第4話 瞬殺
僕らはいつも以上の速度で移動できており、過去最短で中ボスのいる大部屋までやってこれた。
「アヤメの索敵能力のお陰で余計な戦闘をしないで一気にこれたね」
『ご主人さまの[時短戦闘]で戦闘時間が半分になったお陰でもあるのですよ』
アヤメはそう言いながらも嬉しそうにクルクルと回って嬉しそうだった。
「よし、それじゃあ入るよ」
「「「『はい!』」」」
大部屋の大きな扉を開けるとそこにはラミアクイーンと配下のラミア達が群れており、各々寛いでいる様子だったけど大部屋の扉が開かれ僕らが部屋に侵入してきたことで、一気に戦闘体勢に入っていた。
「では早速、〔
まるで変身ヒーローのように《毘》の書かれた印籠を構えて能力を使用した。
印籠が輝きガラスのように砕けると、光の破片は乃亜の背後へと集まっていきとある幻想を映し出す。
上杉謙信と対峙した時によく見た姿、毘沙門天が現れると同時に乃亜の身体が金色に輝き出す。
「私もやるわよ。[複尾]からの[気狐]」
冬乃の尻尾が
そこからさらに[野狐]の時にはなかった現象、冬乃の髪や尻尾が薄く銀色に発光しだす。
「咲夜もいく。〝臨界〟」
咲夜の本気の姿。
[鬼神]を全力で行使するために、全身の肌が褐色へと変わり、髪の根本から徐々に髪全体へと広がるように真っ赤に染まっていく。
それに加え大きな角が2本髪の生え際から生え、額の中央に第三の目が縦に開いて現れた。
そして〝臨界〟時特有の青白いオーラで纏われ、湯気のようなものが体から立ち込めていた。
こうやってマジマジとこの姿を近くで見るのは久々な気がするな。
……ところでさ。1つ言わせてもらっていいかな?
やりすぎでは?
以前ラミアクイーン相手に戦った時、君らそこまで強化して戦ってないよね?
その状態で余力残して勝ってるのに、3人がかりで全力でやるとかマジ?
「行きます!」
「やるわよ。[狐火]!」
「はぁっ!」
瞬殺だった。
金と青の光が交錯し、それに追従するかのように赤い熱球がラミアクイーン達を襲った結果、あっという間に敵を光の粒へと変えてしまった。
「あれ? あっけなかったですね」
「以前より[狐火]が格段に強化されたのは分かったけど、これあまり狭いところでは威力を絞らないと危険かしらね?」
「手ごたえ無かった」
でしょうね。
『これじゃあまるで虐殺なのです』
「言わないであげて」
『ご主人さまが活躍する場は全くなかったのです』
「あの戦闘に割って入る隙がどこにあったと?」
僕は無駄に手に持っていた、使用するタイミングなんて一切なかった新しく手に入れた【典正装備】、〔
まあこれ持って接近戦するなんて自殺行為だから、使用するのは戦闘後が基本になりそうだけど。
僕はそう思いながら乃亜達へと近づいていく。
「3人共体力とか問題ない?」
「〔
「私は問題ないわ。[狐火]を1発撃っただけだもの」
「数秒だけだけど、〝臨界〟を使ったから少し疲れた、かな」
「そっか。それじゃあせっかくだし、乃亜と咲夜に僕のこれも試していいかな?」
「「いい(ですよ)(、よ)」」
2人の了承を得たので僕は早速〔
「取り込め、〔
軸とかけひもしかなかったそれに、〔
もうお分かりだろう。
……筆だよ。
いや、なんでだよ!
太郎坊兼光って名前でなんで刀じゃないの?!
もう習字道具揃いかけてるんだけど!?
僕は手に入れた日からずっと思い続けていた事を再び心の中で叫びながら、準備の出来たそれを持って2人へと近づく。
太めの書道筆を手に持って、2人の身体をそれでなぞっていく。
「あっ……」
「んっ」
なんだかいけない事をしているような気分だけど、普通に腕をなぞってるだけなんだから変な声を出さないでくれないかな……。
2人をなぞった筆の先が光り輝くと、その光は2人へと取り込まれていく。
「わぁっ、身体の違和感がなくなりました」
「うん、疲労感が消えた」
〔
本来であれば〔
しかし〔
そう、〔
しかし残念ながら取り込めるのは僕が入手した【典正装備】に限るので、どんなものでも典外回状のような力を発揮できるわけではないのだけど。
まあ毛でなぞらないといけないから効果範囲狭いけど、典外回状を発動した際の1週間のインターバルがなくなるから、十分な効果だと思う。
……ところで気が付いているだろうか?
僕は最初気が付かなかったけれど、これが筆であること、そしてその元となるのが明智光秀からきていることを考えもう一度名前をよく見てみたら、あることに気がついてしまった。
太郎坊兼光・
僕はこれを『はかい』と思っていた。
他の【典正装備】の本来の理を破壊するのだと。
違った。
この筆、毛が無いんだ。
明智光秀も毛が無かった
……ハゲじゃねえか!?
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・あとがき
ラーテさんという方がファンアート描いてくださり、それ見たさにTwitter始めました。
作者の名前(甘井雨玉)か作品名で見られると思うので、興味のある方はご覧いただければと思います。
作者、大歓喜!
ラーテさん、ありがとうございます!!
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