ああ、課金してぇーー!!!~課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる~
甘井雨玉
1章
プロローグ
「ガチャの時間だ」
僕はスマホのアップデートの終わったアプリを起動し、ガチャの画面を開く。
「ああ頼む、イベント特効の新キャラ出てきて!」
ガチャを回すために必要な石は既に課金して購入済みで準備は十分だ。
「前の正月イベントは他のゲームも重なったせいで1万しか課金できなかったけど、今回は5万フルで課金できたしきっと来るでしょ」
今月のアルバイト代全部ぶっこんでしまったせいで、今月もモヤシ生活だけど悔いはない。
「出るまで回せば最強説、行こう!」
僕は10連ガチャのボタンを連打し始めた。
「金回転キタ――(゜∀゜)――!! って☆4じゃん!」
「ぐっ、最低保証はキツイ!」
「うっ、イベント礼装ばっか出る……。お願い、せめてキャラ来てよ!!」
――ピロン 『スキルを習得しました』
「あっ、虹回転!!! これは勝っ――、ってすり抜けた!! ぬっ、ぐあああ……! 次だよ次!!」
「くうぅ、い、いやイベント礼装がここまで来てるなら流れは来てる。行ける、行けるはず!!」
そしてガチャ石が無くなるまで回した結果。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!! 爆死したあああぁぁ!!!」
欲しかったキャラが5万円分の石を使っても出なかったことがショック過ぎて膝から崩れ落ちてしまった。
しかもこのゲーム、天井がないからキャラ手に入らない……。
「い、いや、だ、大丈夫だ。ま、まだ後1万なら課金できるはず……」
色々生活費を切り詰めれば十分可能なはず。うん、たぶん。
「もし生活できなくなったらあの2人に土下座してお金借りよう」
前回、友人に土下座決めて金を借りた事があるので今回もその手でいこうと心に決める。
親に借りると言う選択肢はない。
だって次それやったら仕送り無くすって言われてるんだもん。
「キャリア決済は家で課金ができるから最高だね!」
僕は早速アプリから購入画面を押して石を購入しようとした。けど――
「あれ?」
何度購入しようとしてもエラー画面が出て来る。
今まで何度も繰り返し行ってきたことがいきなりできなくなって首をかしげてしまう。
「おかしいな、故障?」
スマホをいじってどこかおかしいところはないか調べてみたけど、今まで通り普通に動く。
課金しようとする以外は。
「えっ? ちょ、なんでだよ!?」
意味が分からず僕は困惑していた。
「ん~しゃあない、コンビニ行ってチュンカ(※プリペイドカード)買お」
しかし諦めるという選択肢はない。
ここで諦めれば今まで散ったのが無駄になる。
そう、あれらは全てこの1万で出すための尊い犠牲だったのだ。
コンビニまで歩いて行く時間、僕は頭の中でシミュレートし続けた。
特効キャラが出たらイベントをどう攻略していくか、経験値カードの消費や他のどのキャラと組み合わせると効率よく周回できるかも考えていたら、あっという間にコンビニにたどり着いた。
流れるような動作でチュンカ売り場へ行くと、僕はチュンカへと手を伸ばし――弾かれた。
……はい?
意味が分からない。
何が起こったのか分からず再びチュンカへと手を伸ばすが、見えない弾力性のクッションがあるのか、何故か弾かれてチュンカに触れられない。
無理矢理力を込めて手を伸ばすも、触れる直前で手が勢いよく弾かれてどうしても手に取ることが出来ない。
目の前にあるにも関わらず買えないだなんて。
地獄はここにあったのか……。
「すいません店員さんー」
諦める訳ないがな!
僕は課金すると決めてるんだよ!!
「どうしましたか?」
「すいません、チュンカを買いたいんですが何故かここに妙な物があって触れないんです」
「はい?」
「ほら」
そう言って僕はチュンカへと手を伸ばすも弾かれる様を見せる。
「? ちょっと失礼します」
店員はそう言って手を伸ばすとあっさりとチュンカを手に取った。
……え?
「えっと、取れましたけど……」
「あ、はい、じゃあそれを購入したいです」
「分かりました」
なんだろう。
1人でパントマイムして遊んでる奴みたいな目で見られてしまって滅茶苦茶恥ずかしい。
「いくら購入されますか?」
「1万でお願いします」
まあいいや。
購入できるなら何でも構わないし。
――ピッ、ブー
「あれ?」
――ピッ、ブー
「おかしい、何でだ?」
店員さんがチュンカのバーコードを読み取ろうとしているが、何故か機械からエラー音が響いていた。
「すいません、ちょっと別のに交換してきますね」
そう言って店員さんがいくつかのチュンカを持ってきてバーコードを通したが、どれもがエラーと出て読み取ることができない。
――ピロン
ん、なにこれ?
店員さんが四苦八苦しているところに、僕の目の前に半透明のボードが浮かび上がった。
それにはなにやら文字が書いてあったので、それに目を通し――
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
――ドサッ!
「お、お客様!?」
店員が慌ててレジから回り込んで倒れこんだ僕に近づき、他の周囲の客もどうしたのかと怪訝そうな目で見て来るが、そんなことが気にならないほどのショックを受けて床に倒れこんでしまう。
ぼ、僕の人生、終わった……。
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