第11話 気になる実力
「じゃあ早速ルール説明ね~。
ルールは簡単でこの舞台の外に出たら退場~。その人はそれ以降攻撃や支援など舞台にいる人達に一切干渉するのは禁止~。
相手パーティー全員を舞台の外に出すか、戦闘不能にしたら勝ち~。分かった~?」
「はい、質問いいですか!」
「なーに~ハーレム君~?」
「ハーレム君は止めてください。僕の名前は鹿島蒼汰です」
「うん、よろしく~。私は
「よろしく」
どちらもショートヘアーだけど、こっちから見て右側に小さな三つ編みを編んでいるのがこのみさんで、左側にそれをしているのが鈴さんね。
まあ喋り方が語尾を伸ばしていたり、淡々と喋っていたりしてるから、そっちですぐに分かるけど。
「それで質問は何かな~鹿島ハーレム君~?」
「止めてって言ったのに!?」
「冗談だよ冗談~。それで質問ってなーに~?」
冗談と言いつつ、こちらの名前を呼ばないところが怖い。
まさか会う度にハーレム君呼びされてしまうのだろうか?
まあそれはさておき――
「何で僕らは了承していないのに戦わないといけないんですか?」
「え~だめ~?」
「せめてちゃんとした理由くらい言ってください」
戦う気なんて全くないのに、気が付けば舞台に立たされている身としてはせめて理由くらい知りたいところだ。
「君が~私達を会長を見る様な目で見てきたからだよ~」
「ちょっと待ってこのみ。それどういう意味?!」
「そのままの意味。私達は会長と違ってちゃんと女性」
「自分だってちゃんと男なんだけど!?」
矢沢さんがこのみさんと鈴さんにすかさずツッコんでいた。
まあ矢沢さんがちゃんと男に見られていないのはともかく、そんな理由で僕らは舞台に上がらされたの?!
え、じゃあみんなも戦う羽目になったの僕のせいじゃん。
「なんかごめん」
「別に構いませんよ。対人戦の経験が圧倒的に不足してましたし、いい訓練だと思えば」
「そうね。先日あんな事があったばかりだし丁度いいわ」
「頑張る」
「あ、咲夜さんはほどほどにした方がいいと思うわ」
「そう?」
先日“平穏の翼”に襲われたことを考えると、確かにここで経験を積めるのは丁度いいかもしれない。
だけど咲夜が本気を出すと、相手にトラウマを植え付けかねないから、冬乃の言う通りほどほどでいいと思う。
いくらこの舞台内なら大怪我をしてもなかった事になるとはいえ、咲夜の必殺技〝神撃〟を食らって蒸発したら、下手したら発狂するんじゃないだろうか?
「仮に跡形もなくなっても~、舞台の外で復活するからお互い全力で戦うといいよ~」
こちらの会話が聞こえていたのか、このみさんはむしろ全力以外認めないとでも言うかの様な目をこちらに向けていた。
いや、いくら全力を出せって言われても、人間相手に〝神撃〟を撃てなんて咲夜に言えないよ。
それに1発撃っただけで動けなくなるんだから余計にね。
だからやれる範囲で頑張ろうと思って対戦相手を見たら、そちらから鋭い目で睨まれている事に気付いた。
「舐められたものだ。確かに君達は【
むしろ倒される心配をするといいよ」
うわっ、相手のやる気が上がってる……。
一筋縄ではいきそうにない相手であることを考えると、手を抜いてる余裕なんてないかもしれないね。
≪矢沢SIDE≫
「このみ、何で模擬戦なんて許可したの?」
「ん~? まあ理由の1つは会長を見る様な目で見られたからだけど~」
「今さっき言ったこと本気だったの?!」
そんな個人的な報復のために、わざわざ模擬戦をやらせていたのか?!
そう思っていたら、次に続いた言葉は自分が思わず納得するものだった。
「一番の理由はやっぱり実力が気になるからかな~」
「特に小柄な少女とハーレム主の2人。冒険者になって半年どころか3カ月しか経ってないのに、
「だよね~。会長もあの子達の実力が気になったから強く止めなかったんでしょ~?」
確かにそれは図星だ。
デメリットスキルやユニークスキルはスキルスロットの拡張がしにくく、今現在ですら[アイドル・女装]のスキルしか持っていないのだから、スキルを得たばかりの身で他にスキルなんて使える訳がない。
さらにこのスキル、最初の頃は自分を着飾ったりするだけのスキルだったせいで、他にパーティーを組んでもらえず、レベル上げにはかなり苦労したんだよ。
[アイドル・女装]が支援系なのも相まって、自力で魔物を倒すのは大変だったし。
幸いにもケイが自分の事情を知って声をかけてくれたお陰で、パーティーを組むことが出来、なんとかレベル上げが進むようになったんだけどさ。
自分がそうだった以上、彼らもデメリットスキルしか持っていないはずなのに、どうしてたった3カ月程度で校長から勧誘を受けるまでになったのか……。
そしてその実力は果たしてどれほどのものなのか。
止めないのは申し訳ないけど、好奇心の方が勝ってしまったのはこのみの言う通りだから、否定できないな。
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