第27話 第三の試練〝月の問答〟(3)

 

『さて次の問いだが、その前に回答者を選ぶがよい』

「このまま私が回答するわ……」


 冬乃が大仏に続投の意を示すと、大仏は大げさに頷いてきた。


『うむ、よかろう。では次の罰はこれだ』


 いつの間に看板を回収していたのか気付かなかったけど、1問目の時に突き立っていた看板は消え、新たに大仏が別の看板を地面へと突き刺してきた。


 《嘘をついた者には以下の天罰が下る》

 ・ケツバット


「シンプルに痛いやつ!?」

「なんだか急に罰が雑になったような感じですね」

「でもこの罰なら嘘をついてもいいから、体を元の重さに戻せる、ね」


 咲夜の言う通りこの程度の罰なら受けられるから、体が重くなりすぎる前に嘘をつける時についておいた方がいいと思うけど、冬乃はどうするだろうか?


『では第二問。貴様は後ろの男を愛しているか?』

「またこんな質問なの……。べ、別に蒼汰のことなんて好きでもなんでもないわよ!」

『なんというテンプレなツンデレ。回答は嘘だが、これはある意味正解では?』

「余計な事言ってんじゃないわよ!!」


 ごめん冬乃。僕も聞いててツンデレかなって思っちゃった。


『嘘をついたので体は軽くなり、罰を受けてもらう』


 大仏がそう言うと、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「アンッ」

「またお前か!」


 友情出演じゃないんだから、もう出て来なくてもいいのに何で来るかなぁ。


 アンは少し硬そうなスポンジの黒い棒をその手(?)に持っており、冬乃の方に向かって行く。


『ではケツをそやつに向けるがいい』

「ケツとか言わないで欲しいわね……」


 冬乃が渋々といった感じでアンに向かって少しお尻を突き出すと、アンはすぐさまバットを振りかぶった。


「アンッ!」

「痛っ!?」


 スパンッと叩かれた音が周囲へと響いてきて、普通に痛そうだけど大丈夫だろうか?


「冬乃、大丈夫?」

「うぅ、水着だから肌に擦れて痛いわ……」


 大した事がなさそうな罰に思えたけれど、自分達が水着である事を考えるとそんな何回も受けられる罰じゃなかったか。


「冬乃先輩、交代しますか?」

「……いえ、大丈夫よ。痛かったけど、お陰でおかしな気分も少しマシになったし」


 性欲が高ぶっているのを痛みで誤魔化せる内に、どんどん回答していこうというつもりか。


 冬乃は痛みで興奮する人ではなかったけど、そういう人なら今の罰で崩れ落ちて再起不能になっていたんだろうな。

 もしかしたら罰の内容はそういうのも見越しているのかもしれない。


『続投か。よかろう。では次の罰だ』


 大仏が再び看板を突き刺してきたけど、できればマシな罰であることを祈るしかないな。



≪エバノラSIDE≫


 ふふっ。

 今回のお気に入りの子達はまだ試練を始めたばかりだけど、今のところ順調に試練を進めているわね。


 もっとも今のままだと試練の達成条件の1つ、〝問いに1000問答える〟しか達成できないのだけど。

 ま、それは無理な達成条件ね。

 一定時間ごとに性欲が増幅していく仕様なのだから、途中で試練を投げ出してしまい、まともに回答できずにゲームオーバー。


 かつてここまでたどり着いた子達も達成条件が分からず、ただガムシャラに問いに答え続け、罰によってギブアップするか高まった性欲に耐え切れなかったのだから。


『はぁ。性欲が高まると言っても、上限はあるのにねぇ~』


 性欲に耐え切れない子が私の試練をクリアできる訳ないのだけど、の子達って性に奔放すぎないかしら?


『あ、でも昔も男は割と今と大して変わらないかしら?』


 下半身に脳みそが入ってるのだと言わんばかり、男はちょっと性欲を高めただけですぐに暴走するものね。


『だからこそ、今回の子はかなり期待できるわ』


 第一の試練で性欲に襲われながらも流されなかった子。

 今までもそういう子が全くいなかった訳ではないから、期待しすぎてはいけないのだけど少なくとも――


『この男よりは期待できるわね』

「うぅ……」


 自分の女を見捨て続け、最後には自滅した男。


 最初は女に問いを答えさせ続けたけど、性欲が高ぶり過ぎてまともに答える事ができなくなっていった。

 そのため男は自分が回答者にならざるを得なくなり、必死にくらいついて答えていったけど女同様、性欲が高ぶって思考が鈍くなっていった時だった。


 高ぶった性欲を静めればいいのだと言わんばかりに、一緒にここまで試練をクリアした女を無理やり抱いて性欲を解消しながら回答し続けるとか馬鹿なんじゃないかと思うわ。


『結局体力がなくなって倒れるんだから意味ないじゃない。質問に対して1分以内に答えられなくなって失格になった以上、ここであなた達の試練はお終いよ。はいお疲れ~』

「ま、待て……」

『あら、何かしら?』

「【典正装備】を……よこせ!」

『言うに事を欠いてそれ? 試練を失格になったあなたにそれを与える理由はないわね』

「うるさい! 俺はユニーク持ちを殺すためなら、なんだってしてやる。【典正装備】を手に入れて“平穏の翼”での地位を上げ、今のぬるいやり方を変えてやるんだ!」


 やっぱりこいつ、“平穏の翼”とかいうふざけた団体の一員みたいね。

 ああ、イライラする……。


『くだらない。あなたみたいな人間がいるから、私達のような存在が生まれてしまったというのに、どうしてそれを過去から学ばないのかしら』

「おい、何をする! やめろ!?」

『魔女狩りの恨み、その何千分の一でもあなたで晴らさせてもらおうかしら』


 ◆


『ふぅ。いけないわね。ついつい怒りに呑まれちゃったわ』

「……ぁ」


 かなりボロボロにしちゃったけど、ま、死んでないから問題ないわね。

 さ~て、こんなのよりあの子達よ。

 今、どうなってるかしら?

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