第40話 何と戦おうか?

 

 在校生が様々な魔物と戦っていく中、僕らは悩んでいた。


 僕らは現在Dランクの〔ラミアのダンジョン〕に潜っているので、その次のCランクダンジョンの魔物のどれか選択するのがいいか、それともさらに先を見据えてBランクに挑戦するか。

 この訓練所では舞台の外に出れば怪我とかは無かったことに出来るので、思い切ってより格上の魔物と対峙してみるのはいい経験になると思うのだけど、さすがに先を見据えすぎな気もする。


 1度きりのチャレンジと考えると、一体何と戦えばいいのか中々決められそうにないな。


『何と戦おうか迷っている留学生が大勢のようだが、そこまで悩むのであれば、いっそ自分達では到底かなわない相手と戦うのも一興だぞ?』


 それはどういう事だろうか?


『Sランクダンジョン最難関、ろくにダンジョン内に潜る事が出来ない難攻不落の〔ドラゴンのダンジョン〕の魔物にチャレンジしてみないか?』


 〔ドラゴンのダンジョン〕!?


 イギリスにある〔ドラゴンのダンジョン〕はSランクダンジョンの中でもっとも攻略が難しいダンジョンと言われている。

 日本にあるSランクダンジョンだと〔スケルトンのダンジョン〕だけど、〔スケルトンのダンジョン〕が量だとすれば〔ドラゴンのダンジョン〕は質が凄い。

 なんせ、徘徊している魔物が全てドラゴンなのだ。


 他のダンジョンのようにエンカウント率は限りなく低いけど、遭遇すればAランクのボス相当の相手と戦う事になる。

 低い階層ですらそれなのだから、深い階層ならどれだけ強力な魔物と相対する事になるのやら。


 ただ、幸いなのが〔スケルトンのダンジョン〕と違って、〔ドラゴンのダンジョン〕は年に1回迷宮氾濫デスパレードが起こるような悲惨な事はないという点だろうか。


 〔スケルトンのダンジョン〕が年1で迷宮氾濫デスパレードが起こるのは、魔物が生みだされる量が多く、間引くのが間に合わないためダンジョンから溢れ出てしまう。

 ところが〔ドラゴンのダンジョン〕は生み出されるペースが遅いため、低い階層である程度間引くだけで迷宮氾濫デスパレードが発生することはないのだ。


 もしもそうでなかったら、間違いなくイギリスという国は誰も住めない国になっていたことだろう。


 それはともかく、ドラゴンを相手に戦うかどうかか……。

 僕はどうしたものかと悩んでいたら、近くにいた智弘デッキさんがニヤリと不敵に笑っていた。


「面白い。ボクらは〔ドラゴンのダンジョン〕に潜る予定はないが、【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】もそれくらい理不尽な敵だと聞く。今のボクらがどれくらいドラゴン相手に通じるか試してみようじゃないか」


 いや、ダンジョンのランクによって【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】の強さが変わるから、ドラゴンほど理不尽じゃないんじゃないかな?

 能力はマジで理不尽だったけど。


「難易度の高いダンジョンを踏破出来れば間違いなくモテる! 世界中を回って理想のハーレムを作るんだったら、ドラゴンくらい倒せねえとな」


 大樹は正気なのかな?

 性癖三銃士もウンウンと頷いているけど、マジで挑戦する気なのか。


「わたし達はBランクのダンジョンの魔物にしておきませんか? 〔ミミックのダンジョン〕でレベルがいくら上げやすいからといって、いくらダンジョン遠征に行っても、Bランクダンジョンに挑めるほどレベルが上がるとは思えませんから、その辺りが妥当だと思います」

「そうね。Bランクダンジョンに挑めるとしたら大分先の話でしょうけど、目標にするラインなら丁度いいわ」

「咲夜もそれがいいと思う」


 乃亜達は非常に現実的である。

 男は夢を見て、女は現実を見るのはよくある事なのかもしれない。

 僕はガチャがしたいだけなので、強い魔物と戦う事に興味はないけど。


「じゃあ僕らはBランクのダンジョンの魔物にしようか」


 僕らが住んでる場所の近くにあるBランクのダンジョンって、どんなダンジョンがあったかな?


「でしたら〔カラーベアーのダンジョン〕が今住んでいる場所から近いので、その魔物にしましょうか」

「カラーベアー?」


 微妙に名前が可愛らしいけど、どんな魔物なんだ?


「〔カラーベアーのダンジョン〕は色々な色の熊が現れるダンジョンで、色によって能力が異なる魔物が出てくるらしいですよ」

「へー、そうなのね。私も知らなかったわ」

「咲夜も初めて知った」


 さすが乃亜は親が冒険者なだけあって、そういう情報も詳しいね。


「それじゃあ僕らが戦う相手はカラーベアーにしようか。色は選べるのかな?」


 何色がどんな能力を持ってるのか知らないけど。


「乃亜ちゃん。ちなみにボスは何色なの?」

「完全にランダムらしいですね。ですから何色であっても、いい経験になると思いますよ」


 そういう事なら出たとこ勝負でいいかな。

 一応戦う前に何色がどんな能力かは乃亜に聞いておこう。


 僕はそう思いながら目の前で始まる、無謀な挑戦に目を向けた。


 Aランクダンジョンのボスに匹敵するという、ドラゴンと相対しようとしている2つのパーティーへと。

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