第14話 え、なんだって?

  

「移動する前に道中でゴブリンが出たとき用に武器を渡しておこうと思うけど、どんな武器なら使えるの?」

「先輩のスキルは武器まで出せるんですか!?」

「なんでも出せるわけじゃないし、せいぜい日用品の延長くらいまでだけどね」


 僕は持っているシャベルを見せると、納得したように高宮さんは頷いた。

 まあごくたまに〔毒蛇の短剣〕みたいな武器らしい武器が出ることもあるけど滅多にないし、ここから出るための一時的な武器ならそんな大した物でなくてもいいでしょ。


「そうですか。わたしは普段大楯を使用しているのですが、それでしたら適当に鈍器となりそうなものを貸していただけるとありがたいです」

「それだったらシャベルでもいいかな?」


 [フレンドガチャ]でシャベルは3回被っているので、1本渡してもまだ予備に2本あるので問題ないし。


「はい、お願いします」


 しかし小柄な見た目なのに大楯を武器にしているのはビックリだな。

 そう思ったところでふと思い出した。


「あれ? もしかして高宮さんってタカシって呼ばれていた人たちとパーティー組んでなかった?」

「えっ、どうしてそれを?」

「2週間くらい前に、妙にボロボロなのに体には傷一つない不思議なパーティーが階段から現れたのが印象に残ってたんだよ」


 それに自分の体格並みの盾を持ってる人がいたら嫌でも目に付くし。


「そうだったんですか。実はあの後、わたしはパーティーを離れざるを得なくなって今日まで1人でダンジョンに潜ることになったんです」


 おっと。声のトーンが落ちてるし、あの時のパーティーメンバーとはどう見ても雰囲気が良くなかったのを考えると、あまり突っ込んで聞かない方が良さそうだ。


「そうなんだ。でもあれから2週間も経ってるのに別の人とパーティーを組もうとは思わなかったの?」


 なんとか話題をずらしたいができるか僕!

 微妙にずらしていく方向で何とか……。


「ちょっと1人で潜りたかったので。率直に言って、パーティーを追放されたので別の人と組んでもどうせまた追放されるかと思うと、あまり組む気になれませんでしたし」


 軌道修正失敗!?

 思いっきり地雷原に突入した模様。


「そ、そうなんだ」


 相槌しか打てない僕のコミュ力は5よ。なんだゴミか。


「そう言えば先輩も1人ですが、先輩はどなたかとパーティーを組んでいないんですか?」

「組んでいないと言うより組むことができないのが理由かな」

「何故ですか? 便利そうなスキルをお持ちに見えますが……」

「実はこれデメリットスキルなんだよ。しかもそれしか覚えてないせいで戦闘系のスキルがないから拒否されるんだよね」

「えっ、先輩もですか!?」


 ……ん?

 戦うスキルがなくてデメリットスキルしか持ってないって言ったら、いつもなら残念そうな声か同情されるか邪魔者扱いされるかなのに普通に驚かれた。

 と言うか先輩


「“も”?」

「“も”、です。わたしもデメリットスキル持ちなんです!」


 噓でしょ?

 え、だって1万人に1人の確率なのにここに2人もいるとかどんな確率だよ。

 しかも同じ学校だし、思わず嘘だろって言いたくなったよ。


「そうなの? ちなみに僕のスキルは[ソシャゲ・無課金]なんだけど高宮さんのは?」

「う゛っ、い、いえ、わたしのは、その……」


 なんだかすごく言いづらそうにモジモジしていた。


「言いたくないなら言わなくてもいいよ?」

「いえ! 先輩がスキルを言ったのに、わたしが言わないわけにはいきません!」


 別にこっちが勝手に言っただけだから気にしなくていいんだけど。


 そう思っていたのだけど、頑なに高宮さんは首を横に振って顔を赤くしうつむきながら何とかスキル名を言おうとしている。

 ……なんで顔を赤くさせてるの?


「わ、わたしのスキルは……ですぅ……」


 肝心のスキル名のところで声がしぼんでしまい、近くにいるにもかかわらずなんて言ったか聞こえなかった。


「ごめん、なんて言ったの?」

「う、うぅ~、げ、[ゲームシステム……]です」

「はい? ゲームシステム?」


 [ゲームシステム]と言うスキルは聞いたことないけど、字面からはデメリットスキルとは思えないな。どんなスキルなんだろうか?


「ち、違います。[ゲームシステム]ではなく、その……」

「うん?」


 あ、確かに[ゲームシステム]の後に何かごにょごにょ言ってたような気はするけど、一体何なんだ?

 そう思い首をかしげていると、高宮さんは覚悟を決めた表情でうつむいていた顔を上げ、より顔を赤くしながら僕の顔を見た。


「わ、わたしのスキルは[ゲームシステム・エロゲ]です!」

「……なんだって?」

「ふぇ~」


 高宮さんはすごく泣きそうな顔で僕を見ていた。


「あ、ごめん。聞こえなかったわけじゃなくて何というか、信じられないスキルで思わず……」

「ううぅ、先輩が言いたいことは分かります。家族もわたしのスキルを聞いてもう1度聞き直したくらいですし」


 字面からでは全く想像ができないスキル名に自身の想像力の乏しさを嘆けばいいのか、そんなスキルを創り出した神を嘆けばいいのか分からなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る