第5話 [放置菜園]
「ふぁ~あ……[放置菜園]」
僕は自室のベットで寝ていた体を起こすと、スマホアプリのゲームでよく聞く放置系ゲームのタイトルみたいなスキルを起動させる。
「なんで僕のスキルは直接戦闘で使えないのばかりなんだろうか?」
昨日の2人の活躍を思い出し、自分は一切戦闘で関われなかったことに若干落ち込みつつ、手元に現れたスマホの画面を見る。
【
いやだって菜園って時点でもう期待感0だよ。
――ピロン 『プレゼントが届きました』
「今日も初級肥料か。1か月連続ログインボーナスみたいなのないのかな?」
まだ1か月経ってないから分からないけど、いずれそういうのを期待したいところだ。
この[放置菜園]は単純に言えば作物を育てるアプリゲームで、同じ派生スキル[フレンドガチャ]から出てくる〔成長の種〕を育てられ、より上の育成アイテムにすることが出来るものだ。
てっきり〔成長の
〔成長の種〕は1人30個までしか使えないので、このスキルで上位の育成アイテムが手に入るのはありがたい。自分には使えないけどねっ!
さて、そんないつものことはさておき、今日の分やっておかないと。
[放置菜園]で現れたスマホ画面を覗くとそこには畑だけが存在しており、下の方に〈肥料をまく〉〈種を蒔く〉〈水をやる〉〈収穫〉の4項目がある。
・〈肥料をまく〉:種の育成を早める
・〈種を蒔く〉 :〔成長の種〕を蒔く
・〈水をやる〉 :種の育成を早める
・〈収穫〉 :育成の終わった〔成長の苗〕を収穫する
凄まじくシンプルな内容だ。
こんなアプリがあったら間違いなくクソゲー認定されること間違いなしだね。
まあつまらない内容だけど、得られる収穫物は見逃せないのでやるんだけどね。
このスキル……いや、もはやゲームは最悪〈種を蒔く〉さえしておけば、時間が経ったら〈収穫〉で〔成長の苗〕を獲得できるのだけど、〈肥料をまく〉と〈水をやる〉ことで育成にかかる時間を短縮できる。
ただし肥料は今のところログインボーナスでしか獲得できないし(しかも初級のみ)、〈水をやる〉は回数制限があるのだけど。
まあこれらをやらないと1日1回しか収穫できず、キチンと手入れすると時短になって2回収穫できるようになる。
画面に映る畑に一度に植えられる〔成長の種〕は3個だけなので、〔成長の苗〕を日に6個手に入れるには完全には放置できないのだ。
スキルの名前、おかしくないかな?
放置できないのに放置ってどういうこと?
それに変わっているのは〔成長の苗〕より上の育成アイテムにはならないということ。
画面に映る〔成長の苗〕をタップすると『これ以上成長できないようだ』とコメントが出てくるので、仕方なく収穫している。
5分程度の作業なので、朝と夕方にやるのを忘れないようにすればそれほど苦ではない作業ではあるけど。
――ピンポーン
[放置菜園]に加え、普通のアプリゲーのログインなどの作業に没頭していると、インターホンが鳴った。
はて、誰が来たのだろうか?
――ガチャ
「先輩、おはようございます!」
「……おはよう。なんでここに? いや、そもそも
僕は乃亜を自分の住んでるマンションに連れて来たことなんてないし、教えたこともない。
「先輩の友達に教えていただきましたよ」
「誰が――彰人か」
誰が教えたんだと、条件反射で口から出ている途中で分かったわ。
人の了承を得ずに、害はないだろうし面白そうだからコッソリ教えちゃえ、って考え方をするやつだから間違いない。
大樹なら複雑な気持ちを表情に出しながら、一度電話とかで連絡して了承を得てから教えるはずだし。
「先輩はもう朝ごはんは食べられました?」
「いや、まだだけど……」
「それは良かったです。色々作って持ってきましたので一緒に食べませんか?」
「まあせっかく作ってくれたし、部屋に上がりなよ」
う~ん、乃亜の行動力は凄いな、っと思いながら、いつまでも玄関前で話している訳にもいかず部屋へと招き入れる。
「一人暮らしの男の部屋に来ることに躊躇はなかったの?」
「まったく。万が一先輩が手を出してきても嫌なら[強性増幅]がありますし」
襲われるほど強くなるって、すごいスキルだよ。
「まあ先輩のことは好きなので、責任さえ取っていただければそれでも……」
「まだ一月も経ってないのに展開が早い」
恋人でもないのにいきなり肉体関係で即結婚とか、展開が早すぎでしょ。
結婚する気はないから手なんて出さないけど。
「そう言えば乃亜のお父さんは朝早くから僕の家に行くことに何も言わなかったの?」
初めて会った時の様子を見る限りでは、乃亜の事をかなり大事にしてるみたいだし、ひと悶着あったんじゃないかな?
「何か言おうとしてましたけど、母達と姉達に強制的に黙らせられてましたね」
すでに女性陣は味方につけていると言うことですか?
「そんな事より早速食べませんか? 今日もダンジョンに行くんですから、しっかり栄養をつけないといけませんしね!」
僕は次に乃亜のお父さんに会った時面倒なことになりそうだと思ったけど、ひとまずそれは忘れ、乃亜が持ってきてくれた朝食をいただくことにした。
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