第38話 シスコン

 

 日曜日も順調にレベル上げをすることが出来た上に、1つだけ魔道具を手に入れる事が出来た。

 もっともその魔道具は僕らには不要な代物だったため、智弘デッキさん達にいるか聞いて買い取ってもらったのだけど。


 膝をサポートして関節痛を感じなくさせる魔道具とか、何十年後に必要になるんだよ。


 宝箱から魔道具が出て喜んだのに、効果を知って凄まじくガックリきたよ。


「おはようございます」


 月曜は恒例の挨拶運動を校舎前でこなす。

 その時ついでに箱を用意して、〔ミミックのダンジョン〕でだけ得られる謎の石、白いのと黒いのの回収も行う。


 この学校の生徒の大半が〔マジックポーチ〕持ちなので対して手間でもないのか結構持って帰って来てくれている人が多いのはありがたい。

 だけど前もって100円や1000円を大量に用意したのはいいけど、次から次へと生徒が登校してくるので1人では数を数えてお金を渡していくのは大変だと思っていた時だった。


「手伝おうか?」

「あ、ありがとうございます?」


 手を貸してくれると言うので反射的にお礼を言ってしまったけど、その男達は見ず知らずの人で、正直誰? って気持ちでいっぱいだった。


「君にはうちのパーティーメンバーが迷惑をかけているからね。止めてはやれないが、せめてもの罪滅ぼしに手伝わせてくれ」


 そう言ってすぐに3人の男達は行動し始める。

 テキパキと石を数えて、箱へと仕舞うのと同時にその数を教えてくれるので、お金を渡すだけで済むから楽になったんだけど、そんな事よりも罪滅ぼしってどういう事?


「先日からずっと君に付きまとっている男がいるだろ? あれは俺達のパーティーメンバーだ」

「あ、じゃああなた達が穂玖斗さんのパーティーメンバーでしたか」


 ……そう言えばふと疑問に思ったんだけど、何でパーティーメンバーは穂玖斗さんを止めないの?

 いきなりパーティーメンバーが1人抜ければダンジョンの探索に支障が出ると思うんだけど。

 土日にも現れてたけど、普通そんな勝手な行動許さないで、ダンジョンに引っ張っていくんじゃないだろうか?


 僕のその考えが顔に出ていたのか、3人は苦笑して少し申し訳なさそうな表情になる。


「穂玖斗が急に俺らと離れて単独行動しているのには、確かに困っているんだ。だけど俺達にはあいつを止められない理由があるんだ」


 何やら重々しく語りだしたけど、もしかして弱みでも握られているのだろうか?


「「「俺達全員シスコンだから、あいつの気持ちが分かるんだ」」」

「おい」


 校舎前でしかも初対面の人間相手に、なにカミングアウトしてるんだよ。


「君には本当にすまないと思っている。だがもしも俺の妹に悪い虫がたかったらと思うと、どうしてもあいつの行動を止めることが出来ないんだ!」


 残り2人も強く頷いて賛同している。

 うん、こいつら当てにならないな。


 まあ昨日、穂香さんが穂玖斗さんを説教していたから、少しはマシになるだろうけど。


 道理で穂玖斗さんが好き勝手出来た訳だと納得しながら、挨拶と石の買い取りをホームルーム直前まで行った。


 ◆


「今日は校長から話があるから、全員テレビを見ろ」


 朝のホームルームが始まるとすぐに、教室に入ってきた先生がテレビに注目するよう指示をしてきた。

 先生がテレビの電源を入れると、緑色の背景が映っているだけだったけど、しばらくすると校長が現れて挨拶を始めた。


『生徒の諸君おはよう! 今日わざわざこの様な形で連絡する事になったのは、2つ、諸君らに重要な知らせがあるからだ』


 初めて会った時と変わらず、アメコミみたいな濃い見た目の校長だ。

 そんな見た目脳筋みたいな校長が重要な知らせとは、一体何だろうか?


『まず1つ目だが、今週の水曜から金曜日までの3日間を利用してダンジョン遠征を行う。これについては前々から通達していたから、みな知っているだろう。

 一応希望者のみが参加となるため無理強いはしないが、普段行くことが出来ないダンジョンの深層は諸君らにいい経験になるだろうから、参加する事をおススメしておく』


 ダンジョン遠征に関しては招待を受けた時に聞いているので、その準備はすでにしてきている。

 〔マジックポーチ〕にテントなどのアウトドアグッズと、3日分の水と食料を突っ込んできてるだけだけど。

 水と食料を余分に持ってきてはいないけど、[フレンドガチャ]である程度の物資が出せるし問題ない。


 〔ミミックのダンジョン〕とはいえ20階層より下はミミックが徘徊してるので、どれくらい下まで目指すかは不明だけど、きっと今までにない経験が出来るに違いない。

 ……まあそんな経験よりも、レベルがサクサク上がって[ソシャゲ・無課金]が変質し、課金出来るようになるのが一番いいのだけど。


『次に2つ目だが、本日の放課後に訓練所のシミュレーターを起動させる』


 おっ! 初日に学校の案内をしてもらった時に聞いていたやつだね。


『もしも使用したい者がいれば1時間目の授業が始まる前に担任の教師に申し入れてくれ。定員をオーバーした場合は申し訳ないが抽選で決めさせてもらう。

 今回は留学生優先で使用するため、残りの枠は少ないからあまり期待しない様に。以上だ』


 僕らは確実にシミュレーターを使う事が出来るらしい。

 様々な魔物を見る事が出来るらしいけど、どんな魔物を見られるか今から楽しみだね。

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