第13話 試験(1)
「18番のパーティーは試験場へとお願いします」
しばらく待っていると、僕らの番がやってきた。
「それじゃあ
「うん、気を付けてね。……その、もしも怪我したら治してあげるから」
「ありがとうございます」
互いにどんな事が出来るかを教えあうほど仲の深まった
「先輩とわたしのスキルの組み合わせなら、滅多に怪我をすることはないと分かっているはずですが、ああして心配してくださるんですから意外といい人ですよね」
「それにしてもユニークスキルが治療系なら、私達を襲った時は素の力だけだったのよね。
もはや最初の出会いのインパクトが塗り替わり、凄い先輩だと思う程度に
「あれ? ダンジョンの中で試験をするんじゃないんですか?」
ユニークスキルやデメリットスキル持ちでなければ、レベルの低い人はダンジョン外ではスキルが使用できなくなる。
“
てっきり〔ラミアのダンジョン〕内で魔物と戦わされたりするのかと思っていたのだけど……。
「大丈夫だ。ここはもうダンジョン内だからな」
そう言ったのは、どこか神経質そうな研究者風の男の人だった。
「ダンジョン内に魔物が発生しない空間を作り、そこを訓練所として使用しているのがこの場所だ。
B~Dランクのダンジョンでならそういった空間が作れるのだが、詳しいことは自分で調べてみるといい」
「あ、はい……」
「それでは早速だが試験を開始する。準備が必要ならすぐに済ますといい」
「分かりました」
と言っても僕らは既にほとんどの準備が出来ているので、せいぜい
事前に[チーム編成]で衣装の登録は済ましてあるので、こんな所で全裸にする心配もない。
いざとなったら[フレンドガチャ]で毛布を取り出して隠してあげればいいだけだけど。
「準備出来ました」
「よろしい。では悔いのないよう、スキルを全力で行使して挑むといい。
それでは試験スタートだ」
円形状の会場の中央に太い白線が引かれているけど、試験官が宣言して指を鳴らすと同時に、僕らがいる場所から白線を挟んだ反対側で魔法陣が描かれ、そこから全長2メートルほどの人型のゴーレムが30体現れる。
「……ラミアじゃないんですね」
「それはダンジョンで出会ってくれ。あれはスキルで造り上げられたゴーレム達だ。試験はあれ全てを壊すことだな」
ちょっとだけリアルラミアを期待しただけに残念だ。
「前の受験者も似たようなことを言っていたな。下半身蛇でも上半身が裸の女性であれば興奮するのか?」
「先輩……」
「誤解だよ!?」
ただの興味本位だっただけなのに……。
「〔ラミアのダンジョン〕の上層だと上半身だけ人型で顔は蛇っぽいが、下に行くにつれて顔が人間に近づくから、このダンジョンの男性のリピーター率が高いんだよな」
「あんた、まさか……」
「違うからね!?」
ううっ、よくゲームとか漫画とかで出てくるラミアが、実物だとどんな感じか見たかっただけなのに……。
「貴様らがじゃれ合うのは勝手だが、試験はもう始まっているぞ」
試験官が指さす先にはこちらに向かってくるゴーレム達。
いや、あなたのせいで2人に非難するような目で見られたんですよ!?
「ちなみにあのゴーレム達がこの会場の中央に引いてある線を跨いだら不合格だからな」
「それを先に言ってくださいよ!!」
ゆっくりとだが確実にこちらに迫ってくるゴーレム達を見て、僕らは慌てて白線まで駆けて戦闘態勢に入った。
「つい最近大群と相手したばかりだから、あの程度なら……[狐火]!」
白波さんが早速[狐火]を放つけど、直撃を受けたゴーレムは少し焦げているだけで、その歩みは止まらなかった。
「うっわ、全然効いてないわね。やっぱりゴブリンとは違うか」
生物であれば怯むだろうけど、痛覚のない非生物には当然そんな感覚はないよね。
ゴーレムの厄介さを認識したところでゴーレム側も動いた。
一部のゴーレムがその歩みを止めると、背後に取り付いていた弓と矢を手に取り、こちらに構て来た。
「先輩たち、わたしの後ろに!」
乃亜がすぐさま前に出ると、大楯を構える。
「〈
放たれた十数本の矢の内、数本が大楯に飲まれるように吸収され、倍の威力で放たれていった。
「ほう、【
背後で試験官が呟く声が聞こえて来たけど、それを気にすることなく僕はすぐさまスキルで乃亜の大楯のコピーを呼び出した。
「矢はゴーレムに刺さりましたけど、致命傷には全然なりませんね」
「いつもみたいにはいかないみたいだね」
ゴブリンとゴーレムでは違い過ぎて、残念ながらこの程度の攻撃では通用しないようだ。
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