第6話 一目ぼれだった
「生徒会長さん、ですか」
「うん、そうだよ。校長に頼まれて君達を出迎えに来たんだけど……」
矢沢さんは周囲をキョロキョロと見回して、僕らに再び視線を向けてくる。
「あと4人来るはずなんだけどまだいないね?」
大樹と性癖三銃士も短期留学に来ることになったんだけど、大樹は他のパーティーメンバーと合流してから来ると言っていたので、まだここにはいない。
「う~ん、一緒に案内した方がいいだろうし、少し待ってようか」
「あ、はい」
そうして矢沢さんと共に校門前で待つこと数分、すぐに大樹達が現れた。
「わりぃ。こいつらと合流するのに手間取って、少し遅れちまったわ」
「いや、思ったよりすぐに来てくれたよ。それよりも、こちらがこの冒険者学校の生徒会長さんで僕らを案内してくれる矢沢恵さん」
「どうも初めまして」
「っ!? は、初めまして……」
大樹が矢沢さんに挨拶された時、一瞬体を硬直させたと思ったら、どもりながら挨拶を返していた。
この反応……。まさか惚れたのだろうか?
「60点なんだな」
「ケモ耳がないので評価外」
「どことなく包み込むような姉属性……85点」
おい、なんの評価をしているんだ。
さすがに初対面でそれは失礼でしょ。
「随分個性的な子たちが来ちゃったな……。あの校長、実力主義だから性格は二の次なんだよね」
なんか自分が悪いわけでもないのに、同行者なだけなのに申し訳なく感じてしまう。
「まあいいや。それじゃあ全員揃ったようだし、早速――」
「あら~ん、恵ったらいくら生徒会長だからって1人で案内をすることないんじゃない? あたしだって生徒会の一員なんだから、言ってくれれば手伝うのよ?」
「うおっ!?」
矢沢さんの後ろから突然現れたのは、女子の制服を着た何かだった。
うん、ホント何かと言いたくなる人物なんだよ。
見たままを言うなら女子の制服を着た巨漢だね。
頭はサラッサラのロングヘアーをなびかせていて、髪だけは高嶺の花を思わせるような美しさだけど、顔は彫りの深い引き締まった男の人にしか見えず、女子の制服が凄まじく似合っていない。
顔だけを見ればイケメンなのに、何と言うか色々残念な人が現れたものだ。
「いや、わざわざケイ達の手を借りなくても、案内ぐらいなら自分1人で十分だと思ったんだよ」
「もう、恵はそうやっていつも1人でなんとかしようとするんだから、素直にあたし達を頼りなさいな」
「いつもみんなに頼ってばかりだから、このぐらいはって思ったんだけど……」
「むしろあたし達が恵に助けられてばかりなんだけどねぇん」
そう言いながら、女子の制服を着た巨漢の人物は困り顔で手を顔の横に当てて首を傾げていた。
この2人のやり取りから、彼女(?)らは同じ生徒会の仲間、というか親しい間柄なのかな?
そんな僕らの視線に気が付いたのか、ハッとした表情で矢沢さんがこちらに視線を向ける。
「あ、ごめんね。自分達だけで話してて。こちら
「うふ~ん、よろしくね」
「えっと、よろしく……」
今、きょうのって言いかけたし、絶対本名ケイじゃないよね。
「キャラが濃いんだな」
「ここは魔境か?」
「背後には注意しておきたいです」
人の事言えないでしょ、君達。
「あの~」
「ん、なんだい?」
「1つ聞いてもいいですか?」
「1つと言わず、何でも遠慮なく聞いてくれていいんだよ?」
「それではお言葉に甘えて遠慮なく質問させていただきますが、ここでは男の人も全員女子の制服を着ないといけないんでしょうか?」
とんでもない質問をするね。
和泉さんを見た後だと、思わず聞きたくなる質問かもしれないけど。
そんな乃亜のとんでもな質問に慌てたように、矢沢さんが首を横に振って否定していた。
「いやいや、そんな事はないよ。強いて言うならどっちを着てもいいってだけだよ」
「あ、そうなんですね。
………ん?
「お二方?」
「蒼汰は気づかないの?」
「何が?」
「矢沢さんも和泉さんもどちらも男性なのよ」
「「「「「えっ!?」」」」」
冬乃の発言に僕ら男5人は慌てて矢沢さんへと視線を集中させる。
和泉さんは見た目通りだけど、矢沢さんもなの!?
「あはは……」
僕らの視線を一身に受けている矢沢さんは、恥ずかしそうに笑っているけど否定はしなかった。
マジか……。
「一目ぼれだったのに……」
やっぱりか。ドンマイ、大樹。
「えっと、言いにくいようでしたら構わないんですが、どうしてお二人は女子の制服を?」
「あたし
納得の理由。
言葉遣いや仕草からそれがハッキリと出てるから、和泉さんに関してはまあそうだろうとしか思わないけど、あたし“は”?
「でも恵はあたしとは違うわ。着たくないのに着なくちゃいけないのよ。好きなものが着れないって大変よね」
ん? どういう意味なんだろうか?
全員が首を傾げて矢沢さんの方へと視線を向けると、矢沢さんは少し困った表情をして人差し指で頬をかきながらゆっくりと口を開いた。
「実は自分、デメリットスキル持ちなんだ」
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