4章
プロローグ
≪蒼汰SIDE≫
「[狐火]」
冬乃が放った[狐火]が
「このダンジョンだと宝箱への信頼感が皆無よね」
「本物かどうかなんて、サッパリ分かりませんから仕方ないですよ。仮に本物でも中身をばら撒くので問題ありませんが」
「今回は違ったみたいだけど、ね」
咲夜の言う通り、吹き飛ばされた宝箱からだらしなく大きな舌が出ているので、明らかに宝箱でない事が分かる。
僕らが来ているのは〔
「それにしてもラッキーだったね。まさか占有ダンジョンに来ることが出来るなんて思いもしてなかったよ」
占有ダンジョンは国または個人が独占しているダンジョンであり、許可がないと入ることが出来ない場所だ。
「先輩の言う通りですね。まさか
「はぁ~。あの時取材を受けて良かったんだか、悪かったんだか。テレビのせいで変なところから連絡が来たから、私としては微妙だわ」
冬乃の父親もテレビを見て連絡してきたらしいし、そのせいで引っ越しを余儀なくされたのだから、確かに冬乃にとっては微妙な話かな。
「占有ダンジョンだけあって危険が少なくて実入りが良いから、言うほど悪くはないと思うけど」
「まあ蒼汰の言う通りね。そうじゃなかったら部外者の私達がこのダンジョンに入る事は出来なかったわ」
「2週間の短期留学で来てるから、ずっとダンジョンに入れる訳じゃないけど、ね」
そう。僕らは今まで通っていた学校を離れ、とある学校へと招待されていた。
私立
まさかこんな所に来るなんて、数日前までは思いもしなかったな~。
ようやく赤ん坊から元に戻って、いつもの日常を過ごしていた時のことをふと思い出した。
◆
「先輩、今日は朝の挨拶してませんでしたが、って先輩?」
「どうしたの蒼汰君?」
「何か悪い物でも食べたの?」
うぅ……。ふふっ……。
「何で先輩が大きな十字架の横で泣き笑いしてるんですか?」
「それがオレらにもよく分かってなくてな」
「赤ん坊から完全に元の姿に戻った蒼汰を磔刑にしようと、大樹達が朝早くから待ち構えていたのに、何故か暗い表情なのに笑ってる蒼汰が現れたんだよね」
「「「へぇ……」」」
「ちょ、馬鹿、彰人!?」
「教室に入ってきた瞬間に大樹達が十字架に括り付けてやるって蒼汰に向かって言ったら、蒼汰が自分から十字架の所まで行ったんたけど、縄を自身に巻き付けだした時には自殺するんじゃないかと不安に思っちゃったよ」
「……少し、
「手伝う」
「私もやるわ」
「「「ギャー!!」」」
何故、どうして……。
僕が一体何をしたって言うんだ……。
こんなの、あんまりだ……!
「かなり周りが騒がしいはずなのに、それでも自分の世界に入り続けるなんてよっぽどだね。[無課金]スキルが身に着いた時もこんな感じだったかな?」
「くっ、殺せ!」
「ちょっと余裕出てきた?」
ふざけてないと精神的にしんどいんだよ。
「それで今度はどうしたんだい? 今度はガチャそのものが出来なくなったりでもした?」
「もしもそんな事があったら、1カ月はふて寝してる自信がある」
半日は発狂して頭をその辺にガンガンぶつけ始めるんじゃないだろうか?
「ガチャそのものが出来なくなるよりも何か酷いことがあった訳じゃないなら、そこまで落ち込まなくてもいいんじゃない?」
「言われてみれば確かに」
彰人のお陰で深い悲しみの海から這い上がってこれた、って何あれ?
「何で大樹達が縄で縛られて窓から吊るされてるの?」
「蒼汰に使おうと持ってきた大量の縄が有効活用されているんだよ」
何時の間にかやって来た乃亜、咲夜、冬乃がロープを適当なところに結んでいるのを見るに、大樹達が僕に何かしようとしたからお仕置きしてるって感じだろうか?
「ちくしょう! 蒼汰を縛るはずだったのに!」
「反省していないようなので、ちょっと揺らしてみますか」
「「「や、やめてくれ!?」」」
ここ2階なんだけどな……。
乃亜達が縄を軽く揺らすたびに、窓の向こう側から悲鳴が届いて来るんだけど、よっぽど怖いんだろうね。
「3人共、可哀想だから降ろしてやるか、引き上げてあげて」
「厳しくしつけないと今後も似たことをしでかしそうなんですが、いいんですか?」
「まあ実際に実害を受けた訳でもないし、十字架に張り付けられる程度の刑にするつもりだったみたいだから、まあいいかなって」
「甘いですねー。まあ分かりました」
乃亜はそう言うと、どこからか取り出した大きなハサミ。
いや、ちょ、まさか……。
「先輩の慈悲に感謝してくださいね」
――ジャキン!
「「「ぐおっ!?」」」
「うわっ、容赦ないな」
「地面スレスレでぶら下げていたので、大した怪我もしてませんよ」
そんな状態で揺らされたら、頭が地面に当たりそうで恐怖だったんだろうな。
どの道、頭から地面に落ちてるわけだけど。
「それで先輩。どうしてあんな情緒不安定な状態になっていたんですか? 昨日、1人でダンジョンに行ってましたけど何かありましたか?」
「……実はね――」
僕は昨日何が起こったのかを説明することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます