第49話 葛藤はしていた

 

≪蒼汰SIDE≫


 正直葛藤はあった。

 ここで使ってもいいのか。まだ使うべき時ではないのではないのだろうかと。


 だけど命あっての物種と言うし、何より死んでしまってはトータル的にはガチャをやる回数は少なくなってしまう。

 だからあの判断は正しかったんだ。


 ……さらばメダル5000枚。


 [カジノ]でどんな景品があるのかを見ていたので、[成長の花]が景品にあることは知っていた。

 咲夜がメダル5000枚近く手に入れてくれた時は[成長の花]を交換することを一瞬だけ頭によぎって、その思考をすぐにゴミ箱にぶち込みガチャの為のメダルだと思っただけに、葛藤してしまったのはしょうがないと思う。


 [成長の種]が30個、[成長の苗]が40個だったから、[成長の花]は50個だろうとは思っていたけど、出来れば40個で打ち止めになってくれないかなと思ってしまった僕は悪くないと思う。

 ああ、メダルが183枚だけになって悲しい……。


 それはともかく今の現状だ。

 スケルトン達が謙信の〝金剛冥助〟で異常に硬くなっていて、乃亜はなんとか倒せるけど、冬乃は[狐火]や蹴りをメイド服を着た状態で食らわしても地面を転がさせることで精一杯だったので、こっちに吹き飛ばされた咲夜を見てすぐに装備変更してもいいかを尋ねた。


『メイド服を咲夜に――』

『早くやって!!』


 食い気味に返事されたけど、あくまで【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】が脅威だったからであって、そんなに着てるのが嫌だったからではないよね?


 メイド服を着た咲夜は[成長の花]のパワーアップの助けもあってか、謙信に対して果敢に攻撃をしかけているけど、先ほどのように軽くあしらわれている様子は多分ないからしばらくは大丈夫だろう。


 動きが早すぎて少し遠くで見てても、何やってるかほとんど分からないけど。

 パワーアップ前と今で速さが違うのかすら分からない僕にはあのステージはまだ早いよ。


 早く援軍が来てくれることを祈りながら、少しでもここを守るため僕らは奮戦した。

 と言っても倒せるのは乃亜だけで、他は時間稼ぎで地面に転がすしかできなかったけど。


 僕も大きいシャベルを振るって転ばすことくらいしか出来なかった。

 スケルトンが密集しすぎていて〔籠の中に囚われし焔ブレイズバスケット〕が使えなくなってしまったから、僕に出来ることはもう陰陽師リッチが来たら対処するか少しでも時間稼ぎを手伝うしか出来ない。

 せめて自分の身は自分で守らないと……!

 そう思いながら必死にシャベルを振るっている時だった。


「もう少し頑張れ! なんなら一番手前のバリケードまで避難してきてもいいそうだ。ただしそこの【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】も引き付けるのが条件だが」


 戻ってきた一柳さんケモナーがありがたいような困惑するようなことを言って来た。


「どう言う事だ!? なんであの化け物を一緒に引き連れて避難しないといけない?」

「単純な話、あの【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】がバリケードの扉を封鎖してもすぐに破られるだろうから、他のスケルトン相手に時間を稼ぐのに使えばいいそうだ」


 大樹が困惑気に問いかけると一柳さんケモナーが納得できる返事をしてきた。

 確かにあの謙信相手じゃ、扉が数秒もてばいい方だと思えてしまう。


「分かった。ならすぐに手前のバリケードまで避難するぞ」

「咲夜には僕の方から連絡するから」


 僕はそう言いながら〔絆の指輪〕を見せる。


「頼んだ」


 大樹にそう言われる前から既に〔絆の指輪〕を通して話してはいたけど。


『そんな訳で出来たら謙信を一番手前のバリケードまで誘導して欲しいんだけど出来る』

『やってみる』


 戦闘中にも拘らず、咲夜はすぐに返事をしてくれた。


 倒せないスケルトンを相手にし続けている現状はかなりキツイので、それが少しでも緩和してくれればありがたい。


 僕らは力を振り絞って出来るだけ多くのスケルトンを押し返すと、ダッシュでバリケードをくぐっていく。

 当然スケルトン達は僕らを追いかけるように侵入してくるけど、入口から少し離れたところで、僕らは再び迎撃をしようとした。


 ――ドンッ!


 僕らの近くにまるで重い物でも落としたかのような鈍い音が周囲に響き、土埃を上げる。


『んっ、入った』


 そこにいたのは咲夜でそれを追うようにバリケードをくぐる謙信が見えた。

 咲夜が単純に移動したのか、相手の攻撃を利用したかしてバリケードをくぐり、謙信がそれを追ってきたのかな?


 何がどうあれ、条件はそろった。

 そう思った時、一柳さんケモナーが空に赤色の煙を放ちながら飛んでいくロケット花火を射出した。


 ――ガガガガガッ


 バリケードの扉が閉まっていき、それに巻き込まれる形で何体かのスケルトンは挟まれて潰されていく。

 どうやら一柳さんケモナーが放ったロケット花火が合図となっていたんだろう。


『ふむ。分断されましたか』


 謙信はちょっと小雨でも降ってきたかのような軽い感じで閉まる扉を見ているけど、僕ら程度が相手だからかかなり余裕そうにしていた。


 バリケードの中にいる敵は目算で20体ほどであり、しかも普通のスケルトンしかいない為、さっきまで群がられていた時よりは楽になった。

 ただそれはあのバリケードの扉が壊されるまでの間だけだけど。


 今も扉からガンガン音がなっており、何時までもつかヒヤヒヤするよ。

 早く援軍が来てくれないと、本当にマズイよ。

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