第37話 [動画視聴]
さてどうしようか。
片瀬さんの言う通り、この場は出来ることなら大人に任せて避難するべきなんだろう。
だけど残念ながら右手の勇者の証のせいで、それを選びづらくさせている。
【四天王】や【魔王】に対して特効効果がある勇者の証である紋章、それも金の紋章を僕が持っているせいで下手に逃げれば顰蹙を買うことになってしまう。
未成年だし、表立ってそれを言う人は少ないだろうけどさ。
ただまあそんなのはどうでもいい。
『パパ、ママ……』
それよりも暴れている【四天王】がアヤメの両親であることが問題だ。
いくら僕のスマホにいるクロとシロの一部――いやこの場合向こうが大本なんだろうけど、とにかくアヤメの生みの親と言えるのはスマホの中にいるクロとシロであり、あそこにいる2匹はそこまで関係が深いとは言えない。
でもクロとシロそのものとも言えるから関係がないとは言い切れないせいで、アヤメが複雑な表情で2匹のいる方を見ているからどうしたものかと思うんだよ。
「アヤメはどうしたい?」
だからもうストレートに聞く。
逃げるにしろ戦うにしろ、全員の意思は統一させないといけないからね。
『ご主人さま……。ワタシは……』
アヤメが答えに詰まっているのか、口をもごもごさせながら困った様子をみせていた。
だけど意を決したのか、今までで一番真剣な表情で僕を見てきた。
『お願いしますご主人さま! パパとママを助けてください!』
アヤメはその小さな頭を勢いよく下げてお願いしてきた。
「そっか~……」
そうなるとあの2匹は出来ることなら僕らで倒さないといけないだろう。
他の人が倒してしまった場合、いくら【
そうなってしまえばいくら親子関係を訴えたところで、簡単に会いに行くことはまず無理だ。
少なくとも僕らが倒して出来れば彼らを保護、少なくとも会いに行ける程度の権利は確保しないといけない。
問題は今も暴れているあの2匹を倒せるかだ。
現に果敢に挑んでいるベテランであろう冒険者の人達が何人もまとめて吹き飛んでいて、何人かは矢沢さんの[
僕が内心困りながらどうしたものかと思っていた時だった。
『課金は3カ月放棄するのです』
「任せろ」
何も迷うことはない。
あそこにいるのはアヤメの両親だから助けるのは当然だよね。
「先輩……」
「蒼汰、あんたって本当に課金に目がないわね」
「蒼汰君らしいよ、ね」
「……心の中で迷いが一瞬で無くなって面白かった」
「さっきソウタ達には協力してもらったし、ワタシは全然構わないさ」
「元より【四天王】とは戦うつもりで来ていたんだ。相手が大きくなったところで戦うことに変わりない」
全員から呆れたような目で見られているけど、乃亜達も戦う事に異論はない様子なので問題はないね。
「それじゃあ、どうやって【四天王】達を倒すか考えようか」
今も暴れている【四天王】達相手に、僕と同じ金色の紋章持ちである風間さんとそのパーティーがメインとなって大勢の人達が果敢に挑んでいる。
そこに割って入るのであれば、それなりに作戦がいるだろう。
「はい、先輩」
「何かアイディアがあるの乃亜?」
乃亜が挙手してきたのでそちらへと視線を向けると、どこか嬉しそうな表情をしていた。
何やら嫌な予感がするのは気のせいだろうか……。
「わたしの最終派生スキルを使って【四天王】達を分断させましょう。あの2人(?)と同時に戦うのはあそこで戦っている人達を見るに大変そうですし、1人ずつ相手にするのが得策だと思います」
「却下」
「何故ですか?!」
だって乃亜の最終派生スキルって、アレじゃん……。
この場面で有用なスキルであることは認めるよ。
だけど出来れば人前で使いたくないやつだし……。
「その、ほら。最終派生スキルだから、使ったら丸一日乃亜が[ゲームシステム・エロゲ]を使えなくなるし」
「【四天王】1人を倒すためなら問題ないのでは? 【四天王】を倒せない限り、ずっと暴れ続けるでしょうから」
そう言われると何も言えないね。
「………………分かった」
「ようやく決断してくれましたか!」
「というか、普通女の子の方がこういう事を人前でやるの躊躇しない?」
「非常事態ですし、もうわたしのスキルがこういうモノだというのは分かり切っているので諦めてます」
乃亜がどこか遠い目をしながらそう言った。
なんかゴメンね。
「それじゃあその前に準備しよう」
「何をするのよ?」
冬乃にそう問いかけられ、僕はスキルのスマホを見せるように振った。
「さっきサイラスとの戦いの後、すぐに[動画視聴]してなかったせいで[助っ人召喚]が使えなかったからね。
30秒だけとはいえ、今の内に済ませておかないと」
サイラスとの戦いの後すぐに【四天王】達に呼び出されたせいで、回数補充していないんだよ。
できれば[助っ人召喚]を使うような機会なんて無いといいんだけど、あの2匹を相手にそんな楽観的なこと言えるはずもない。
「このスキルも、出来れば使いたいものではないんだけどな……」
初めてこのスキルを使った時、僕は膝から崩れ落ちたが今度こそは耐えてみせる。
「[動画視聴]!」
「そんなに気合を入れて使うスキルなの、かな?」
咲夜が首を傾げているけど、僕にとってはそれだけのものだ。なにせ――
『今月の[有償ガチャ]の目玉はこれ! このサンタクロースのコスプレはなんと――』
僕の射幸心をあおるようなスキル[有償ガチャ]のCMなのだから。
ああ、課金してぇーー!!!
―――――――――――――――――――――
・あとがき
すまん。なんか全然書けなくて土日でなんとか一話しか創れんかった。
本当に申し訳ないけど次の更新遅れると思う。
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