第5話 ダンジョンに出会いを求めるのは……

 

 Dランクの〔ラミアのダンジョン〕では肩慣らしにもならないことが分かった僕らだったけど、せっかく来たので帰る時間まではラミアを狩って魔石を手に入れていた時のことだった。


『ご主人さま。後ろから誰かが近づいて来ました』

「あ、そうなの? 他の冒険者の人かな?」

「一応警戒しておきましょう先輩。前も似たようなことがあって襲われたことがありますし」

「……ごめん」

「咲夜先輩のことではないですよ!?」


 咲夜も合わせると実に2回もダンジョンで人に襲われているので、乃亜の言う通り警戒はすべきだろう。

 もっとも今までも何度か他の冒険者の人達とすれ違っているので、そう心配することではないのだけど。


「とりあえず見ず知らずの人だとアヤメの事を何言われるか分からないから、一旦戻ってもらっていいかな?」

『わかったのです』


 アヤメを一度スマホの中に戻した後、後ろの通路から来る冒険者に対して身構えていたら意外な人物が現れた。


「あっ」

「おや? こんな所で奇遇だね」

「ソフィアさん、なんでこんな所に?」


 現れたのは僕のクラスにアメリカから転校してきたソフィアさんだった。

 周囲を見る限り誰もいなさそうだし、たった1人で何故ここに?


「なんでも何もダンジョンに来ているんだからお金を稼ぎにさ。仕送りはあるけどある程度自由に使えるお金も欲しいからね」


 まあそりゃそうか。

 レベル上げだけの目的でダンジョンに潜るのなんて少数派だろうし、普通はお金を稼ぐために来るものだよね。


「先輩、そちらの方は……」

「ああ、彼女は僕のクラスに転校してきた人で、ソフィアさんって言うんだ」

「ソフィア・グティレスだよ。ソフィアと呼んで欲しい」

「はい、よろしくお願いします。わたしは高宮乃亜といいます」

「私は白波冬乃よ」

「四月一日咲夜」

「うん、よろしく。

 それにしてもソウタ、こんな可愛い子達と一緒のパーティーだなんて、大人しそうな顔して意外とヤリチン? なの?」

「それ意味理解して言ってる?!」


 ヤリチンのイントネーションが怪しかったので絶対意味をキチンと理解してないと思う。


「冗談だよ冗談。でも一緒のパーティーなんだし、この中の誰かと付き合ってるんだろ?」

「わたし達3人共先輩の彼女です」

「……ヤリチンじゃないか」

「誤解だ!」


 まだ手を出してないよ。


「あ、うん、ソウタ……さんとはほどほどの仲でいられたらと思います」

「なんか一気に心の距離が空いた気がする?!」


 さん付けだし、敬語だし、必要以上に関わらないでくれ感が凄いよ。


「先輩がどう思われてるかはともかく――」


 割と重要な事じゃない、それ? クラスメイトで少なくともあと半年くらいは同じ教室で授業を受けるんだよ?


「ソフィア先輩はここに1人で来たんですか?」

「そうだよ。日本のダンジョンは初めてだし1人で潜るから、いつものランクより下のダンジョンに来てみたんだ」

「そうなのね。私達も肩慣らしにここに来てみたんだけど、1つ上のC、下手したらBランクのダンジョンぐらいがちょうどいいかもしれないと思ってたところよ」

「え?!(ウソ!? さすがにBにはついていけない。Cでもまだワタシのレベルでソロじゃ上層がせいぜいだから偶然を装って近づくのは厳しいか……)」


 ソフィアさんが手を口元に当ててゴニョゴニョと何か呟いているけど、よく聞こえなかった。


「どうしたの?」

「い、いや、何でもないよ。こんな所で長話もなんだしワタシはそろそろ行くとするよ。それじゃあまた学校で」

「あ、うん、じゃあね」


 スタスタと立ち去っていくソフィアさんを見送った後、僕らはある程度ラミアを狩ったところで咲夜の〔紡がれた道しるべアリアドネ ロード〕でダンジョンの入口付近に戻ってきてロビーへと移動する。

 そしていつものように受付で魔石の売却を行っている時だった。


「むっ、そこにいるのは高宮、だったか?」

「あれ、何故オリヴィアさんがここに?」

「……ん」

「あ、オルガさん」


 乃亜のいる方に僕より、というか大樹の身長180センチより大きそうな西洋の甲冑を着た女性と、咲夜の方に乃亜の身長139センチより小さそうな軽装の少女が同時に現れた。


「2人の知り合い?」

「あ、はい先輩。オリヴィアさんはわたしのクラスにイギリスから来られた転校生の方です」


 まさかの乃亜と同級生?!

 え、大人顔負けの体格で乃亜と同い年なの!?


「うん。彼女は咲夜のクラスにロシアから転校してきたオルガさん」


 こっちはこっちで咲夜と同級生?!

 大人っぽく見える外国人でも小学生にしか見えないんですけど!?


「高宮とパーティーを組んでる者達だな。私はオリヴィア・ローズ・ウォーカーという。気軽にオリヴィアと呼んでくれ」

「……オルガ・ポポワ。オルガでいい」


 オリヴィアさんは肩より少し上あたりまでのゆるふわの金髪と薄い緑色の目が特徴的な女性だった。

 オルガさんは目の色と髪の色が同じグレーで、サラサラしたショートヘアーに右目だけ隠す様にそこだけ長くしているのが特徴的な少女だった。


 ……うん。


 2人を改めて見て思う。

 学年逆では?

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