第39話 一緒の布団で寝た仲

 

「ありがと蒼汰。ちょっと眠かったから助かるわ」

「……蒼汰君、ありがとう」

「ありがとうございます先輩。ただこんなところでまともに寝られる気がしませんけどね。という訳で先輩、腕か足を貸してください」

「何が、という訳でなの?」

「安眠できる枕が欲しいです」

「タオル上げるからそれで我慢しなさい。乃亜、あなたちょっと疲れてるんだよ」

「そんなパロディーネタはいりません。今朝一緒の布団で寝た仲なんですからいいじゃないですか」


 こんなところでとんでも発言しないでください。


「蒼汰……あんたってやつは」

「手は出していないと弁明します」


 と言うか、勝手に潜り込まれてたんだよ。


「まあ今更だから好きにすれば。蒼汰、タオル頂戴。私は寝る」


 いつもの覇気がなく、思ったよりも疲れていたのか冬乃は腕を枕に机に突っ伏してしまった。


「昨日から戦ってますからね。いつものダンジョンとは違った場所と敵ですし、近くで戦いがあると思うと寝づらかったですから、疲労もその分蓄積しますよね」

「そうよ。だから乃亜さん達も寝れる時に寝ておきなさい」

「分かりました冬乃先輩」

「うん、分かった」

「じゃあ3人ともこのタオルを使って」


 僕は[フレンドガチャ]で出したタオルを3人へと渡す。


「ありがと」

「ありがとうございます先輩」

「蒼汰君、ありがとう」


 僕を除いた3人は机に突っ伏して顔を見せないよう頭にタオルを被って寝始めた。

 寝顔を人に見られるのはやはり恥ずかしいのか、3人とも同じようにして眠っている。


 僕は3人を起こさないように、飲み物を飲みながらボーっと空を見て時間が過ぎるのを待った。


 ◆


 5度目の休憩後から休憩を終える度に、敵の勢力が明らかに強くなっていくのが分かった。

 僕らは戦斧持ちや陰陽師程度なら自衛隊の助けは要らなかったので何とかなっていたけれど、交代する冒険者達は明らかに怪我も増えていて、軽口を叩く余裕もなくそそくさと休憩に向かってしまうくらいには疲弊していた。


『今日はもうあと少しだから頑張ろう!』


 今は2日目の最後、22時近くであり、もうそろそろ終わるころだ。


『時々くる強い個体が厄介ですが、それさえしのげば朝とさほど脅威が変わらないのがありがたいです』

『でもそいつら来る頻度がドンドン上がってるわよね。自衛隊の人達だけで夜、守り切れるのかしら?』


 冬乃の疑問はもっともで、守り切れず僕らが休息をとっているユニットハウスに寝ているところで襲われたら目も当てられないよ。


『その心配はいらないんじゃないですか? もしも2つ目のバリケードが突破された場合は緊急連絡でけたたましいアラーム音に叩き起されるらしいですし』

『それは乃亜の親御さん達から?』

『はい。と言っても、お父さん達がそれを経験したのは10年前に1度だけと言ってましたが』

『10年に1度、迷宮氾濫デスパレードが厳しくなるとかだったら、初めて参加したのにそれに当たったのは不幸だね』

『まったくね。報酬に釣られて来たけど、魔石をまともに拾えたのは今日の午前までだったし』

『拾ってたの蒼汰君だけど、ね』

『誰が拾ってもいいのよ咲夜さん』


 戦斧持ちや陰陽師が来てる時に悠長に魔石なんて拾ってる場合じゃないからね。


『あ、また現れたね』


 今度は戦斧持ちが3体に陰陽師が2体まとめて来た。


『この持ち場にリッチとかが来る割合が多いらしいのも面倒な話よね』


 冬乃の言う通り、自衛隊の人が言うには何故か他の地点に比べてリッチ達が多く襲ってくるそうだ。

 おそらく僕らが多く敵を倒しているため、それを脅威に感じて強い敵が向かって来てるのかもしれないとのこと。

 だから他よりも自衛隊の人が多く援護しに来ている、らしい。

 他の地点のことなんて知らないし、僕らが戦っている時は僕らで対処できる間は物資節約のため対処して欲しいと言われたけれど。


『自衛隊が僕らが戦っている時も援護してくれれば楽なのにね』

『別にいいわ。いてもいなくてもそんなに変わらないし、バリケード入口近くに吹っ飛んできた魔石を代わりに拾って報酬代わりに渡してくれるんだから』


 直接的な報酬は渡せなくて申し訳ないが、こちらで拾えるだけ拾った魔石を提供するので協力して欲しいと言われたら、冬乃が真っ先に頷いて僕らだけで戦うことになってる。

 まあ収入が増えるのは悪くないし、なんとかなってるから問題ないんだけどね。


『敵、来るよ?』

『あ、そうだね咲夜。喋ってる場合じゃなかったよ』


 今日のラストを飾るのに相応しい敵だろう。


 ……できればもっと普通のスケルトンの方が楽なんだけどな~。

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