第38話 [ゲームシステム・エロゲ]最終派生スキル

 

「た、耐えきった……!」

「いえ耐えきれてないですよ。片膝ついてるじゃないですか」


 乃亜にそうツッコまれてしまったけど、前は両膝どころか四つん這いになって地面に拳を叩きつけていた事を考えると、だいぶマシだよね?


「なんか蒼汰の一番の敵って蒼汰自身よね」

「冬乃に言われずともそれは自分が一番分かってる」


 初めて[動画視聴]のスキルを使った時は、赤ちゃんにされた時なみの衝撃だったよ。

 ちなみに一番ダメージを受けたのは当然[無課金]スキルを手に入れた時だ。

 やはり敵は自分自身――いや、[無課金]だね。


「さて、準備完了だし早速やろうか。乃亜はスキルの効果が切れたら退避しててね」

「分かっています。わたしの戦闘力の根幹は、認めたくはないですが[ゲームシステム・エロゲ]ですから。

 このスキルが使えなければこの大楯、〔報復は汝の後難と共にカウンター リベンジ〕を持つのも一苦労ですし、今使える他の【典正装備】も同様ですからね」


 デメリットスキルだけど成長すると意外と役に立つんだよなぁ。

 乃亜然り、遠くから聞こえてくる歌声の主である矢沢さん然りだ。

 ん? 僕はどうかって? デメリットの酷さにまるでメリットを感じませんねぇ。


「仕方がないとはいえこんな場所ですることに抵抗が無いとは言えないわね……」

「咲夜は気にならない、かな。他の人に見られたくないところは隠れるし」

「……ふんすー」

「それ、今回はワタシも参加できるのかな?」

「私は高宮達が戻ってくるまで待機だな」

『ワタシは取り残されないように一旦ご主人さまのスマホの中に戻っているのです』


 アヤメが僕のスマホの中に戻っていくけどそれはともかく、みんな多少の抵抗感があっても止める気がないのは【四天王】をどうにかしないといけないと思っているからでいいんだよね?

 というか、オリヴィアさんはともかく、抵抗感がある様子なのが冬乃だけで咲夜達がノリノリなのはどうなのよ?


 そう思わずにはいられなかったけど、ここまで来たら覚悟を決めるか。

 それにスキル発動後の戦闘の方が一大事なのだから気合を入れないと。


「それじゃあ先輩。いきます」

「よし、いいよ」


 乃亜が僕にそう声をかけてきたので、僕はそれに対し


「最終派生スキル[恋い慕うあなたを囲うハーレムエンド]!」


 乃亜がスキル名を唱えると、乃亜から光の塊が僕へと飛んでくる。

 その光が僕へとぶつかり僕の全身を薄ぼんやりと覆った後、


 そう。服が消えるのだ!


 下半身のみ強烈な発光をしているため、他の人に局部が見えたりお尻が丸見えになったりはしないのだけど、野外で全裸になっているよう――いや、なっているのが猛烈に恥ずかしくて仕方が無かった。


 ただ全裸なのではなく光で隠しているのだから余計に恥ずかしいよ……。


「このスキル、色々とおかしいんじゃないかしら?」


 その冬乃の発言には激しく同意する。

 しかしこれだけで終わるのであれば抵抗するのは僕1人だけだっただろう。


 僕を覆う薄い光がオリヴィアさんを除く乃亜達5人に光の線が伸びていく。


「やはり鹿島先輩への好意があるか無いかがそのスキルの対象の条件なのだな」


 オリヴィアさんはどこかホッとした様子でそう呟いていた。

 それはそうだろう。

 僕が光に覆われた後全裸になったということは――


「み、水着と同じと思ってもいくらなんでも限度があるわ!」


 当然冬乃達も僕と同じように服が消えるのは当たり前だった。


 最初このスキルを乃亜が使った時、この時点までだと何なんだこのスキルはと思ったものだよ。

 だけどこれだけでは終わらない。


 僕や乃亜達の服が消失した後、乃亜達が僕へと強制的に引き寄せられていく。全裸で。


 布一枚身に纏わず僕へと接近してくる乃亜達に対し、謎の力でその場から動くことができない僕はされるがままに乃亜達に四方八方から抱き着かれた。


「か、覚悟していたとはいえ、さすがにこれはわたしも恥ずかしいですね……」

「………っ!!」

「温かくていい、ね」

「……同意」

「前は見ているだけだったけど実際やると、もう色々とヤバイね」


 光で局部などが見えなくなっているだけであり、全裸でお互い抱き着いているのだ。

 ソフィの言う通り、もうヤバい以外言えないよ……。

 全員顔をほんのり赤くしてるし、冬乃なんか顔真っ赤にして何も言えなくなってるし。


 乃亜達の肌が僕に触れている事を意識しないよう、出来る限り反応しないように無心を心掛けるのだけで精一杯だった。


 たった数秒のはずがすごく長いひと時に感じられたけど、それもようやく終わりとなる。


 光は僕らを中心にドンドン強くなっていき、外からは僕らの姿を認識することなんてできないほどの光となった時だった。


「【青龍】を対象にします!」


 乃亜の宣言と共に僕らから光の筋が【青龍】へと伸び、【青龍】に触れた瞬間、僕らは自身の住む街並みが再現された空間へと【青龍】と共に移動していた。


 乃亜の最終派生スキル、[恋い慕うあなたを囲うハーレムエンド]は特殊な空間に僕らごと対象を閉じ込め、強制的に多対一に持ち込むことができるのだ。


 こうして僕らは【四天王】の【青龍】を乃亜のスキルによる結界に閉じ込めることに成功したんだけど、1つ言わせてもらいたい。


 このスキルを創ったバカなんじゃねえの!?

 裸で抱き着く過程必要ないでしょ!?


―――――――――――――――――――――

・あとがき

しばらく書かないと無性に書きたくなるから不思議。

まあそれはともかく……この程度の描写で注意されることないよね?

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