第39話 シミュレーター
教室内にいた生徒の内、数人しかシミュレーター使用の申し出をしていなかったのが意外だった。
思わず近くにいた男子に話を聞いてみると――
「ああ。シミュレーターは何度も使用しているし、今回は定員も少ないからいいかな、って。
それよりも水曜からダンジョンの遠征があるから、そっちの準備に力をいれたいんだ」
納得の理由。
年に何度も使用できるシミュレーターよりも、ダンジョンの遠征は長期休み前にしかやらないため、年2回しかない事を考えると、そちらを優先するのは当然かもしれない。
だからこそ留学生がシミュレーターを優先して使う事になると話があっても、誰も不平を漏らさなかったのだろう。
「わたし達にとっては都合がよかったですね」
「あの校長、それを見越してこのタイミングでシミュレーターを使えるようにしたんでしょうね」
「あの見た目でちゃんと考えているなんて、ね」
咲夜の気持ちは分かるよ。見た目脳筋だし。
でも、周囲がフォローした結果、このタイミングの可能性の方がある気がする。
あの見た目で細やかなところに気が付くとか、ギャップがありすぎるよ。
校長のことはともかくとして、せっかく使用できるシミュレーターに思いをはせ、少しワクワクしながら僕らは放課後になるのを待った。
1つのダンジョンに同じ種類の魔物しか出ないので、片手で数える程度の種類しか見た事ないのもあり、色々な魔物を見る事が出来るのは非常に楽しみだ。
今後訪れる可能性のあるダンジョンの魔物と戦う事が出来れば、前もってその魔物について体感することが出来るし、逆に訪れる事がほぼないダンジョンの魔物を他の人が戦ってるところであっても、見てるだけで面白そうだね。
『シミュレーターを使用する事になった生徒と留学生は、動きやすい服装に着替えて速やかに訓練所前に集まってください。繰り返します――』
放課後になった途端、放送で連絡があったので、早速僕らは準備をして訓練所へと移動した。
全員がテキパキと行動したのか、すぐに使用予定の人間が集まったようで、校長がマイクを持って僕らの前に立って話し出した。
『冒険者には迅速な行動が求められる時が多々ある。諸君らが常日頃から迅速な行動を心掛けることで、咄嗟の時にも素早く動くことが出来るだろう。
それはさておき、早速シミュレーターを使用していこうか。まずは在校生から先に使用していき、留学生はどのようにしてシミュレーターを使うのかを学んで欲しい』
そう言って校長は先導するように中に入っていったので、僕らもそれについていく。
校長に連れてこられた先は観客席で、一部の生徒が僕らが模擬戦で使用したステージの近くに立っていた。
よく見るとそこには教卓のような台が設置されており、そこに何かの画面が映っているのか、生徒がそれを操作している様子が見えた。
『近くに教員がいるから、操作が分からなければ彼に聞いてくれればいいが、あの端末で出現させる魔物の種類と数を選択できる。
とはいえ何でも出現させられるわけではなく、大型の魔物であれば基本的に1体だけだし、複数呼び出せると言っても、あくまで同じ種類の魔物だけだ』
そうなってくると、僕らが相対した事がある敵でいうと、ラミアクイーンみたいな大きな魔物は1体しか出せないし、ゴブリンとスケルトンが混ざった集団を相手に戦う事は出来ないのか。
まあラミアクイーンはともかく、ここでゴブリンとスケルトンみたいな敵と同時に戦う意味はないから、別に構わないのだけど。
「あ、早速何かが召喚されたね」
「ホントですね。あれは……オーガでしょうか?」
舞台の上に現れたのははち切れんばかりの筋肉を携え、頭に大きな角が二本生えた半裸の大男だった。
「日本のどこかに〔オーガのダンジョン〕があったわよね? 確かBランクだったかしら?」
「それじゃああの人達はBランクダンジョンに潜るための予行演習として、オーガと戦う事を選んだのかな?」
「咲夜達も次を見越して、Cランクダンジョンの魔物に挑戦、する?」
僕らはシミュレーターを初めて見るので、具体的にどんな風に使用するのか想定していなかった事もあって、どんな魔物と戦うのか決めていなかった。
校長も僕ら留学生の様子を見て、在校生が戦う様子を見て何と戦うかを選べばいいと言っているが、果たして何と戦うべきか。
『そうだ。1つ言い忘れていたが、残念ながらこのシミュレーターでは【
まあここで【
同じ相手なら確かに楽だろうな。
初めて戦った泉の女神の【
……そしてまた固形墨が報酬の【典正装備】として出てくるんだろうか。
それはともかく、さて僕らはどんな魔物と戦おうか。
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