ああ、課金してぇーー！！！～課金できないから現代ダンジョンでレベルを上げる～

第26話 おかわり

　冬乃達は短剣2本をミノタウロスの足に刺すと、その箇所を集中的に攻撃していった。

　そこしか攻撃が通じないのであれば、当然ミノタウロスは自身の腕で模様の浮かんでいる箇所を防ごうとするので、攻撃を通すのは至難の業になる、はずだった。

「はあっ！！」

『ブモーッ！？』

　咲夜が角を生やした状態の本気の鬼神化状態で放つ蹴りは、模様の浮かんでいない箇所であってもダメージが通るようで、頭を蹴り飛ばされたミノタウロスは苦し気な声を上げていた。

　下手に腕で足をかばおうとすれば膝を着いて腕で守る事になるので、頭の位置が低くなり頭へと攻撃がいく。

　そのためミノタウロスは頭を守らざるを得なくなり、足を守っていられなくなった。

　結果としてミノタウロスの足は再び切れた。

『ここからだよ。さっきと同じように行動するなら咆哮を上げて、“取り込まれた生贄”を呼び出すはず。冬乃、〔籠の中に囚われし焔（ブレイズバスケット）〕の準備とミノタウロスの周囲にいる人達に離れるよう指示を』

『オッケー。出てきたところを吹き飛ばすわ！』

　冬乃が他の人達に退避するよう指示をして、城壁の上から〔籠の中に囚われし焔（ブレイズバスケット）〕をミノタウロスの方へと向けて、いつでも射出出来るよう構えた時だった。

『ブモオーーーーーー！！』

　ミノタウロスから異様な圧が再び周囲へと放たれた。

　先ほどよりも少し近くに来たからかその圧が若干強く感じるけれど、乃亜達は大丈夫だろうか？

　先ほどと同じようにミノタウロスの近くに魔法陣が浮かび上がり、“取り込まれた生贄”が現れる。

『冬乃、撃てる？』

『くっ、ダメ。この妙な威圧のせいで狙いが定まらない……！』

　僕が威圧のせいで満足に体が動かせない中、なんとか視線を冬乃の方へと向けると、冬乃は苦虫を嚙み潰したような表情で剣先をミノタウロスのいる方へと向けようとしているのが見えた。

　だけど腕が震えていて、冬乃自身が言っていた通りまともに当てることが出来るか怪しそうだ。

『冬乃先輩、もう撃っちゃいましょう！　当たればラッキーと思って行くしかないです！』

『外れても大丈夫。また咲夜が頑張る！』

『乃亜さん、咲夜さん……。分かったわ。〈解放（パージ）〉！』

　〔籠の中に囚われし焔（ブレイズバスケット）〕から射出された炎の塊。

　それは冬乃の［狐火］5発分を1発にまとめて射出される弾丸。

　まともに食らえば“取り込まれた生贄”ならば、当たる場所次第で1撃で倒せるはずだけど……。

　ミノタウロスが“取り込まれた生贄”へと腕を伸ばして捕まえたと同時に、爆音が周囲へと響き渡った。

『ブモオーー！？』

　牛の鳴く声が聞こえてきたから、〔籠の中に囚われし焔（ブレイズバスケット）〕による攻撃が当たったのは間違いないけど、同じような叫び声だからどっちに当たったのか分からないな。

　煙幕がミノタウロスのいる付近に立ち込めていて視界が悪く、早く煙が晴れて欲しいと思っていたら城壁の上にいる人で、［風魔法］のスキルを使える人が風を起こして煙を吹き飛ばしてくれた。

　煙がその場から散らされ、そこに残っていたのはミノタウロスと左肩付近を中心として心臓を巻き込んで吹き飛ばされた“取り込まれた生贄”だけだった。

『やったわ！』

　冬乃が喜んだ通り“取り込まれた生贄”は絶命したようで、ポンッと音を立てて消えてしまった。

　よし、これでミノタウロスは回復できな――

『ブモオーーーーーー！！』

　なっ、また異様な圧をまき散らしてきた！？

　それにミノタウロスの横にまた魔法陣が現れたと言う事は……。

『ブモ？』

　“取り込まれた生贄”がどこだここ？　と、言いたげな表情で現れた。

『おかわりか畜生！！』

『蒼汰、次の〔籠の中に囚われし焔（ブレイズバスケット）〕を！』

『出したいけど、指先が震えて……』

　誤操作しかねないほど指が震えて思う様に操作出来ないけど、なんとか［チーム編成］で冬乃の武具として登録しある〔籠の中に囚われし焔（ブレイズバスケット）〕の再召喚に成功した。

『来たわね。それじゃあもう1回、〈解放（パージ）〉！』

　射出された炎の塊は先ほど同様、“取り込まれた生贄”へと吸い込まれて――

『ブモオッーー！』

『なっ、邪魔された！？』

　ミノタウロスが腕を盾のように使い、〔籠の中に囚われし焔（ブレイズバスケット）〕の炎から“取り込まれた生贄”を守ってしまった。

　当然ミノタウロスの腕はそのせいで負傷した訳だけど、そんなのは関係ない。

『ブモッ、ブモーー！？』

　“取り込まれた生贄”を食べる事で回復してしまうのだから。

『ちっ、止められなかったわ』

『それじゃあもう一度、足を切り落とすところからだ、ね』

『ですが上手くいくのでしょうか？　こちらの行動を理解して冬乃先輩の攻撃を止めてきましたよ』

『確かにそうね。しかもあの威圧感の中だと狙いが定まらないし、最初の1発も正直まぐれ当たりしただけだから、ミノタウロスの防御をすり抜けて当てるのは不可能に近いわよ』

　なんとかミノタウロスに“取り込まれた生贄”を食べさせないようにしたいところだけど、どうすれば……。

　そう思っていた時、更なる試練が僕らを襲った。

『モオーーーー！！』

『なにを！？』

　ミノタウロスが先ほどまでの行動とは違い、地面に両刃の斧を叩きつけた。

　するとあちらこちらに“取り込まれた生贄”を召喚した時のような魔法陣が現れるけど、一体何をするのかと思ったけど、その答えはすぐに分かった。

『『『■■■！！』』』

　牛の被り物をした僕らと同じくらいの背丈の30人近い男女がその魔法陣から現れ、武器を持ってこちらに向かって来たのだから。