第28話 第三の試練〝月の問答〟(4)

 

≪蒼汰SIDE≫


「無理じゃないかな?」


 僕は現状の状態を見て、そう言わざるを得なかった。


「せんぱ~い……」

「はぁはぁはぁはぁ」

「ううぅ」


 僕以外の3人が高ぶり過ぎる性欲に倒れていた。


『お前達、早く回答者を決めるがいい』

「まあ僕が行くしかないんだけど……」


 冬乃はなんとか10問ほどまで答えていたけれど、呂律が怪しくなったので戻ってきてもらった。

 その後、乃亜が冬乃がされたのと似たような質問をされ答えていったけれど、残念ながら20問ほどでギブアップ。


 冬乃と乃亜が頑張って時間を稼いでくれている間、試練の内容を咲夜と検討していったのだけど、どう考えても怪しいのがこの文章。


 〖正直に答えた場合:回答者の身体が重くなる〗


 正直に答えたにも関わらず身体が重くなっていく事に、僕らは違和感を感じた。

 一見罰に似た何かにも思えるけれど、もしも身体が重くなることがこの試練をクリアする上で重要な事であるのならば、僕らは常に正直に答え続けなければいけないのではないんじゃないか?


 そう結論付けた僕と咲夜は乃亜がダウンしてしまった後、どちらがいくかを話し合った結果――


「咲夜がいく。身体が重くなっても、咲夜なら耐えられるから」


 そう言って咲夜は回答者となり、乃亜同様20問ほどまで正直に全て答え続けていたけれど……性欲には勝てなかったよ。


 もっとも性欲の方で限界が来ているのに加え、身体が重くなるほうでも膝をついて何とか耐えていたくらいなので、あれ以上正直に答え続けていたらまともに動けなくなっていたと思う。


「突破口が正直に答え続ける事だと思ったのだけど、咲夜で無理なら誰もクリアできない気がするよ」


 冬乃曰く1問答えるごとに5キロ増えるのであれば、咲夜のように20問連続で答えたら100キロは増える事になるはず。

 いや、咲夜は[鬼神]のスキルを持ってるから100キロ程度で膝をつくとは思えないことを考えると、その3倍は重くなっているのでは?


 僕、そんなに重くなったら耐えられる自信がないよ……。


 いや、でも僕ら全体で何キロ増えたかが重要な可能性もあるし、まだ1問も答えていないのに諦めるのはみんなに悪すぎる。


「……よし、僕が次の回答者だ。できるだけ答えてみせる!」

『その意気や良し。ではいくぞ』


 大仏の前に立って回答者だと宣言したら、月の光が僕を照らしてきた。

 それと同時に、身体の奥底から熱が徐々に増してきているのを感じる。

 この程度であれば全然耐えられるのだけど、問題はこれがどんどん強くなることか……。

 素早く正直に答えていかないとね。


『これが罰の内容だ』

「おい」


 《嘘をついた者には以下の天罰が下る》

 ・後ろの3人の内1人とディープキス


 嘘をつく気はないけれど、嘘をつき辛い罰は止めて欲しい。

 罰を意地でも回避しようとするのは、まるでその罰を嫌がってるようじゃないか。


「先輩、嘘をついてもいいんですよ……」

「はぁはぁはぁはぁ」

「いっぱい、して」


 冬乃はまともに喋る事もできないようだけど、乃亜と咲夜はあの様子を見る限りまだまだいけたんじゃないかと思ってしまう。

 でも不用意に近づいたら絶対襲ってきそうな目をしてるんだよね……。

 僕を見る目が完全に獲物を見る目だよ。


『では貴様への第一問。貴様は課金を月に1万円までだと思っている――』

「そんな訳ないじゃん」

『食い気味で答えてきたな』


 たかが1万で何ができると?


『純真無垢な赤ん坊のごとき真っ直ぐな心で、反吐みたいな正直な回答であった』

「その枕詞いらないよね?」

『よって貴様の身体は重くなるぞ』

「うわっ」


 急に身体全体が重くなってビックリするな。

 この程度なら平気そうだけど、あと何問までいけるだろうか?


 それにしてもさっきから思っていたけど、人によって質問の内容が時折的確というか、その人を知らなければ出てこない質問をしてくる辺り、僕らの記憶を読み取ってるのが見て取れるな。

 まあそうでなければ正直に答えてるかどうかも分からないか。


『次の罰はこれだ』

「全部正直に答える気なんで、もう罰の内容とかどうでも――」


 《嘘をついた者には以下の天罰が下る》

 ・4人で2時間ご休憩(意味深)


「大仏ーーーー!!」


 わざわざ括弧で意味深とか書かなくていいから!

 というか、僕ばかり罰の内容がおかしくありませんかね!?


『気のせいだ』

「心の声に反応してくるんじゃない!」


 くっ、これを倒すミッションだったら喜んで殴りに行っていたのに……!


『第二問いくぞ?』

「……時間が惜しいんで、どんどんどうぞ」


 僕は深呼吸をして心を落ち着け、次の質問へと挑む。

 さあ来い!


『第二問、貴様は相手がロリ体型でも夜戦に挑めるか?』

「もういっそのことストレートに言ってくれません? できますよ」

「せんぱぁい」


 艶っぽい声で後ろから囁かないでくれないかな?


『性癖は人それぞれ。正直者な貴様の身体は重くなるぞ』

「もっと淡々と試練を進行してくれないかな、っと」


 急に身体が重くなる感覚には慣れそうにないな。

 一気にくるから自分の身体が重くなっているのが実感できるけど、そんな事よりも少しずつだけど性欲が増してきているのが問題だ。

 ムラムラしてきたね。


 まだ2問目だし全然耐えられるけど、この調子で20問近くまでいけるかな?

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