第2話 転生したら○○だった件
「何だか【Sくん】にしては挙動不審ですね」
周囲を警戒しながら歩いている【Sくん】を目にしたわたしは、思った事をそのまま言うと全員がそれに賛同して頷いた時だった。
こちらに気付いた【Sくん】がまるで迷子になった子供が親とようやく再会できたかのような表情になって、こちらに向かって走って来た。
「むっ、私達はもう【Sくん】が目当てとするようなスマホなどないのだが……。まあいい。叩き斬るか」
オリヴィアさんが〔マジックポーチ〕からロングソードを取り出して向かってくる【Sくん】を迎撃しようとしたら、【Sくん】が慌てて両手を振りだした。
『まっ、待って!』
「ん?」
【Sくん】が喋った!?
『ぼ、僕は悪いソウタじゃないよ!』
先輩はいつの間にスライムに転生したんですかね?
「……本物の先輩?」
『〔
「【Sくん】なら『ガチャ』しか言わないけど、この蒼汰君はちゃんと喋ってるからそうなの、かも?」
咲夜先輩の言う通りですから先輩の言う事を信じてもいいんですかね?
もしあれが進化した【Sくん】だったら、こちらを騙すために先輩のフリをしている事も考えられます。
「……任せて」
本当に先輩なのか疑っていたのをオルガ先輩が[マインドリーディング]でわたしの考えを読み取ったのか、先輩を名乗る先輩に近づきながら、問いかけ始めていった。
「……文化祭でオリヴィア・ローズ・ウォーカーが誤って危害を加えそうになった人物の名は?」
『
「……蒼汰が学校の屋上でソフィア・グティレスにされていたことは?」
『……………押し倒されていました』
「……ボクと学校のトイレであったことは?」
『…………………………膝に座ってきたよね』
ちょっと後で詳しい話聞いてもいいですかね?
いくつか問いかけた段階で、オルガ先輩は先輩を抱え上げるとそのままギュっと抱きしめ、しばらく経ってようやく口を開きました。
「……ん。本物」
「そうですか。〔
『無事と言っていいかは微妙だけど、少なくとも僕の本体は怪我とかしてないから安心して。ただ鎖に繋がれて目隠しされてるだけだから』
「拘束されてるのに安心できるわけないじゃない!?」
先輩が何でもないかのように言ってますが、冬乃先輩の言う通り拘束されているのは十分大事では?
現状割とシャレになっていない先輩ですが、一先ず再会できたことをわたし達は喜び合いました。
≪彰人SIDE≫
「異界の住人の問題とか上に報告したばかりなのに、人をこき使うのは勘弁して欲しいさね」
「さっきまでそっちに協力してたんだから、ボクにも協力して」
「言ってみただけでちゃんと協力はするさ。とはいえ私が出来る事なんてそうないさね」
少し疲弊気味の桜を無理やり引っ張ってきて、インキュバスの力を使って逆にハニトラ仕返して手駒にした人の内、近くにいた人を呼べるだけ呼んで、蒼汰を取り込んだ巨大なカプセルトイの所まで来ていた。
「それにしても何をする気さね? それは叩いても押しても攻撃しても傷つかないしビクともしなかったんだよ」
「もちろん分かってるよ。ボクの力で蒼汰を救うなんてうぬぼれた事は言わない。
でもその一助にはなれるはず」
【
「この【
【不思議の国のアリス】も【鏡の国のアリス】も少女の夢の出来事だというのなら、女性の夢に介入できるインキュバスのボクの力が通じるはず。
その力でせめて蒼汰を助ける方法がないかを調べるんだ」
「なるほどさね。でもそれなら私が出来ることなんてあるとは思えないのだけど?」
何を言っているんだろうか、この
「“天秤”の魔術って、対価があれば効果を倍増させるんだよね?」
ボクがそう言うと、桜は目を見開き、自身の顔の前で手を左右に振っていた。
「いやいやいや、無茶言わないで欲しいさね!? 今まで私自身にしか使った事ないのに、他人に使うなんてやったこと無いんだけど!
それに仮に出来るとして“天秤”には何を乗せるのさ?」
以前桜に聞いた“天秤”の魔術は対価にするものは同質のモノでなければ効果は発揮しないと聞いた。
身体強化の倍率を上げたい場合は肉体にまつわる事でなければいかず、肉体を動かすことで効果を発揮する身体強化に対して、肉体を動かさない事がその対価となる。
なら――
「“精気”を対価にすれば十分でしょ?」
余剰分の精気÷力を行使するのに必要な精気=インキュバスの力の倍率
この計算式が当てはめられる。
桜の手助けなしでも精気を大量に使えばインキュバスの力はある程度増加できるけど、せいぜい1.5~2倍程度だ。
それに引き換え、桜の手助けがあれば単純な計算式で力を何倍にもできるし負担も少ないからね。
「それで協力者を呼んだのさね……。あなた達はそれでいいのさ?」
「「「「「彰人様の役に立てるなら本望です」」」」」
「さすが調教済みだけあるよ……」
それじゃあ早速やろうか。蒼汰を助けるために。
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