第28話 ろくなスキルがない


 [風邪特効]:ウイルスを排除する

 [状態異常三種回復]:毒、麻痺、眠りの状態異常を治す


 咲夜が見せてくれた派生スキルの効果は、治癒術から派生されてるだけあって直接戦闘には使えないものだけど、とても便利なスキルだった。

 特に[状態異常三種回復]は中々有用なスキルなんじゃないかな?

 [風邪特効]は……日常で大活躍だね! ダンジョンで使える状況が想像つかないよ……。


「そういえば今まで〔ゴブリンのダンジョン〕しか行ってなかったから忘れていましたが、状態異常を与えてくる敵もいるんですよね」

「一応ポーションは用意してあるけど、数本しか持ってないから咲夜がそのスキルを使えるのはありがたいよ」

「そうね。解毒用のポーションとかを無駄に買わずに済むわね!」

「ん。みんなが喜んでくれて嬉しい」


 嬉しさを表現しているのか咲夜が少し体を横にリズムよく揺らしながら笑っていた。


「[風邪特効]に関しては……風邪をひいた時にお願いしようかしら。薬より効きそうだし、妹と弟がまだ小学生だから風邪とかひきやすいし……」


 冬乃が割と真剣な目をして言っていた。

 まあスキルの正しい使い方と言えばそうだよね。

 ただ薬の代わり扱いされることを咲夜がよしとするかだけど……。


「うん、任せて」


 本人はノリノリのようだった。

 頼られて嬉しいのかもしれない。


「さて、問題はあんたね」


 問題扱いされた。


「そこまで言う?」

「むしろ言わない理由はないわ」


 ですよね。

 さっき強制コスプレさせられた冬乃が言うと説得力がある。


「じゃあまずステータスから」


 ───────────────

 鹿島 蒼汰

 レベル:30

 HP(体力) :76/76

 SV(技能値):55


 スキルスロット(1)

 ・[ソシャゲ・無課金]

 →派生スキルⅠ:[ガチャ]

 →派生スキルⅡ:[チーム編成]

 →派生スキルⅢ:[放置菜園]

 →派生スキルⅣ:[カジノ]

 ───────────────


「あんたのスキル、ろくなのないわね」

「それは自分が一番分かってる」


 なんだよ[カジノ]って……。

 これで戦える気はしないんだけど!

 って、ん!?


 新しい派生スキルに注目していたけど、よく見たら[フレンドガチャ]が[ガチャ]になってる!?

 こ、これは期待の予感……!


 僕は迷わず[ガチャ]の詳細を調べるためにそこをタップした。


 [ガチャ]:挨拶1回につき1ポイント取得。(※同じ相手には1日1回のみ有効)

 専用のガチャを回すことが出来る。


 むむっ、これだけじゃ分からないな。

 前は[フレンドガチャ]で確か10ポイントで1回回せるとか書いてあったけどそれが無くなったのが違いかな?


「先輩、急に黙ってしまってどうしたんですか?」

「あ、これダメね。完全に集中しててこっちをまるで気にしてないもの」

「蒼汰君のスキルって面白いスキルだよね」


 詳細を知るために早速[ガチャ]を使ってみよう。

 僕はスキルでスマホを呼び出すと[ガチャ]の画面を開いた。


 その画面はいつも通りの[フレンドガチャ]、かと思ったら画面の両端に三角形のマークがあり、左右にスワイプすることが出来るようになっていた。

 新しいガチャだ!


 僕はすぐに横にスワイプさせると新しいガチャ、[衣装ガチャ]が出現した。

 その瞬間悟った。


 あ、これ冬乃にメイド服を着せる事になったのに関わるガチャだ、と。


「あんたそれを今から回すんじゃないでしょうね……」


 僕の顔をアイアンクローするの止めてくれません?


 僕の手元を見ていて、このガチャがすぐになんのガチャか察した冬乃に、容赦なく顔面を掴まれ徐々に力を入れられていく。

 ちょ、まず!?


「あだだだだだ!!」

「ちょ、落ち着いてください冬乃先輩!」

「暴力は、ダメ。……ごめん」

「あ、いや、咲夜さんはもう謝らなくていいから」


 咲夜は自分の発言が特大のブーメランだったことに気づき、すぐに謝っていた。


「冬乃先輩が着ないといけないわけじゃないんですし、スキルの仕様もちゃんと確認しておかないと、いざという時に困ったことになるんですから」

「確かにそうなんだけど、さっきの今だもの……」


 さすがに悪いと思ったのか狐耳をヘタらせていた。


「見た目はあれですが、10%能力が向上するなら十分優秀ですし、他にもどんな効果のある衣装が出るかは少なくとも確認する必要があるとは思いませんか?」

「それは……そうね。はぁ、ほら、早くやんなさいよ」

「いいの?」

「どの道蒼汰のスキルじゃない。私がとやかく言う事じゃないもの」

「じゃあ早速」

「もうちょっと思慮してくれない?」


 許可を出したのに悩んでから回せとはこれ如何に。

 ガチャは悩むものじゃない。ひたすら回すものだ。


 しかし僕は[衣装ガチャ]をガチャろうとして気が付いた。


「あれ? これポイントじゃない?」


 [フレンドガチャ]にスワイプすると前と同じで〔1回ガチャ〕〔10連ガチャ〕とあり、それにはポイントを使用すると書いてある。

 けれど[衣装ガチャ]は〔1回ガチャ〕〔10連ガチャ〕は同じだけど、ポイントではなくコインと書いてあった。

 そして所持コインは0枚とある。


「どういう事なんだろ、これ?」

「コインってことは、新しいスキルの[カジノ]が関わってくると思う、よ?」

「あ、それは確かに」


 派生スキルが増えたと告知された後にアップデートとか言ってたから、[カジノ]が増えたから新しいガチャや[チーム編成]の一部が変更されたってことかな?

 咲夜の言う通り[カジノ]が大いに関わってそうなので、僕は下のタブに増えた[カジノ]をタップしようとしたところで気が付いた。


「メール?」


 手紙のマークが左上にあった。

 そう言えばメッセージが届いたとかも言ってたっけ。


 冬乃にメイド服を着せたせいで色々忘れてたよ。

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