幕間 小学生~中学生編

 

「先輩も随分と大きくなりましたね」

「幼児の状態から土日挟んだからね。土曜日には小学2年生くらいだったし、このくらいまで成長するよ」


 昼休みに僕はいつも通り乃亜達と昼食をとっていた。

 今の僕は小学生から中学生の境目ぐらいと言っていいくらいに成長しており、明日には元の姿に戻れていてもおかしくないくらいだ。


「今日までダンジョンにいけなかったから、明日、明後日あたりには元に戻れるだろうし、ようやくレベル上げを再開できそうだよ」


 まあ僕の役割はみんなのサポートだから、今の姿でも問題なかったのかもしれないけど、さすがにみんなに止められたからしょうがない。


「え~鹿島明日あたりにはもう元の姿に戻っちゃうの?」

「はあ。短い期間だった」

「つまり、今日で合法ショタは最後……」

「なんで残念そうなのさ」


 あと、僕は16歳だから合法と呼んでいい訳ではないと思うよ。

 まあ同じ年だから、付き合っててもおかしくないって意味では間違いじゃないけど。


「ようやく今までの鬱憤が晴らせるってわけだな」

「楽しみだな~鹿島。地獄へのカウントダウンが近づいてるぜ~」

「今この時の平和を精々満喫しているといい……」

「恐ろしいこと言わないでよ。僕が何かしたわけでもないのに理不尽すぎない?」


 何でそんなに敵意が高いんだよ。


「何分かり切ったこと聞いてんだ。蒼汰が赤ん坊になってからの日々、オレ達が何枚のハンカチをダメにしたか」

「ハンカチ噛んで思いっきり引っ張るとか、いつの時代だよ」


 大樹達は僕が見てないとこで、なにバカな事してたんだよ。


「というか、ハンカチ駄目にしたの僕のせいじゃないじゃん」

「それだけじゃねえ!」

「聞いてよ」


 僕の声など聴く耳持たないとでも言うかのごとく、大樹がまくし立ててくる。


「お前が幼児だった時、一体何人の女子達のパンツを見たんだ!?」

「はい?」


 言ってる意味が分からないよ。


「100センチにも満たなかったお前の身長なら階段の昇り降りの時に、その身長差で見放題だったはずだ! 羨ましすぎる!!」

「見てないよ。階段は危ないとか言われて、毎回抱えられて運ばれたんだから」

「それはそれで許せねええええ!!!」


 結局許されないのかよ。

 てか大樹を見る女子の視線が汚物を見る目なんだけど、それはいいの?

 少しは言動を自重しなよ。


「安心してください先輩。わたし達が守りますから」

「蒼汰君の敵は排除する」

「女の敵には容赦する必要がないしね」

「セ〇ムより守りが堅い!」


 そんな警備会社と比べるもんじゃないでしょ。


「ううぅ。羨ましい……」

「そんな事言われても困るよ」


 大樹や他のクラスメイト達に絡まれつつ昼食を終えた訳だけど、飲み食いしていた為か尿意がこみ上げてきた。


「ちょっとトイレ」

「もう手助けはいらないんですか?」

「すでに赤ん坊から幼児に成長した時から必要としてないんだけど!?」


 乃亜がとんでもないこと言ってきたな。

 まだ完全に戻っていないとはいえ、これだけ成長してたら1人でトイレくらい済ませられるよ。


 体がある程度大きくなって嬉しかった事は、1人でトイレを済ませられるようになった事が一番大きい。

 冬乃にお尻を拭かれた時は……ダメだ。忘れよ。

 ちょっと泣きたくなる上に、開いてはいけない扉を開きかねないから。


 僕はチラチラといつも通り周囲からの視線を受けながら、男子トイレへと移動する。

 サクッと用を足して手を洗い、さて教室に戻るかと思ってトイレから出ようとしたら、入口に1人の女生徒が。

 いや、ここ男子トイレなんだけど?


「鹿島~」

「えっと、跡部あとべさん。こんな所で何の用なの?」

「明日にはもう元の姿に戻っちゃうんだよね?」


 ギャルっぽい見た目のクラスメイトの女子が、僕の質問には答えず、ここが男子トイレであるにも関わらずに堂々と入ってきながら問いかけてきた。

 え、なに? なんなの?


 少しばかり困惑して、つい後ずさりしてしまう。


「まあ、そうだね。ようやく元に戻れそうだから嬉しいよ……」

「そう。残念だな~」


 跡部さんはそう言いながら僕の手を掴むと、そのままトイレの個室へと連れ込まれてしまった。

 あまりの急な動きに対応できず、僕の頭はパニック状態だ。


「ちょっ、な、何のつもり!?」

「鹿島。私、ショタコンなの」

「いきなりなんのカミングアウト?!」


 そう言えば1人、休み前にもう少し大きくなってたら襲ってた発言してた人がいたけど、跡部さんだったの!?

 えっ。てことは……。


「もしかして今から襲われる?」

「分かってんじゃん」

「ヘルプ!」


 いきなりの貞操の危機!

 しかも学校のトイレで襲われる日が来るなんて、夢にも思わなかったよ!


「いいじゃん、減るもんじゃないし。ひと夏の思い出ってやつで」

「いや学校のトイレでいきなりとか。しかも僕まだ子供だし」

「だからいいんじゃん」


 ショタコンでしたね!?


「ほら、私ショタコンだけど、さすがに法律破ってまで襲ったりするのはどうかと思う訳よ」

「うん、真っ当な考え」

「でも目の前に同い年のショタが現れたら、もう襲うしかないじゃん」

「うん、不当な考え」


 いや、襲っちゃダメでしょ。


「鹿島だったら他の男子達と違って女慣れしてそうな上に、1回しただけで彼氏面してこなさそうだし。これっきり何だから別にいいじゃん」

「良くはないし、別に慣れてないから!?」


 まだ清い身ですよ。


「え、まさかの初物!? はぁはぁ……。これはもうやっちゃうしかないじゃん!」


 余計に悪化した!?

 や、ヤバい。早く


「駄目ですよ、先輩に不埒な事をしてはいけません」

「なっ!?」


 トイレの扉の上から乃亜が扉を乗り越えて入ってきた。

 た、助かった!

 〔絆の指輪〕でヘルプコールして、すぐに来てくれたから良かった……。


「ふふふっ、先輩から突然助けて欲しいと言われた時は何事かと思いましたが、まさかこのような目に遭っているなんて。たとえ年上だからって容赦はしませんよ……」


 ちょっと怖いんだけど、怒ってる?


「な、何よ。あなた鹿島を中心にハーレム作ってるんでしょ? だったら女の1人や2人、味見してても問題ないじゃない」


 僕の意思が介在していないのが問題だ。


「ハーレムはそんな女をとっかえひっかえするようなものではありません! 先輩に添い遂げる気がないのに肉体関係に及ぼうだなんて、このわたしが許しません!」

「そ、そんな~」


 乃亜の助けでなんとか僕の貞操は守られた。

 最後の最後で大変な目に遭ったけれど、無事次の日を迎えれた僕は元の姿に戻ることが出来たよ。


 跡部さんは凄い残念そうな目で僕を見ながら、またショタになる時があったら教えて欲しいと言ってきたけど。

 いや、もう小さくなる機会なんてないから!?

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