる」
何度も何度もスキルを使い、手裏剣に付与する効果を変えているのを見て[性質付与]の効果がなんとなく読めた。
手裏剣を投げる際に常に左手で手裏剣を投げ、右手で何かを持ち換えていた。
単純に考えて右手にある物の特性を左手にある物にコピーする能力的な感じだろう。
そう考えれば先ほど智弘さんに城壁を付与したとか言っていた意味も理解できる。
『雄介さんの右手にある物を破壊するか、あの右手そのものを消し飛ばせばスキルは使えないはず』
『でもそれをするには近づくか、遠距離から気づかれない速度でピンポイントに破壊しないといけないわよ?』
『うーん、僕らに遠距離から的確に攻撃する手段はないし、スキルのおおよその効果が予想出来てもどうにもならないな』
咲夜が何とかして近づこうとしているけど、距離が近くなると最初の手裏剣の様な威力の攻撃が当たるようになってしまう上、まるで車に衝突するかのように吹き飛ばされて押し戻されるので、城壁に近づけれていない。
『なんなら〔
『どうしようか。あまり時間をかけるのも……』
僕らはこの模擬戦を行う上で、実は極力【典正装備】の力に頼り過ぎないよう制約をかけてる。
前回“平穏の翼”と戦う事になった際、僕が無力化されたせいで【典正装備】のインターバルを無視して使えなくなり、どのタイミングで能力を使用するか見極められなかったので、今後そういった事態でも上手く使える様練習も兼ねている。
これを知ったら舐めプじゃないかと怒られそうだけど、逆に初手から〔
〔
「〈
「うわっ?!」
乃亜が〔
『すいません、先輩。この人想像以上に強いです』
『念のため、すぐに武器を交換するよ』
『分かりました』
乃亜の【典正装備】によって吹き飛ばされて距離の空いたうちに、僕は素早くスマホを操作して乃亜の【典正装備】を再召喚し、インターバルを無くした状態にする。
だけど本来であれば乃亜の【典正装備】は能力使用後10分のインターバルがあるので、先ほどの制約上この模擬戦ではもう出来る限り使いたくないところだ。
「驚いたよ。それが【典正装備】ってやつなんだね」
「偶然手に入れられたものですけどね」
「羨ましい。ボクらにだって【
「いや、あんなのにはあまり出会わない方が……」
乃亜の言う通りだ。
1回でもゴメンなのに2回も遭遇して大変だったので、今後はもう遭いたくないね。
「ここで君達を倒して、【
「挑むのは自由ですが、わたしはそう簡単には倒されませんよ!」
乃亜が意気込んでいるけれど、倒すと言わずに簡単には倒されないと言っている事から、自分1人ではあの人に勝てないと認識しているんだろう。
『乃亜、もうしばらく耐えてて。今から全力でこっちの人達を倒すから』
『分かりました』
向こうの時間稼ぎにこれ以上付き合う事は出来ない。
『冬乃』
『分かってる』
冬乃の名前を呼んだだけだけど、すぐに僕の意図を理解したのか〔
「吹き飛びなさい。〈
放たれる猛炎は先ほどまで放っていた[狐火]とは訳が違う。
いくら城壁の上、遠い場所にいたとしても、そこは[狐火]の時と違い射程圏内だ。
「ぬうおおっ!? [性質付与]!」
かなり焦った表情で雄介さんが手裏剣を複数放つ。
放たれた手裏剣が炎と衝突した時、爆発を起こして白い煙のようなものが広がっただけで人はおろか、城壁にすら傷をつけることは出来なかった。
今度は水の性質でも付与したのか、そのせいで城壁付近は水蒸気が立ち込めているんだろう。
だけどそのお陰でこちらに一気に有利になった。
「しまったでござる! これじゃあ何も見えないでござるよ!?」
『咲夜、冬乃。今なら近づけるよね?』
『うん、いける』
『もちろん私も行くわ!』
城壁に近い咲夜がすぐさま接近していき、冬乃も後を追いかける様に走って行った。
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