第24話 つまらない男

 

『第二の試練終了~。絶対にあの子達がゴールできずに延々と盛っていることは分かっていたけれど、制限時間の2時間が経って第二の試練が終わるまではい・ち・お・う待たないといけなかったのだから、そんな恨みがましい目で私を見ちゃダメよ~』


 一応をわざわざ強調して言わなくてもいいだろうに。


 迷路を歩いている間より、じっとしている時間の方がすごく長く感じたよ。

 じっとしていると乃亜達3人の肌の感触を意識してしまって、より発情状態がきつくなるのが大変だったなあ。


「それにしても、試練って思ったよりもクリアできるものなんですね。エバノラは試練を始める前に誰もクリアしたことが無いって言ってましたけど……」

「確かにね。4組参加して第二の試練まで終わった段階で僕らともう1組残ってるし」

「……はぁはぁ、私には、辛い試練だけど……人によっては第一、第二の試練はそう難しいものでもないんじゃないかしら?」

「発情に耐えられればクリアできる試練みたいなものだったから、ね」


 何組の人達がこの試練を受けたのか知らないけど、この調子なら第三の試練を突破している人達がいてもおかしくないような……。

 第三の試練は第一、第二よりも厳しい試練なんだろうか?


『そう言えるのはあなた達くらいよ? 正直私も予想外だったのだけど性体験が無いと、意外と発情に耐えられるものなのね』

「私もそんな経験ないわよ!! 蒼汰、誤解しないで。私はまだ処女よ!」

「耳元で経験だの処女だの言わないでよ……。別に疑ってないから安心して」


 冬乃だけ発情状態が酷いとはいえ、さすがにそれを疑ったりしないから。

 そもそもエバノラが試練を始めた直後に僕ら全員童貞に処女って言いきってるしね。


『獣人の子って体の感覚が敏感なんでしょうね。前にも数人獣人の子が試練を受けたけど、第一の試練ですぐに盛りだしたわよ』


 それを聞いて冬乃が安堵の息を吐いていた。

 そりゃ自分が人よりも淫乱だと思われるのは誰だって嫌だろうから、発情の花粉のせいだとハッキリしたらホッともするか。


「おい、いつまでそんなくだらない事を話している。もう第二試練は終わったのなら次の試練を始めたらどうだ」


 エバノラと話していたら、遠くにいた男性Bが腕を組みながら次の試練を催促してきた。


『……………はぁ。空気の読めない男ね。今は試練から一時解放されて小説で言えばコメディー回なのに、第一試練が終わった後の時同様、場の空気を盛り下げてくれるわ』

「ふん、くだらん。そんな事よりも【典正装備】をいち早く手に入れる事が何よりも重要なことだ。ここには遊びで来ている訳ではないのでな」

『つまらない男。本当にハズレね。ま、でも、あなたがどれだけムカつく奴でも試練は公平に行うから安心しなさい』


 先ほどまでとは打って変わって不機嫌そうな表情になりながら、エバノラは付いて来いと言わんばかりに飛んでいってしまうので、僕らは慌ててエバノラを追いかけることにした。


 全員で触れあっているから雪に素足で触れているはずなのに寒くないとはいえ、その雪のせいで歩きづらいのでエバノラを追いかけるのが大変だったけど、一応こちらに気を使っているのか追いかけられる程度の速度でエバノラが移動してくれるので、なんとか付いて行くことはできた。


『それじゃあ第三の試練はこの扉の先で行うわ。

 今まで第二試練まではクリアできる子達は何組もいたけれど、この第三の試練は誰一人として突破できた子達はいなかった。覚悟はいいかしら?』


 重厚な扉の前でエバノラが重々しい雰囲気を醸し出しながら、リタイアするなら今の内だとでも言っているようだった。

 だけど、ここまで来て今更試練に挑戦しないだなんてありえないよ。


「もちろん。みんなも大丈夫?」

「はい!」

「はぁはぁ、問題ないわ……」

「うん、頑張る」


 僕らの返事を聞いて満足そうな表情をしたエバノラが重そうな扉に軽く触れると、その扉が自動で開いていく。

 エバノラが開いた扉を通っていくので、僕らもそれに続こうとして男性Bに遮られるように先に通られてしまった。


「別にそこまで急がなくても、エバノラは逃げないだろうに……」

「なんか感じの悪い人ですよね」

「あまり、近づきたくないタイプの人間ね」

「自分の仲間を切り捨てたりするから、咲夜は嫌い」


 確かに咲夜の言う通り、仲間を犠牲にしてまで試練を突破しようとするのは見ていて気分のいいものじゃないね。

 いくら死ぬような事はないとはいえ、そんな事をするくらいなら僕はリタイアを選んでるよ。

 でも仲間の女の人が自分から捨て駒になったのかもしれないから、何も知らないのに男性Bを責めたりするのはよくないだろうけど。


 さて、それよりも今は人の事より自分の事だ。


「みんなの気持ちは分かるけど、今はあの人の事よりも試練を突破する事を考えよう!」

「そうですね。次の試練はどんな試練なんでしょうか?」

「花、雪と来てるからやっぱり……」

「冬乃ちゃんもそう思う?」


 次の試練が何の道なのか予想がつくけど、がどう試練に関わってくるのか謎に思いながら、僕らは覚悟を決めて扉を潜った。

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