第25話 傲慢と強欲の影
困惑していた僕らだけど、とりあえずこの行動が正解っぽいのでアヤメの影にも攻撃してみたところ、同じように苦しみの声を上げながら影が消えていった。
「なんだかすごい肩すかしだなぁ」
『そうなのです。これが試練なのですか?』
エバノラの試練を考えると、こんな簡単に終わるはずがないからおかしいんだけどな。
そう思いながら首を傾げていると、目の前の空間が歪んであの2人が現れた。
『『アハッ、アハハッ、アハハハハハハハハハハハハッ!!!』』
こちらを指さして大爆笑しながら。
『『アハハハハハッ、アハハハ、ッ! ゲホッゴホッゴホッ!!』』
もう笑い過ぎてむせちゃってるし。
笑い過ぎて涙が出てきている2人は、指でそれを拭いながら笑い過ぎて苦しいのかお腹を片手で押さえながらこちらを前傾姿勢で見てきたよ。
『あーもう可笑しいわ可笑しいわ。想定していた順番と逆じゃないの』
『ホントよね。まさか
「傲慢の影?」
なんだその意味深なワードは。
『傲慢の影は今あなた達が倒した存在の事よ』
『敵と認識されない限り一切のダメージを負わず、対象の影を勝手に占拠するだけの存在』
「それを倒すだけの試練って簡単すぎませんか?」
剣で一刺ししただけで倒れたんだけど。
『そんなわけないじゃない』
『ええそうよ。本来であればこのコロッセオにあなた達が来る前に
やっぱりそうだったのか。
でもそれならおかしくないだろうか?
5分以上、いやもうすでに10分は経っているにもかかわらず、未だに姿を現さないのだけど。
「何があったんですか?」
『『見れば分かるわ。アハハッ!』』
何がそんなに可笑しいのか、思い出し笑いでもしているかのような2人に先導されて扉を潜って見た先にいたもの。それは――
『ガチャーーーーーー!!!!!!』
自分をデフォルメして3頭身くらいにしたであろう存在が、奇声を上げながらまるで子供のように床に寝そべってグルグルと回り続ける目も当てられないような光景だった。
『『アハハハハハッ!!』』
『な、なんなのです、これ?』
アヤメは開いた口が塞がらないとでも言うかのような表情になりながら、しかしその光景に目が離せないのかコーヒーカップ並みにその場で回り続ける奇妙な存在を見続けていた。
『これはこの人の影、いえ、もうここまできたら言っちゃうけどドッペルゲンガーよ』
「ドッペルゲンガーって自分とそっくりの分身ってやつですよね」
『ええそうよ。シャドーハンティングはドッペルゲンガーから構築した試練なの』
『自分と同じ人間はこの世に3人いるという都市伝説とドッペルゲンガーを組み合わせて創った試練』
『実はこっちの通路から出てくるもう1人のあなたと戦ったら、私達が創ったアリスの世界を抜け出せる権利を得るの』
『でもそこでさらにシャドーハンティングという名称から、自分の影に攻撃できるかどうかで真の試練クリア条件を達成できるようになっていたわ』
『『そうなればアリスの世界からの脱出だけじゃなくて、典正装備もあげちゃうわよ。早い者勝ちだけどね』』
マリとイザベルの2人から今の話を聞いていたら、2つ疑問が湧いてきたので、そのままそれを聞くことにした。
「アリスの試練じゃなかったんですか?」
『『そんなわけないじゃない。試練を始める前に言ったでしょ。自分で戦うなんて事はしないって。
だから戦うのであれば最低限私達を認めさせないとダメよ』』
なんて傲慢なセリフなんだ。
もっともそのお陰で今回は即興で作ったような試練をするだけで済むのだけど。
『それにしても試練の質が低かったかしら? こんなにもあっさりとクリア条件の1つが満たされるなんて』
『しょうがないわ。リソースが地上に出ていた魔物だもの。限られた資源で構築できる試練はそこまで厳しいものではないわ』
期せずして
それならこの場から脱出した後で大量の魔物に囲まれているなんて事態に遭遇しなさそうだね。
試練の後の心配をそれほどしなくて済みそうなのはいいとして、もう1つの疑問。
これは絶対に聞かなくてはいけない事だ。
僕は地べたでグルグル奇声を上げながら回り続けているそれを指さす。
「試練がアリスでないのは分かりましたけど、ドッペルゲンガーならどうしてこんな自分とは似ても似つかない存在になっているんですか?」
いくらなんでもこれはないでしょ。
中身はともかくとしてドッペルゲンガーなら姿形はせめて似せなよ。
『それは簡単な話よ』
『ええ。さっきも言った通り、こっちの影は強欲の影』
『あなた自身の写し身というだけではなく、そこに強欲の力が加わったものなの』
『だけどあなたったら強欲の耐性が無さ過ぎてガチャに執着する存在になっちゃったの』
『その上、この子がガチャと叫び続けていたら何だかよく分からない物語の存在まで混ざってしまって、どんどんこんな姿に変わってしまったわ』
……え、僕のせいなの?
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