第41話 無謀だったね
結論から言おう。
「無謀だったね」
目の前で行われた戦闘は、戦闘というにはあまりにも酷すぎて目も当てられなかった。
「どんだけ攻撃しても傷どころか、微動だにさせることも出来ねえ!?」
「石の礫を目にぶつけてるのに瞬き1つしないとか、おいらの攻撃は目薬以下なんだな!?」
「くっ、逆鱗さえ見つけられれば……!」
「下手に攻撃しても、逆に武器の方が壊れますね」
大樹達のパーティーは微動だにしていないドラゴン相手にすら何もできず、敵とすら認識されてないのか、煩わしそうに尻尾で適当に振り払われて全員まとめて舞台の外へと追い出されてしまった。
Aランクのボス相当って話だけど、敵の強さがえげつないよ。
こちらは攻撃してるつもりでも、向こうからしたら紙切れをペチペチと当てられたくらいにしか感じてないんじゃないかな?
ドラゴンがあまりにも強く、大樹達が手も足も出なかったせいか、ドラゴンに挑戦しようとしていた他の留学生、32人中28人は軒並み別の魔物に変更していた。
残りの4人、
大樹達の戦いの様子を見たから、もう誰もドラゴンに挑もうとしないと思ったけど、まさか挑戦するなんて。
何か勝算があるのかな?
結論から言おう。
「無謀だったね」
やはり無謀だったと言わざるを得なかった。
「馬鹿な……。[ディヴィニティーケルビム]をブレスで相殺された……?」
「ボーっとしてる場合じゃないでさぁ! 相手さん、リーダーの攻撃であっしらを敵認定してきたでやんすよ!」
「[城壁生成]、………!?」
「省吾殿の城壁がいとも簡単に壊されたでござる!?」
何とか立て直そうと、
「さすがAランクのボス相当なだけあって、滅茶苦茶強かったね」
「あんなのに太刀打ち出来る未来が想像できませんね」
「まあダンジョンの場所がイギリスだから、自分達からそこに行かない限りドラゴンと戦う事なんてまずないから大丈夫でしょうけど」
「咲夜の〝神撃〟でも多分倒せそうにない、かな」
僕らは
「あれがAランクのボスと同等の戦闘力だと考えると、Aランクのダンジョンに行けるようになるのは大分先の話かな」
「ですね。とりあえず今日のところは、自分達がBランクの魔物相手にどれだけ通用するか試しましょう」
僕らがシミュレーターを使う番になったので、早速先ほど決めた魔物、カラーベアーを選択して舞台へと上がる。
舞台上に光の粒が集まっていき、徐々に輪郭を形成し始める。
輪郭が完全に熊と分かると思った時光は散り、そこから現れたのは
「……普通の熊では?」
「茶色いカラーベアーなので、ブラウニーベアーと呼ばれる種類の魔物なんでしょうけど、どこからどう見ても普通の熊にしか見えませんね」
「ウガーーー!!」
普通の熊と言ったのが気に障ったのか、ブラウニーベアーが前足でバンバンと地面を叩いて怒っている。
「普通の熊と思われたくないんでしょうけど、魔物と対峙してる気分にはならないわね」
「かわいい」
「ガーー!」
山から人里に降りてきた熊とさして変わらない風貌のせいで、僕らは若干戦意が低下していたけど、ブラウニーベアーが咆哮を上げて襲ってきたので、すぐさま迎え撃つことにした。
◆
倒れたブラウニーベアーが、ダンジョンで魔物を倒した時と同じように光の粒子になって散っていったけど、それに喜んでいる余裕も無いほど僕らは疲弊し、舞台の上で膝をついて息を荒げていた。
「つ、強すぎない?」
「Bランクの普通に徘徊してる魔物でこの強さですか……」
「ドラゴンみたいに全く攻撃が通じないわけじゃなかったけど、攻撃が通りにくかったわね」
「疲れた……」
僕らはブラウニーベアーを相手に何とか辛勝した。
いくら咲夜の〝神撃〟や〝臨界〟は使わずに辛うじて勝てたとはいえ、手放しには喜べない。
「僕らがBランクのダンジョンに潜るのは到底早い、って事だけは分かったよ」
「ホントね。行くにしても、〔ミミックのダンジョン〕以外のCランクのダンジョンで腕試ししてからじゃないと危険だわ」
冬乃の言う通りだね。
〔ミミックのダンジョン〕が占有ダンジョンなだけあって、Cランクダンジョンでありながら、上層はDランク程度の難易度でしかないので、他のCランクと一緒にしてはいけないし。
「わたし達が前まで潜っていた、Dランクの〔ラミアのダンジョン〕から上のランクのダンジョンに行けるかは、遠征でどれだけレベルを上げられるか次第ですよね」
舞台の外に出た僕らは明後日のダンジョン遠征に思いをはせながら、先ほどの戦闘の反省会をした後、今日もダンジョンへレベルを上げに行くことにした。
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