第24話 戻ってる!?


「死にたい……。おやすみ……」

「そのまま永眠しそうな不穏な事言いながら部屋に戻らないでくださいよ」


 頼綱と信玄討伐後、信長ローリーの件を報告したら一旦作戦中断する事になったので、矢沢さんが[役者はここに集うオールスター緞帳よ上がれカーテンコール]を使って死んだ人や大怪我をした人を復活させてくれたのだけど、そのスキルを使った直後膝から崩れ落ちて泣きそうな顔になっていた。


「長時間アイドルムーブしていましたから、精神にきているんでしょうね」


 乃亜の言う通りなんだろう。

 一人称すら変わってしまうくらい影響を受けていたのに、いきなりスキルが無効になって影響がなくなってしまったので、その落差が心にきているんだろうね。


「それにしても私達はダンジョン前で待機なのよね。報酬上げてもらったから別にいいんだけど」

「他の冒険者の人達がダンジョン内でローリーさんの近くで見張りをしてくれているから、武将が来たらすぐに分かるとはいえ危ないよ、ね」


 そう、僕らは今ダンジョン前におり、信長ローリーがいなくならないように見張りをさせられている。

 自衛隊の人達も試したけれど、僕以外信長ローリーを運ぶ事ができなかったため、いざという時に移動させられる人間が傍にいて欲しいと言われてしまったからだ。


 それは本来しなくていい仕事なので渋っていたら、しばらく交渉に時間がかかったもののパーティーメンバー全員に最初提示した金額の3倍払うので、安全地帯設置に加え、信長ローリーをダンジョンの奥まで運ぶことも含め移動に力を貸して欲しいと言われてしまったので引き受ける事にした。

 まさかの3億である。しかも1人当たり。


 僕らパーティーで考えると12億は凄い大金だなぁ。


 ………………ん? あれ?

 確かハーレム法って、配偶者1人につき4億以上で重婚できるんだったような……。


 チラリと乃亜を見たら、何故か意味ありげな視線を向けているのがアイマスク越しでも分かった。


「クスッ♪」


 スゥーーー。


 今は考えない様にしよう。

 先の事は未来の僕に任せる。

 これも度重なる課金で学んだ術である。

 お金の事は未来になんとかすればいいのと一緒で、未来の事は未来で考えよう。


 それはさておき、何故わざわざ僕らがダンジョンの入口近くいるのかというと、信長ローリーをダンジョンの外に連れ出す事は出来なかったからだ。

 迷宮氾濫デスパレードの時は魔物や【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】が外に出て来たけど、そういう特別な時でない限りはダンジョンの外に出ようとしても見えない壁があるかのように出てこれなかった。


 まあ信長ローリーはそんな事どうでもいいと言わんばかりに寝てばかりいたけどね。

 ただ、今は起きているのだけど――


『寝そべりながらコーラーとポテチに漫画は最高の怠惰~』

「起きたと思ったら毎日が休日みたいな人間みたいな事言って、僕らの前でくつろぐのは止めてくれません?」


 信長ローリーの姿を見ていると、“怠惰”ってただ寝るだけじゃないんだなってのがよく分かるよ。

 ただそんな事よりも目の前でぐうたらしているのを見せられるのはなんとなく腹立つ。

 それが僕らがここに居なければいけない原因なのだから尚更だ。


「その人に何を言っても無駄じゃない? 蒼汰しかまともに話しかけられないけど、話しかけても全然答えようとせずに漫画を読み続けてるし」

「冬乃の言う通りなんだけど、見てて腹が立つし」

「咲夜達は手出しする気になれないから、正直あまり気にならないけど、ね」

「気にするだけ無駄ですよ。それよりも今後の事ですよね」


 信長ローリーの言った事が本当であるのならば3日後に3人の武将が復活してくることはないので、矢沢さんが再びスキルを使用可能になってから再攻略する事になるだろうとみんなで話していた時だった。


「ちょっといいでしょうか?」


 そう言って僕らに話しかけてきたのは、前にも話しかけてきた片瀬さんの監視をしている女性警官だった。


「ダンジョンから戻って来たばかりで申し訳ありませんが、また片瀬がと話がしたいと言っていまして……」


 若干言い淀みながら警官の人が言ってきた。


「いいんじゃないですか?」

「そうだよね。以前と違い理性的だし、何よりあんな目に遭ってまで矢沢さんを守ってくれてたんだから」


 乃亜に追随するように肯定し、警官の人にそう伝えると片瀬さんが再び手錠をした状態で僕らの前に連れて来られた。

 そして警官が静止する間もなく、僕を抱きしめ頭を撫で始めた。


「ああ、無事で良かったわ。私の赤ちゃん……!」

「戻ってる!? 狂気が戻ってるよ!!」


 警官の人達が慌てて片瀬さんを引きはがすと、若干闇堕ちしかけていた目が理性的な目に戻っていた。


「すぅー、はぁー。ごめんなさい。つい感情が高ぶってしまって」


 感情が高ぶると人を赤ちゃん扱いするとか、かなりやべーっすよ。


 まあそれはともかく、片瀬さんが頑張ってくれたから矢沢さんに何事もなかったんだしお礼をしないとね。


「大怪我を負っても、矢沢さんを守る為に動いていただきありがとうございます」

「いいのよ。私の赤ちゃんが無事で戻ってくるためなら、どんな苦労も厭わないわ」


 私の赤ちゃんのところで、僕を凝視してくるのは止めてください。

 僕の生産元はけしてあなたではありませんよ?


 片瀬さんは言葉の端々に僕を自身の赤ちゃんだというセリフを交えた普通の会話をした後去っていった。

 ……普通とは?




―――――――――――――――――

・あとがき

休日出勤は悪しき文明。

残念ながら全く書き進めれてないので、今週は火曜日だけになるかと思います。

……ちくしょう(´;ω;`)

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