第25話 作戦会議
「乃亜、冬乃、急に呼び出したりしてゴメン。明日も文化祭があるのに来てくれてありがとう」
「気にしないでください。咲夜先輩の事ですから」
「乃亜さんの言う通りよ。確かに前までだったらちょっと厳しかったけど、今はお金に余裕ができて母さんが仕事の量を減らして家にいる時間が長くなったから、秋斗達の面倒を見てもらえてるし」
「あれだけ稼いだんだから、千春さんに働いてもらう必要ないんじゃないの?」
「私もそう言ったのだけど、あくまでそのお金は私が稼いだものだから、極力頼り過ぎないようにしたいって言うのよ?
まあ秋斗達の面倒を見る代わりに勤務日数減らすようなんとか交渉したから、前ほどは忙しくなくなってるはずだけど」
凄いな千春さん。
冬乃が億単位で稼いでるのにそれに頼り過ぎないようにするなんて普通できないのでは?
仕事しなくていいって言われたら大抵の人はそれに甘えそうな気がする。
「
「は、はい! 四月一日月夜といい、ます」
冬乃がチラリと月夜ちゃんに視線を向けると、月夜ちゃんが少し緊張したように身体を一瞬強張らせていた。
やはり少し人見知りなところがあるのかな?
僕と初めて会った時も話すのに時間がかかっていたし。
「月夜ちゃんですね。先輩からの連絡では咲夜先輩との仲を取り持って欲しいという話でしたが、それで良かったですか?」
「はい……。正確には月夜だけでなく両親との仲もなのです、が」
月夜ちゃんを見る限りでは僕らが間に入れば問題なさそうな感じはするのだけど、問題はご両親の方だ。
会った事もない人達だし、その人達が実際に咲夜をどう思っているかは話して見ないことには判断がつき辛い。だから――
「明日、月夜ちゃんのご両親に文化祭に来てもらうことって出来るかな?」
理由も含めてそう月夜ちゃんに尋ねたところ、コクリと頷き返された。
「大丈夫だと思います。2人とも明日は何も用事が無くて家にいますし、そもそもお姉ちゃんの高校の文化祭に行くの悩んでいましたから、少し背中を押せば来てくれるはず、です」
ふむ。その話を聞く限りご両親も今の状況をどうにかしたいと思っているのかもしれない。
そうでなければ文化祭に行くことを悩むことすらしないだろうから。
「それじゃあ咲夜が自分のクラスで店番をしている11時から13時の間に僕らとご両親で1度顔合わせをしておこう」
「そうですね。しかし咲夜先輩のご両親を文化祭にお呼びするのはいいのですが、具体的にはどうしましょうか?」
「ただ来てもらっても普段家にいる時と変わらないでしょうから、私達が間に入ったとしてもちょっと効果は薄そうなのよね」
冬乃の言うことはもっともであり、ただ文化祭に呼んで話し合うだけではほとんど何も変わらない気はする。
文化祭というイベントの高揚感だけでは今一歩足りない事は明白なので、もう少し何かキッカケのようなものが欲しいかな。
「あっ、ではこういうのはどうでしょうか」
全員で悩んでいると乃亜が何かを思いついたようでそれを僕らに告げてきたのだけど、それは僕にとってはかなり厳しい話だった。
「……マジ?」
「ダメですかね先輩?」
「精神的に死んでしまいそう……」
「蒼汰の気持ちは分からなくもないけれど、乃亜さんのアイディアは悪くないと思うわ」
「僕、明日の文化祭が【
「先輩がそこまで辛いなら、やはりこの案は無しですかね?」
乃亜が僕を気遣って案を取り下げようとしてくれているけれど、僕は
「いや、それでいこう」
「か、鹿島さん大丈夫です、か?」
「蒼汰。あんた今顔が凄い青ざめてるわよ」
「先輩、そこまで無理しなくてもいい気がしますが……」
今の段階で全員が見て分かるほどの顔色なら、明日には僕どうなってしまうんだろうか?
だけどやるしかない。
それが咲夜のためになるというのなら。
「足ガクガクだけど本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だ、問題ない」
「問題しかなさそうなんですが、空元気も元気ということでいいんですかね?」
「すいません鹿島さん。我が家の問題なのにこんなにも辛い思いをさせてしまっ、て」
いずれは通る道だから何の問題もないさ。
問題はその道が本来なら段階を踏んで険しさのレベルが上がっていくはずなのに、いきなり難易度MAXのヘルモードになっていることだ。
ううっ。さっきまでなんともなかったのに急に胃痛が……。
「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」
「鹿島さんは明日使徒と相対するというのですか」
「先輩が壊れたかと思ったのですが何かのネタでしたか」
「そこまで嫌ならやっぱり別の案を考えた方がいいんじゃないかしら?」
冬乃がそう言ってくれたけれど、それ以上の良案なんて今の段階では何も思いつかなかったので結局その案でいくことになってしまった。
明日、咲夜のために僕は地獄を見る。
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