第48話 これが正しいメダルの使い方


≪咲夜SIDE≫


『おやおや。私を止められるとお思いなのですか?』

「分からない。でも止めなくちゃいけない」

『ふふっ、いいですねその闘志。ですが私だけ止めても意味はありませんよ』


 どう言う事?


「なっ、こいつらすげぇ硬くなってやがる!?」


 蒼汰君の友達らしき人がスケルトンに攻撃をしかけて驚いていた。

 攻撃されたスケルトンは地面に倒れてはいるけど傷らしきものは一切なく、再び体を起こして立ち上がってきた。


 この人がさっき〝金剛冥助〟と言った直後にスケルトン達が薄く金色に発光したけど、もしかして防御力を上げる能力?


「あれじゃあ、いつまで経っても数が減らない……!」

『そうですね。あなたであれば倒すことも可能でしょうが――』


 謙信がその手に持つ槍で咲夜の体の中心めがけて刺してこようとしたので、咲夜は体を左半身だけ正面に向けるようにして避け、すぐに近づいて蹴りを放った。

 けれど謙信は予想していたのか、穏やかな笑みを浮かべたまま余裕で蹴りを躱されてしまった。


『私の相手をしなければいけないので、実行することは不可能ですね』

「……くっ!」


 援護に行きたくても、目の前の敵が邪魔でどうすればいいか困っていたら、友達と初めてお揃いの身に着けた物、〔絆の指輪〕を介して蒼汰君の声が聞こえてきた。


『咲夜は出来るだけそいつの足止めをして!』

『分かった』


 蒼汰君の指示に従って、咲夜はこいつだけに集中する!

 指示のお陰で迷わずに済むのはありがたい。


『冬乃と乃亜は他のスケルトン、特に通常の個体と違うのが咲夜に近づかないように援護を!』

『分かりました先輩』

『分かったわ。でも普通のスケルトンも数をドンドン減らしていくわよ。〈解放パージ〉!』


 冬乃ちゃんが【典正装備】で爆炎を飛ばしたけれど、スケルトン達は先ほどまで派手に吹き飛んで倒していたのに、今回はさっきまでの半分も倒せてなかった。


『嘘っ!? こいつら硬くなりすぎよ!』

『とにかく出来る限り減らしていこう』


 冬乃ちゃんと蒼汰君が【典正装備】でなんとか数を減らしているけど、先ほどよりも硬くなったせいでその数が思うように減らず、みんながスケルトン達に押されて徐々に後退させられた。


『あの武器は厄介ですが、近距離では巻き添えを食らうので使えない欠点がありますね。

 ふふっ、いつまで使えることやら』

「ならお前を先に倒して、こいつらの強化を解除させる」

『出来ないことは口にするものではありませんよ』


 咲夜は先ほどよりも大地を蹴る脚に力を込めてより速く動き、謙信に少しでもダメージが与えられるよう拳を振るう。


『先ほどよりも少しだけマシになりましたが、その程度ではダメですね』

「ちっ」


 さっきよりも速く動いてるのに易々避けられてしまった。

 だから咲夜は謙信の脚を中心に攻撃していき、少しでも機動力を下げようと試みた。


『ふぅ。その程度の小細工が利くわけがないでしょ』

「速い……」


 ほとんどの攻撃は避けられ、稀に当たってもまるで鋼鉄でも叩いてるかのようにビクともしない。


『期待外れですね。少しは楽しめるかと思ったのですが、そろそろお終いにしましょうか』


 謙信はそう言うや否や、槍がまるで分裂したかのような動きを見せ、咲夜の四肢を最後に薙ぎ払われて、蒼汰君たちのところまで吹き飛ばされた。


『おや?』


 だけど貫かれたはずの手足から血は出ず、シャツは袖が、ズボンは膝から下が防具ごと吹き飛ぶだけで少し体に痛みがあるだけですんだ咲夜はすぐに起き上がる。

 乃亜ちゃんのスキル、[損傷衣転]のお陰でこの程度で済んだけど、本来なら手足が千切れてもおかしくなかった。


 でも、一番の問題は咲夜の体を貫かれたことだ。

 ただのスケルトンなら咲夜の体に傷をつけることも出来ないのに、謙信はいとも簡単に傷つけてきた。


 どうしよう。このままじゃ……。


『不思議ですね。今確実に動けなくなるようにしたと思ったのですが、あなたの体に傷1つ付いていません。もしやまだまだ楽しめるのでは?』


 ニタリと笑いながら咲夜を謙信が見てくる。


 困った。どうすれば……。

 そう思った時だった。


『咲夜、これを使って!』


 蒼汰君がそう言った次の瞬間咲夜の体が、いや、服が輝き始めた。

 その光が全身へと広がってパッと光が散った時には、咲夜はいつの間にか丈の長い可愛いメイド服に着替えていた。


「お姉さんメイドっ!」


 何か聞こえたような?

 誰かが何かを叫んだようだけど、周囲のスケルトン達との戦闘音に紛れてしまった。


『あと〔成長の苗〕31個に加えて、[カジノ]のメダル5000枚を〔成長の花〕50個に交換して咲夜を全力で強化したから、体の感覚が少し変わったかもしれないけどなんとか慣れて!』

『分かった!』


 初日に蒼汰君が手に入れた不思議なスキルで、咲夜を緊急で強化してくれたみたい。


『おや、西洋の給仕服ですか。そこの狐娘きつねむすめが着ていましたが、戦の最中でその様な御洒落を楽しんでいる場合ですか?』

「そう思うなら勝手にそう思っていればいい」


 咲夜は全力で大地を蹴って、謙信に肉薄するとその拳を胴体めがけて殴りかかりにいった。


『むっ!』


 謙信はとっさに手に持つその槍で防いでしまったけど、さっきまで避けられていた時と違い避けさせずに防がせて後退させることが出来た。

 ……うん、この感覚なら充分動ける。


 咲夜は体の感覚をすぐに掴むと、謙信へと追撃をかけることにした。

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